ray
白雪れもん
第1話青春の光、心の奥に響く恋のメロディー
放課後の教室。夕陽が窓から差し込み、床に長い影を落としていた。レイはギターを抱え、弦を指で軽く撫でる。音楽室が使えない日は、いつもここで練習をしていた。静かな教室で、一人だけの時間。ギターの音色が心地よく響く中、彼女は自然と微笑んでいた。
「レイ、もう帰らないの?」と声がかかる。振り向くと、親友のアヤがドアのところに立っていた。
「もう少しだけ練習するつもり。でも、先に帰ってていいよ。」レイは答える。
アヤは少し不安そうな表情を見せたが、やがて微笑みを浮かべ、「無理しないでね」と言い残して教室を出て行った。レイは再びギターに集中し、指を動かし始める。音楽に没頭することで、心の中のモヤモヤが消えていくような気がした。
その時、教室のドアが再び開いた。今度はアヤではない誰かが入ってきた。レイは顔を上げ、その姿に目を見張った。見知らぬ男の子が立っていた。黒い髪が夕陽に照らされ、瞳は深い湖のように澄んでいる。
「ごめん、邪魔するつもりはなかったんだけど…」その少年は少し恥ずかしそうに言った。
「いえ、大丈夫です。何か用ですか?」レイはギターを置き、立ち上がった。
「僕、今日転校してきたんだ。名前はヒカル。君のギターの音が聞こえたから、つい引き寄せられちゃった。」ヒカルは微笑みながら自己紹介をした。
「私はレイ。よろしく、ヒカルくん。」レイは手を差し出し、ヒカルも握手を返した。その瞬間、彼の手の温かさが心に響いた。
「音楽、好きなんだね。」ヒカルはギターを見つめながら言った。
「うん、これが私の一番の趣味。ヒカルくんは何か楽器をやってるの?」
「ピアノを少し。でも、最近はあまり弾いてないんだ。」ヒカルの声には何か寂しげな響きがあった。
「もし良かったら、一緒に演奏しようよ。ピアノとギターのデュエット、きっと素敵だと思う。」レイは心からの提案をした。
ヒカルは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔を取り戻し、「そうだね、楽しそうだ。」と答えた。
その日から、二人の放課後の時間が始まった。毎日のように教室に集まり、音楽を奏で合う。レイはヒカルのピアノの腕前に驚き、彼の演奏に心を奪われることが多かった。一方、ヒカルもレイのギターの技術に感嘆し、彼女との時間を楽しんでいた。
しかし、次第にレイはヒカルの瞳に潜む影に気づき始める。彼は笑顔の裏に何かを隠しているようだった。ある日、レイは思い切って尋ねてみた。
「ヒカルくん、何か悩み事があるんじゃない?私で良ければ話してほしい。」
ヒカルは一瞬戸惑ったが、やがて深いため息をついて話し始めた。「実は、僕の家族のことで…。父が病気で入院してて、母もその看病で忙しいんだ。だから、僕は一人で過ごすことが多い。」
レイはヒカルの話に耳を傾け、心から同情した。「それは大変だね。でも、私たちはここにいる。何かあったら、いつでも頼って。」
ヒカルは感謝の気持ちを込めて微笑んだ。「ありがとう、レイ。君に出会えて、本当に良かった。」
その言葉にレイは胸が温かくなった。彼の支えになれることが嬉しかった。二人の絆は音楽を通じてさらに深まり、彼らの友情は次第に恋へと変わりつつあった。
放課後の教室で、ギターとピアノの音色が響き渡る。そのメロディーは二人の心をつなぎ、彼らの未来への希望を奏でていた。青春の光が、彼らの前途を明るく照らしているかのようだった。
初めてのデュエット
ヒカルとレイの放課後の時間は、一日の中で最も楽しみな瞬間になっていた。今日もまた、二人は教室で顔を合わせた。
「今日は何を演奏しようか?」レイが微笑みながら尋ねた。
「この間話していた、僕たちのオリジナル曲を試してみない?」ヒカルはピアノの前に座りながら提案した。
「うん、それがいいね。じゃあ、コード進行から決めようか。」レイはギターを構え、最初のコードを弾いた。ヒカルはそれに合わせてピアノの鍵盤を押し始めた。二人の音が重なり、教室に美しいメロディーが広がる。
最初はぎこちなかったが、次第にリズムが合ってきた。レイのギターが高らかに響き、ヒカルのピアノがそれを支える。二人の音楽は一体となり、まるで一つの魂が奏でるような感覚に包まれた。
「いい感じだね。」レイは笑顔で言った。
「うん、本当に。レイと一緒に演奏するのは楽しいよ。」ヒカルも笑顔を返した。
その時、教室のドアがノックされた。振り向くと、音楽の先生であるミヤモト先生が立っていた。
「素晴らしい演奏だね、二人とも。」ミヤモト先生は拍手をしながら教室に入ってきた。「実は、来月の文化祭で演奏するバンドを探しているんだ。君たちも参加してみないか?」
「文化祭?」レイとヒカルは驚いた表情を見せた。
「そうだ。学校の大きなイベントで、毎年多くの生徒が楽しみにしている。君たちの演奏を見たら、きっとみんな感動するだろう。」ミヤモト先生は熱心に勧めた。
レイはヒカルの方を見た。「どうする?ヒカルくん。」
ヒカルは一瞬考え込んだが、やがて決意した表情で頷いた。「やってみよう、レイ。一緒に最高の演奏をしよう。」
「うん、私もそう思う。先生、参加します!」レイは力強く答えた。
「よし、それじゃあ練習をしっかりと頑張ってくれ。期待しているよ。」ミヤモト先生は満足げに教室を後にした。
その日から、二人は文化祭のための練習に本腰を入れることになった。放課後の教室はますます音楽で満たされ、彼らの絆もさらに深まっていった。
ある日、ヒカルが練習の途中で話を切り出した。「レイ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「何?」レイはギターの弦を調整しながら答えた。
「文化祭で演奏する曲なんだけど、僕たちのオリジナル曲にしたいと思ってる。どうかな?」ヒカルの瞳は真剣だった。
「もちろん。それがいいと思う。私たちの気持ちを込めた曲をみんなに届けよう。」レイは微笑んだ。
その瞬間、ヒカルはギターを手に取り、最初のフレーズを奏で始めた。レイは彼に合わせてギターを弾き、二人の音が再び教室に響き渡る。新しいメロディーが生まれ、彼らの心に刻まれていった。
放課後の教室での練習は続き、二人の絆はますます強くなっていった。文化祭の日が近づく中、彼らの心は一つの目標に向かって輝いていた。音楽を通じてつながる心、それが二人の青春の光だった。
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