第52話 戦場へ舞い降りる希望

 倉庫から出たアラヤは全身のスラスターを噴かし、ATLASでは考えられない速度で飛び立った。


 その光景を見ていたニニシア基地に残っている者たちは驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。


 一気に空へ駆け上がったアラヤは、


「ニナ?みんなはどこで戦っている?」


 サーダマ師団と激闘を繰り広げるマタイ共和国軍の場所を質問する。


 それに対し、ニナは答える。


「このまま南西に進んで行けば、戦場にたどり着くことができるよ。私がナビゲートするから、それに従って」


「了解。ナビゲートは頼むぞ」


 アラヤはそう言うと、ニナに示された方向へ向けて高速飛行する。


 アストライアの速度は速く、軽くマッハ20は超えているだろう。


 下手をすると、マッハ40以上の速度で飛行している可能性すらもある。


 それほどの速度で飛行した場合、中に乗っているパイロットが耐えられずに、体が圧力で潰されてしまう。


 しかし、アラヤは既に人間を辞めているため、強烈なGにも余裕で耐えられる。


 アラヤは本来なら強烈なGによって死ぬところを何事もないかのようにしている。


 そうして、人間では不可能な速度で飛ぶことでアラヤはすぐに戦場へ駆けつけることができた。


 戦場へ駆けつけたアラヤは手に持つレーザーライフルで味方艦を狙う敵ATLASを撃ち落としながらどんどん敵軍の方へ突き進んでいく。


 今のアラヤには迷いがない。


 そのため、アラヤは敵ATLASを撃ち落とすのに躊躇はなかった。


 アラヤは高速で飛行し続けながら的確に敵ATLASを撃破していく。


 その光景を見ていたマタイ共和国軍の兵士たちは自分達を救う英雄が現れたと盛り上がっていた。


 アラヤは脳波コントロールに加え、ニナのサポートにより、圧倒的な射撃能力によって敵ATLASをどんどん落としていく。


 彼が敵艦隊の方へ向かって進んでいる最中にGrimoireと接敵する。


 Grimoireはその推力を活かし、アラヤたちへ接近しようとするが、アストライアの方が圧倒的に速い。


 そのため、Grimoireはアラヤたちに追いつけずに距離を離されそうになった瞬間、いきなり振り返ったアストライアのビームライフルによって撃破されてしまう。


 Grimoireを撃破したアラヤは再び敵艦隊の方へ高速飛行する。


 そして、アラヤは絶体絶命の状況に立たされているミナセを発見する。


 アラヤはミナセのことを助けたこともあり、彼女のBASIAは覚えている。


 ミナセの乗るBASIAは他の機体とは違い、肩に専用のマークがあり、彼女が副隊長であることを示している。


 アラヤはそのマークを見た瞬間、更に飛行速度を上げ、彼女の元へ接近する。


 アラヤはミナセに追いつく前に小さな盾のようなものを左手に持つ。


 それと同時に、アラヤはミナセの前へやってくる。


 ミナセの前へやってきたアラヤは迫り来る主砲のレーザーへ向けて先ほどの小さな盾を構える。


 その瞬間、盾からはレーザーシールドが形成され、迫り来る主砲を防いだ。


 本来なら、レーザーシールドといえど、戦艦の主砲を防ぎ切ることは不可能だ。


 しかし、アストライアから溢れ出る膨大なエネルギーを使うことにより、アラヤは一時的に戦艦の電磁パルスシールドを軽く上回るレーザーシールドを展開したのだ。


 レーザーシールドはそのまま戦艦の主砲を完全に防ぎ切る。


 それと同時に、アラヤはミナセとの通信を繋ぐ。


「ミナセさん、助けてきました。ここは俺に任せてください」


 そして、アラヤは爽やかな声でミナセへ助けにきたことを伝える。


 通信相手のミナセは今だに状況が理解できずに反応に困っていた。


 その間に、アラヤは再びこちらへ向けて主砲を放とうとしてくる戦艦をどうにかする必要があった。


「ニナ!!」


『うん!!任せて!!』


 アラヤがニナの名前を呼ぶと同時に、彼女はバックパックに収納されているレーザーライフルの強化パーツを射出し、アラヤはそれを受け取る。


 その強化パーツをアラヤはすぐにレーザーライフルへ装着すると、そこには巨大な砲台を持つスナイパーライフルへと変形した。


 スナイパーライフルを構えたアラヤは敵戦艦へ向けて構えると、どんどんスナイパーライフルにエネルギーが充填されていく。


 そして、アラヤの狙いが定まった瞬間、砲身からはまるで、大型戦艦の最大砲門から放たれたレーザーと見間違うほどのレーザーが放たれる。


 レーザーは敵戦艦を貫通すると、そのままレーザーの余波や貫通したレーザーによって次々と戦艦やATLASが落とされていく。


 レーザーはそのまま敵艦隊の後方すらも貫通していき、最終的には雲の果てまでレーザーは伸びていった。


 その圧倒的な高火力に巻き込まれた敵艦隊は生き残りの約2割を一瞬にして失ってしまった。


 それもただの一撃でだ。


 その光景を間近で見ていたネストはあまりにも圧倒的な性能の前に固唾を飲む。


「あれが、ビルトの言っていた漆黒のATLASか。あいつの情報以上にヤベェのが来ちまったな」


 そして、ネストは圧倒的な性能を誇るアストライアに狙いを定めていたのだった。

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