エイリアンVS生物兵器~銀髪美女エイリアンに助けられたので、今度は自分一人でも生き残れるように鍛えてもらったら世界の危機を救うことに~

矢島やじ

第一部 プロローグ

第1話 エイリアンに襲撃される朱宇(しゅう)……この時の俺は、どうしようもなく無力だった

 辺りは黒い煙に包まれていた。

 トクットクッ、と消音器つきの銃声が響いている。

 車の下から覗き込むと、数メートル先に大柄の白人が倒れていた。ウォルターさんだ。彼の隣に身を隠し、デイビスさんが車のボンネットから拳銃を構え、トクトクと撃っている。

 だが、横から飛んできたプラズマが直撃し、デイビスさんもウォルターさんと同じ運命をたどった。

 一体何が起きているのか分からない。今までが非常識なことだったなら……これはなんなんだ? なんで二人とも倒れてる?

 戦場になったショッピングモールの屋上。その駐車場で俺――水巳朱宇みずみしゅうは、恐怖で震えあがって母さんの華奢な腕にしがみついていた。


「大丈夫、だよ。てっ……こんなにぎゅってしてくれたのっていつ以来かな? 小学校の入学式くらいかな?」


 ……俺はそんなこと覚えてないけど……ありがとう。


 気分が少しだけ和らぎ、俺は呼吸を整えながら周囲を見回す。シャノンは、VICSヴィシスの待ち伏せだ、と言っていた。それにアイラさんが硬い表情で頷き、


「ステージ3です。おそらく歩兵級トライヘッドでしょう」


 なんて言っている。わけが分からない。なんで待ち伏せされてるんだ……!?

 だがそんな疑問を遮るように母さんがハンカチを俺の口に当ててくる。素直にハンカチを受け取って俺が這いつくばって煙を吸わないようにしていると、黒い煙を破るモノがあった。

 車体が高いから、下から覗くとよく見える。醜悪な顔を左右に振っていた。

 本物のエイリアンだ。

 そいつらには理性があった。俺が瞠目している間も、同じ見た目の奴らがぞろぞろと姿を現す。怪しく光る銃を構え、四つの瞳孔を備えた十数人ものVICSが、包囲するように扇状に広がった。

 虫みたいに硬化した皮膚の上にアーマーを纏っている人間に似た化け物。その中に、リーダーと思われる者がいた。藍色のアーマーにマガジンが詰まった黒のタクティカルベスト。一見して人間の兵士に見えるが、エイリアンに囲まれて平然としている奴が人間なはずがない。


「わたしは運がいい。こんなところにNOXノックスの人間がいるとはね……」


 誰に言うでもない口調。低い声から男だと分かる。男が上部の膨らんだ特殊な形状の拳銃を向けてきた。


「そこに隠れているのは分かっている。我々と一緒に来てもらおうか。大人しく投降するのなら危害は加えない」

「大丈夫だよ……もうすぐ助けが来るから」


 母さんが安心させるように囁いてくるが、それどころじゃない。

 何でそんなことが分かるのか? 何でまったく怯えてないのか? 

 今まで一緒に暮らしてきた俺にさえ、今の母さんの言動は分からなかった。

 だが、危うい覚悟が伝わってくる。

 母さんが行ってしまう。


「……あ」


 俺は見慣れた小さな背中に手を伸ばした。でも届かない。

 目の前なのに、すぐ近くなのに、虚空をつかむ俺の手には、この距離は遠すぎた。

母さんはどんどん奴らに近づき、プラズマに焼かれたデイビスさんの前でぴたりと足を止めた。


「その様子だと。私って何かのついでだよね? もしそうならそっちを優先し――」

「君には関係ないことだ。それよりあまり手間をかけさせないでもらえるか? 急いでいるんだ」


 男が苛立たしげに言いながら近づいていく。アーマーに包まれた足がコンクリートを踏みしめる。


「了解した……時間がないか。なら、嫌でも行けるようにしてあげよう」


 誰かへ返答するように呟くと、男は拳銃を持った手をゆっくりと上げる。

 その意味を理解した瞬間、俺の全身に冷たいものが走った。

 しっかりと母さんを捉えている銃口。撃つために、俺から親を奪うために向いている。


 嘘だ、ハッタリだ……! 危害は加えないって言ったじゃ――


 プシュッ、と鋭い音が響いた。


 ――え…………?


 銃声というより弓で射抜いたような音。それから、どさりと倒れこむ母さん。苦しそうに喘ぐような息遣い。それから一拍置いて――


 身体が浮き立つような、胸が締め付けられるような不安が込み上がってきた。

 母さんが背中を丸めていた。俺はそれを目に焼き付けた。

 痛みを堪えるように小刻みに震え、ごほっ、と大きく咳き込む母さん。黒煙が立ち込めていてもはっきりと見える。

 悪夢だった。いやこれが、夢だったならどんなに良かったか。

俺は堪らず車の影から飛び出した。


「どうして母さんなんだ!? 人なら他にもたくさんいるだろ!」


 フルフェイスヘルメットがこちらを向く。どんよりと曇ったバイザーは恐ろしく冷たい。


「……この女の子供か? いやだが、君からは何も……まあいい」


 銃口が上がる。また、プシュッといった。


「え……? ……ぅ……あぁ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……!?」


 最初は何も感じなかった。だがすぐに熱いものが腹部に走り、俺は膝を突いた。

 その時だった。


「朱宇ッ!」

「不用意に出ては――く……ッ!」


 シャノンを追って車の影から飛び出したアイラさんがプラズマに焼かれ、地面に沈んだ。

 それで大人たちは全員、エイリアンの凶弾に倒れた。ウォルターさんもデイビスさんも、母さんにアイラさんも、みんな……。

 もう守ってくれる人はいない。俺も痛みで動けない。

 痛みで歪む視界の中で、シャノンがリーダーの男に連れていかれるのが見えた。


 ――あ……。


 今の俺はどうしようもないくらい無力だった。


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