終章 司馬懿とは

 『晉書』宣帝紀からは、司馬懿に関する様々なことを読み取ることが出来た。司馬懿に対する言葉からは客観的な司馬懿像が分かり、曹丕や曹叡の言葉を見ていくと司馬懿の能力が帝にも認められ、信頼されていたことが伺えた。また司馬懿の行動についてを分析していくと、孫子の兵法を自分のものに出来ていた人であったと分かった。その中でも特に『兵者詭道也』というものについては戦いだけで無く、人生の様々な時において応用している。

 司馬懿が使っていたものは孫子だけでは無く、箕子の言葉を引きながら農業を勧めたこともあった。司馬懿は他にも「法律を厳しくすれば民は国を棄てる」と言って大綱だけを広く行き渡せたり、「国境の城が攻撃を受けている時に廟堂に安坐していると、人々が疑い迷う」ということを『是社稷之大憂也』と言って軍を動かしたりするなど、民衆のためになることも多くしている。

 また、『聖人不能違時、亦不失時矣』と曹操に漢中へ進軍するべきであると言う所からは「時期を逃さない」という性質が、『死諸葛、走生仲達』と言われても「私は、生きている者ならば上手く取り扱う事が出来る。死んでいる者だとそうはいかないが」と笑って言う所からは侮りの言葉に対しても激昂せずに落ち着いていられるという性質が、古着であっても『襦者官物、人臣無私施也』と言って与えない所からは公私混同しないという性質があるということも言えるだう。

 司馬懿とは、そういった性質を持つ人物であった。

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