第7章 冬の訪れと心温まる魔法

 秋が過ぎ去り、ふわもこ村に冬の足音が近づいてきた。朝晩の冷え込みが厳しくなり、時折、細かな雪が舞う日もある。ミアは、自作の魔法の毛布に包まれながら、窓の外の景色を眺めていた。


「雪が積もり始めたわね、モフモフ」


 ミアの隣で丸くなっていたモフモフが、のんびりと返事をした。


「うん、もうすぐ本格的な冬がやってくるね」


 その時、ふと思いついたように、ミアは立ち上がった。


「そうだわ。せっかくだから、村の子どもたちに何か楽しいことを教えてあげたいな」


「いいアイデアだね。ミアの前世の記憶を活かせば、きっと面白いことができるよ」


 モフモフの言葉に、ミアは頷いた。そして、ふと思い出したのは、かつて会社の後輩たちに教えた折り紙だった。


「そうね、折り紙を教えてみようかしら。でも、ただの折り紙じゃつまらないわ……」


 ミアは考え込んだ。そして、ふと閃いた。


「そうだわ! 魔法の折り紙を作ってみよう」


 早速、ミアは準備を始めた。村の紙屋で買った色とりどりの折り紙を広げ、一枚一枚に丁寧に魔法をかけていく。指先から優しい光が漏れ、紙に吸収されていく。


 準備が整うと、ミアは村の集会所に向かった。すでに多くの子どもたちが集まっており、ミアの姿を見るなり歓声を上げた。


「ミアお姉ちゃん、今日は何を教えてくれるの?」


 子どもたちの目が好奇心で輝いている。ミアは優しく微笑んだ。


「今日は特別な折り紙を教えるわ。みんな、座って聞いてね」


 ミアは、まず基本的な折り方を教え始めた。鶴、兎、そして花。一つ一つ丁寧に説明しながら、子どもたちと一緒に折っていく。


 そして、折り紙が完成すると、驚くべきことが起こった。魔法がかけられた折り紙は、まるで生きているかのように動き始めたのだ。


 折った鶴が、ふわりと空に舞い上がる。兎が床の上をぴょんぴょんと跳ねまわる。花が、ゆっくりと花びらを開いていく。


「わぁ! すごい!」


 子どもたちの驚きの声が、部屋中に響き渡った。


「これが魔法の折り紙よ。みんなの想像力と、私の小さな魔法が合わさって生まれたの」


 ミアの説明に、子どもたちは目を輝かせて聞き入った。


「じゃあ、みんなも試してみましょう。自分の好きなものを思い浮かべながら、丁寧に折ってごらん」


 子どもたちは、夢中になって折り紙を折り始めた。ミアは一人一人に声をかけ、アドバイスをしながら見守る。


 すると、不思議なことが起こり始めた。子どもたちの折り紙も、少しずつ動き始めたのだ。ある子の折った船が、空気の上を滑るように進む。別の子の星が、ほのかな光を放ち始めた。


「みんな、すごいわ! 自分の中にある小さな魔法の力に気づいたのね」


 ミアの言葉に、子どもたちは歓声を上げた。部屋中が、様々な折り紙の動きと子どもたちの笑い声で賑わった。


 その様子を見ていたモモおばあちゃんが、ミアに近づいてきた。


「ミアさん、素晴らしいわ。子どもたちに夢と希望を与えているのね」


「ありがとうございます。でも、これは子どもたち自身の力なんです。私は、ただそのきっかけを作っただけで」


 モモおばあちゃんは優しく微笑んだ。


「そうね。でも、そのきっかけを作れるのが、あなたの特別な力なのよ」


 その日以来、村の子どもたちの間で魔法の折り紙が大流行した。寒い冬の日も、子どもたちは家の中で楽しく折り紙を折り、自分だけの小さな魔法の世界を作り出していった。


 ある日の夕方、ミアが家に戻ると、玄関先に小さな折り紙の花束が置かれていた。手紙が添えられており、そこには子どもたちからの感謝の言葉が書かれていた。


「ミアお姉ちゃん、ありがとう。私たちに夢を教えてくれて」


 その言葉に、ミアの目に涙が浮かんだ。自分の力が、こんな形で村の人々の心を温められることに、深い喜びを感じた。


 窓の外では、雪が静かに降り始めていた。白銀の世界に包まれていくふわもこ村。しかし、その寒さとは対照的に、村人たちの心は温かさに満ちていた。


 ミアは、魔法の毛布に包まりながら、窓辺に座った。冬の訪れと共に、村全体が静けさに包まれていく。しかし、その静けさの中にも、確かな希望と温もりが感じられた。


「これからどんな冬が訪れるのかしら」


 ミアはつぶやいた。そして、心の中で誓った。この村の人々を、自分にできる限りの方法で守り、幸せにしていこうと。


 雪が降り積もる夜、ふわもこ村は、まるで魔法にかけられたように美しく輝いていた。

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