とある国のコロシアム(4/5)
「師匠、大丈夫ですか?」
「なんとかね、骨は外れて貫通してるから大丈夫だよ」
陸は師匠の足を止血して鎮痛剤を打った。
「師匠、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
師匠は半長靴を履いた。
「さて、行こう」
師匠と陸が歩き出した。
「師匠、そういえばなんで炸裂弾を作ったんですか?」
「確実に大ダメージを与えるためと、後々必要になりそうだと思ったから」
ドヤ顔で師匠は言い切った。
「それだけですか?」
「うん」
「うそぉ、あの苦労は一体...........」
陸は泣きそうな顔になった。
「ほら、陸行くよ?」
「へーい」
陸はスリングにもたれかかり歩いた。
「陸、そういえばこれ、どうやったら出られるんだ?」
陸は心底驚いた顔をして言った。
「師匠、聞いてなかったんですか?これは最後の一人になるか、コロシアムのどこかにある鍵で出入り口のドアを開けるしか方法は無いって..........」
「そうだったけ?」
陸のスリングは更に沈んだ。
「こりゃぁ.......」
「陸、この先にいるね」
その道には沢山の亀裂と、夥しい量の血痕があった。
「これは?」
「弾痕があるけど、死体には一発も当たっていない、全てが胸か頭を殴られている」
「それってつまり?」
「この死体は全部殴打で殴られていること、相手は鈍器か、素手で戦っていること」
陸はため息をついて黙った。
「陸、ここって、コロシアムだよね?」
「はぁ、そうですが?」
陸は完全に顔が死んでいる。
「ま、弾幕で制圧すればいいんだけどね」
そのまま二人は歩き出した。
コロシアムは静寂に包まれた。
まるで誰もいない、異常なまでの静寂である。
何回かの曲がり角を曲がった時、師匠の拳が挙げられた。
止まれの合図。
『いる』
師匠が短く陸に伝えた。
そこは一本道で、そこに大柄の男が中央に座っていた。
『撃てる?』
このコロシアムにいる限り、チームを組んでいる陸と師匠以外の動くものは、全てが敵だと割り切れるので情けは不要。
陸がバイポットを展開し、腹這いになった。
「スッ.......フー........」
呼吸一つ。
息を止めて大きく唸る心臓を抑える。
「陸!!逃げて!」
師匠が叫ぶと同時に男の影が霞んだ。
上に跳躍した男は、陸の機関銃の銃身を掴み壁に叩きつけ破壊した。
「こいつ!!」
師匠は対物ライフルを乱射しながら突撃した。
男はそれを軽く動いて避けた。
「陸!撃って!」
後ろで拳銃を引き抜いていた陸は、狙いを定めずに盲撃ちした。
「甘いな」
男は吐き捨ててそれも避けた。
師匠はそれでも対物ライフルを乱射し、弾が空になっても突撃した。
「これでも、っ喰らっときやがれ!」
ライフルのマズルブレーキを槍のように突き出した。
「喰らうかボケ」
男はそれを銃身から掴んでこれも投げ捨てた。
「もらった!」
その隙を逃さず、師匠は男の横腹を肘で突き、脇を狙って発砲しながら駆け抜けた。
「ふん」
男は陸の弾幕をすり抜け、師匠の放った弾を肘で受けた。
「なかなかやるじゃねぇか」
炸裂弾が炸裂し、男の肘より先が飛んだ。
「これじゃジリ貧だな」
男は両手を上げた。
「お前ら、俺の話を聞いてはくれねか?」
「........陸、撃つな」
師匠は後ろに距離を取って、男の背後に回り込んだ。
「俺は、このコロシアムに来たのには理由があるんだ」
「俺は自分の限界をここで試したかったんだ」
「でもこの通り左腕が使えなくなった」
「これ以上君たちと戦っても無意味だよ」
「...............」
「ここから出たいか?」
「道中で見つけたこの鍵が使えるかもしれない」
男は長く、長く話したあとに鍵を前に投げた。
「すまないが、止血帯と鎮痛剤はあるか?」
「師匠?」
「陸、いいよ」
師匠の許可を得て、陸は腰のベルトに吊ってあるポーチから、止血帯と鎮痛剤を取り出して男に投げた。
「ありがとうな、陸ってんだか?」
「ああ」
男は止血帯を使って、鎮痛剤を腕に注射した。
「ありがとう」
男はそう言い残し去っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます