【百合小説】秘密の花園―四番目のアイリスが咲く部屋―

藍埜佑(あいのたすく)

第一章:「秘められた日々」

 東京郊外の、どこか侘しさを漂わせる古びたマンション。その5階、503号室に美菜、佳代子、沙織の三人は暮らしていた。窓から差し込む夕陽が、薄暗い室内に温かな光を投げかける。


 美菜は長い黒髪を優雅に揺らしながら、キッチンで夕食の支度に勤しんでいた。彼女の指先は繊細に包丁を操り、野菜を美しく切り分けていく。その姿は、まるで一幅の絵画のように艶やかだった。


 リビングでは、佳代子がソファに腰掛け、化粧直しに余念がなかった。彼女の白磁のような肌は、ファンデーションを塗り直すまでもないほど滑らかだったが、それでも彼女は丁寧にブラシを滑らせる。その仕草には、どこか儀式めいた美しさがあった。


 浴室からは、沙織の軽やかな歌声が漏れ聞こえてきた。シャワーの音に混じって響くその声は、甘美な蜜のようだった。


 三人が揃って食卓を囲む頃には、夜の帳が完全に下りていた。昼間は普通のOLを演じる彼女たちだが、この時間になると、その仮面は徐々に剥がれ落ちていく。


 美菜はフォークを口元に運びながら、ふと佳代子の方を見やった。


「今日も遅かったわね。顧客との接待?」


 佳代子は優雅にワイングラスを傾けながら答える。


「ええ、新規顧客よ。でも、あの人たち、私の目を見て話せないのよ。私の胸元ばっかり見て……。私が気づいてるってわかってないんだわ、ほんとバカ」


 彼女は、自慢の谷間を強調するVネックのブラウスを身につけていた。プッシュアップブラで更に魅力的に演出された豊満な胸は、確かに男性社員の視線を釘付けにするだろう。


 沙織は、そんな二人のやり取りを聞きながら、艶やかな唇を歪めて笑う。


「あら、私なんて今日、課長に『その口紅の色、艶っぽすぎる』って注意されちゃったわ。ルッキズムまる出しのセクハラよね」


 彼女の唇は、まるで熟れた果実のように魅惑的だった。MAC のリップスティック「ルビー・ウー」を塗った唇は、確かに職場には相応しくないかもしれない。しかし、今この瞬間の沙織の唇は、二人の視線を釘付けにするほど魅力的だった。


 食事が終わり、三人はリビングのソファに腰を下ろす。ワインを傾けながら、彼女たちの会話は徐々に熱を帯びていく。社会の目を気にしながらも、ここでは彼女たちだけの世界が広がっていた。


 美菜は、ふと立ち上がると窓際に歩み寄った。夜景を眺めながら、彼女は静かに呟く。


「私たち、このままでいいのかしら……」


 その言葉に、部屋の空気が一瞬凍りついたかに見えた。しかし、次の瞬間、佳代子が美菜の背後から抱きしめる。


「何を言うの、美菜……私たちにはお互いしかいないじゃない」


 沙織も加わり、三人は抱き合った。彼女たちの体温が混ざり合い、甘美な香りが漂う。


 美菜の長い黒髪が、月明かりに照らされて神秘的な輝きを放つ。佳代子の白い肌は、夜の闇に溶け込むかのように美しく、沙織の唇は今や、さらに艶やかさを増していた。


 三人の唇が重なり合い、やがて衣擦れの音が静かに響き始める。昼間の仮面を脱ぎ捨て、彼女たちは本来の姿を取り戻していく。


 美菜のしなやかな指が、佳代子の胸元をなぞる。ブラウスのボタンが外れ、レースのブラジャーが姿を現す。沙織は美菜の首筋に唇を這わせ、甘い吐息を漏らす。


このシーンは過激な表現を含みます。


 三人の体が絡み合う様は、まさに官能の饗宴だった。美菜の長い黒髪が、佳代子の白く滑らかな肌の上を撫でるように広がる。沙織の艶やかな唇が、美菜の首筋から鎖骨へと滑り落ちていく。


 佳代子は美菜の胸元に顔を埋め、その柔らかな曲線を舌先でなぞっていく。美菜は小さな喘ぎ声を漏らし、背中を反らせる。その動きに合わせて、沙織の指が美菜の腰を優しく撫で上げる。


「美菜、あなたの香り、本当に素敵よ」沙織が囁く。


 美菜の肌から立ち昇る甘い香りが、部屋中に漂う。それは高級な香水の香りではなく、美菜本来の体臭と僅かな汗の混ざった、より官能的な香りだった。


 佳代子は美菜の胸の頂点に唇を這わせ、その反応を楽しむように吸い上げる。美菜は思わず声を上げ、佳代子の髪に指を絡める。


「佳代子……そんなに……」美菜の声は蜜のように甘く、切なさに満ちていた。


 沙織は美菜の背後から抱きしめ、その耳たぶを軽く噛む。美菜の体が小刻みに震え、三人の呼吸が徐々に荒くなっていく。


 佳代子の白い肌が、月明かりに照らされてほのかに輝いている。その姿に見とれた美菜は、思わず手を伸ばし、佳代子の豊満な胸を優しく包み込む。佳代子は甘い吐息を漏らし、美菜の手の上に自分の手を重ねる。


 沙織の唇が美菜の背中を下っていく。その感触に、美菜は思わず身震いする。沙織の舌が美菜の腰の窪みをなぞると、美菜は小さな悲鳴のような声を上げた。


 三人の体が重なり合い、肌と肌が触れ合う音が静かに響く。それは、まるで繊細な楽器の音色のようだった。彼女たちの吐息や喘ぎ声が、その音色に混ざり、官能的な協奏曲を奏でる。


 美菜の指先が佳代子の内腿をなぞり、その先へと向かっていく。佳代子は思わず目を見開き、快感に身を震わせる。


「美菜……もっと……」佳代子の声は切なげで、欲望に満ちていた。


 沙織は美菜の腰を掴み、自分の体に引き寄せる。二人の秘所が重なり合い、湿った音が響く。美菜は首を反らし、沙織の肩に顔を埋める。


 三人の動きが徐々に激しくなり、呼吸も荒くなっていく。彼女たちの肌は汗で濡れ、月明かりに照らされて艶やかに輝いていた。


 しかし、その甘美な時間は、突如として中断された。階下から、何かが大きな音を立てて床に落ちる音が聞こえたのだ。


 三人は動きを止め、顔を見合わせる。


「引っ越しの音……? こんな時間に……?」


 佳代子が小声で言った。

 美菜はカーテンの隙間から外を覗き、トラックを確認する。


「ええ、そうみたい。新しい住人が来るのね」


 沙織は、少し残念そうに呟いた。


「私たちの秘密の世界に気づかなければいいけど……」


 その言葉は、まるで予言のように響いた。彼女たちの平穏な日々に、何かが起ころうとしていた。しかし、その時の彼女たちには、それがどれほど大きな変化をもたらすことになるのか、想像すらできなかった。


 再び静寂が訪れ、三人は互いを見つめ合う。そして、先ほどの情事の続きを、より慎重に、より静かに始めた。


 夜は深く、彼女たちの秘められた愛は、新たな段階へと向かっていた。


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