第3話 10月19日
今日ははじめて予備の弾倉を全て使いきった。
やたらと多かった。蠢く亡者の群れにそれぞれ質問を投げ掛ける訳にはいかず、いつかの時と同じ方法が採られた。銃身がぶれないように押さえ込み、闇がより深いほうへ向けてただ引き金を固定する。
退勤時には数名の同僚が減っていた。銃口を咥えて、早期退職したようだった。もはや慢性的な抑鬱状態である人類のなかで、本当の意味で彼ら彼女らだけがまだまともだったのだ。
視界が狭まっていった。弾薬をバラバラと情けなくこぼしながらポケットをまさぐる。残りのリラを雑に噛み砕く。目に映るなにもかもは真っ白な光に包まれた。瞼の裏に透ける朝日のような気がした。東駅のホームにしゃがみこんで暫くうずくまった。自宅に帰ることがとんでもなく億劫になった。幸いにも同じ考えの輩がそこらで転がっているおかげで、同じ風景のなかによく馴染んだ。
気がついたときには最後の記憶にあるホームの片隅ではなく、環状線の内側、エリア内にあるホテルの一室にいた。カビ臭いダブルベッドのうえには自分と男とも女ともとれる人物が裸で寝息を立てていた。どうやら自分は無意識のまま徘徊し、この人物と出会い、ホテルへ行き、どちらかが料金を支払って、朝まで共に過ごしていたようだった。おかげで、熟睡感はなく、ひどい頭痛がした。
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