第19話 壊れたらぶっ叩いたら直るっていうだろう!

「あら? どうしたの? 山田くん」 


 俺がもたもたしていたら先輩がしびれを切らして……俺と彼女の所に様子を見に来た。


「いや、先輩……その、このハンバーガーなんですけど……」


「あら〜? ハンバーガーがどうかしたの?」


「それが、彼女がもう食べられないみたいで、このハンバーガーをどうしようか考えていたんですよ!」


「そうなの? でも、だったら、山田くんが食えばいいじゃない?」


「いや、それは、流石に」


「あら? 山田くんお腹いっぱいなの?」


「いや……そういえわけでは」


 俺がそう言うと彼女は、ニヤッとして


「もしかして、間接キスしちゃう……とか、思ってる?」


 ……ギぐ!

 御名答。

 こういう時の先輩は勘が冴えている。


「ふふ笑、山田くん! 間接キスで、ウジウジしてるんだ! 全く君は本当に」  


…!」


「もう、山田くんめっちゃくちゃ顔赤くなってるよ笑」


「おちょくらないでください!!」


 全く彼女は、時々俺をこうやってドキドキされてくるから本当に困ったものだ……


「おい! そこの黒髪の女!」


「あら? あたしのことかしら?」


「お前! なんだか、強そうだな! 俺と勝負しようぜ!!」


 ……全くこの子は……

 俺だけじゃなく先輩にまで勝負を吹っかけるとは……


「えっ? 勝負……? どういう事?」


 ほらほら、先輩困惑してるじゃないか……


「ちょっと! 根石さん! 後で勝負するから! その、あまりいろんな人に勝負をふっかけないで!」


「まぁ、そうだな! お前との勝負があるしな、仕方ない! 勘弁してやる。」


 ……全く彼女は本当に、わんぱくというか何というか……全く、主人公には同情する。


 ちなみにハンバーガーは先輩が食べてくれた。


 ーーそれから、バイトの終了の時間が来て、俺は彼女の席に向かう。


「はい、バイト終わったよ! それじゃあ、その勝負とやら、しに行こうか?」


「お前! どんだけ、待たせるんだ! 俺は、時間がないんだ!」


「ごめん……それじゃあ、何で勝負する?」


「……へっ?」


 いやいや、決めてなかったんかーい


「う〜ん、お前! なんか、あるか?」


 そう言われましても……

 あっ! そうだ!


「それだったらゲームセンターとかどう?」


「お! ゲームセンターか? いいね! 」


「それじゃあ、行こうか……」


「ふん! お前! やるからには真剣勝負だからな! 手を抜くなよ!!」


「わかってるよ……」


 そう、彼女は勝負事に手を抜くことを極端に嫌がる。

 だから、いつも主人公は、手を抜かず、全力で彼女に向かって行っていた……



 それから、俺たちは、バイト先から、およそ、五分程歩いた所にある、ゲームセンターに足を運んだ。


 ゲームセンターに入ると、ゲームの賑やかな勝負が聞こえてくる。


 いろんなゲームが並んでいるが、なにか、対戦できそうなゲームは?


「な! あれ! あれで勝負だ!」


「あれ?」


 そう彼女は言った先には、もぐらたたきがあった。


 彼女はもぐらたたきのハンマーを手にとって、モグラが出てくる穴を叩く。


「あん? 何も出てこねぇーじゃねぇーか? 壊れてんのかこれ?」


 まぁ、それは、お金入れてないからですね……


 ……いっ!


 すると、彼女は、思いっきりハンマーでもぐらたたきの台を思いっきりぶっ叩いた。


「ちょ! 本当になにしてんの?」


「えっ? 何って? 直してんだよ! ほら! 壊れたらぶっ叩いたら直るっていうだろう!」


「はっ? ちょっと! まず、それ壊れてないし! しかも、そんなに強く叩いたら本当にぶっ壊れるって!!」


 ……まじで、そっきから彼女の行動一つ一つに本当にヒヤヒヤされてもらってばっかりだ……


「あ? じゃあなんで動かないんだよ?」


「それは、お金を入れてないから……」


 俺はそう言って、もぐらたたきの機械の中に百円を入れた。


 すると、もぐらたたきがゲームスタートそう、言葉を発して、ゲームがスタートした。


「ほら、根石さん! 始まったよ!」


「ふん! 負けねぇーからな!」


 そう言って、手で持ってるハンマーで、モグラを叩き始めた。

 彼女は順調に穴から出てくるモグラを叩き、ポイントを稼いで行く。

 何というか、彼女はとても運動神経がいい。


「ふー! なかなか! 疲れたな」


 そう言う彼女の前に映る、もぐらたたきのディスプレイには、百点中……九八点……そう書いてある。

 それに、店内一位の文字が……

 おいおい! 嘘だろ! こんなん、俺に勝ち目ないだろう!


「さぁ! 次! お前の番だろ!」


 そう言って俺は彼女からハンマーを受け取る。


 俺はそれを持って百円を入れて、もぐらたたきに挑む。

 結果はいうまでもないがーー惨敗だ。


 ディスプレイには、百点満点中……八五点という文字が……


 俺は結構善処したつもりだったのだが、彼女が強すぎたのだ……


「はっはっはっ笑! やはり俺の勝ちだな!」


 そう、彼女が嬉しそうに言う。


「すごいね、根石さん……俺も結構このゲーム自信あったけど……根石さんには遠く及ばなかったよ。」


「そうだろ! そうだろ!! 」


 そう彼女は、胸を張って、言った。


「よーし! お前! 次は何で勝負する? 」


 ……は?


「まだやるんすか? 根石さん……」


「当たり前だろ! ならもっと付き合ってくれぞ!」


「……岡村って、まさか?」


 彼女が言う岡村とは、岡村遥人おかむらはるとと言って……あの私立金森学園物語の主人公である。


「あ? 岡村は俺の友達だ! あいつとはないつも勝負しているんだ! まあ! いつも俺が勝ってるんだけどな!!」


 ……でしょうね……

 俺もゲームで何回も主人公が根石さんに勝負で打ち負かされるシーンを見たことか……


「よーし! 次も負けないからな! 」


 俺と彼女は勝負できるゲームを探してゲームセンターを歩く。


 あっ! これは……

 俺が見つけたのは……「アニマルカートアーケード」

 家庭用ゲームで、みんなに愛されてる、あの「アニマルカート」のアーケード版だ。


「ねぇ? 根石さん、よかったらあれで勝負しない?」


「なんだこれ?」


「これは、レースゲームで……」


「レースゲームだって!? よし! 戦ろう!」


 彼女は、レースゲームという言葉に食いついてきた。


 俺と彼女は「アニマルカートアーケード」の席について、彼女にプレイするための百円を渡して、

ゲームが始まる。

 そして、勝負、第二ラウンドを開始する。

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