第29話 廃墟の都市で訓練!? この後どうなる……!?
クレアのおかげで自由な時間が増えた。
清水先生には悪いけど、土日はせっかくだし、普段できないこととかしようかな。
たとえば、VICS関連のこととか。
とりあえず小学校からフェシュネール邸を往復することでそこそこ体力はついたけど、戦闘面での成長はないんだよな……これじゃあまたVICSに襲われたら一溜まりもねぇぞ。
だからそこのところをマリーさんに相談したら、ふざけた返事が返ってきた。
「館の掃除で解決するわよ」
「いや意味が分かりませんよ……」
「様々な掃除道具を適切な所で使って判断力を養い、高低差があるところの掃除ではバランス感覚を鍛え、最終的な汚れのチェックを注意深くすることで戦いに必要な目を得ることができるの」
「いや、それっぽく言ってもダメですよ」
「じゃあどうして欲しいの?」
「戦い方を教えてください。せめて、自分の身を守れるくらいにはなっておかないといけないんです」
「……っ! よく言ったわ。じゃあついてきなさい。ちょうどこれから訓練があるから」
俺の決然とした言葉に心を打たれ、マリーさんは優しげな笑顔で引き受けてくれた。
それが土曜日の朝のこと。途中でシャノンも誘ってから一緒に黒い戦闘服に着替え、それから降下艇に乗り込んだ。
両脇に座席がついているキャビンの、ロッカーからマリーさんが予備マガジン付きのチェストリグを取り出し、手際よく俺の身体につけてくれた。肘や膝のパッドやタクティカルグローブ、そして腰にナイフを装備したら準備完了だ。
「もうそろそろ着くよ。ふふん♪ 楽しみだね。学校だけじゃなくて訓練までシャノンちゃんたちと一緒なんて」
同乗していたクレアが微笑むと、行き先が気になって俺は思わず呟く。
「これってどこに向かってるんだ……」
「旧弧峰市の演習区画。正確には、住宅地での戦闘を想定したD地区よ」
そのマリーさんの言葉を聞いた瞬間、俺の脳裏に山から見えるボロボロの街並みがよぎった。
「ああ、あの通学路から見える廃墟の街に行くのか……」
「市街地戦だな……使用火器はなんですか?」
「火器は使用しないわ。朱宇くんたちが銃を持てる状況ってあんまりないと思うから」
シャノンの質問にマリーさんがそう答えたところでキャビンが小さく揺れ、静かに着地した。
それから後部ハッチが開き、ひび割れたアスファルトの道路が見えた。
(次回に続く)
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