異世界兵士は大剣振るいて戦場を駆ける

代永 並木

プロローグ

 魔王と呼ばれる存在を倒す為に特殊な力を持つ勇者が異世界から召喚された

 各国が呼んだ合計7人の勇者


「君達7人には魔王を殺して貰う」


 世界最大の国家に呼ばれた勇者達は王の前で横に並ぶ


「魔王を殺した者に富と名声を渡そう。勇者同士協力するも良し個別に仲間を集って挑むも良し」

「話が早くて助かるぜ」


 勇者達は召喚された国で事前に説明を受けていた


「へぇ、協力ありなんだ。報酬は山分け?」

「いや、討伐に参加した者ならばしっかり全員に渡そう」

「つまりここにいる7人全員で協力が一番だな。協力して魔王を倒そう!」

「報酬がしっかりと出るのなら異論は無い」

「俺は断る。俺1人で倒してやるよ」

「私も見知らぬ相手と協力なんて出来ないもの」

「きょ、協力した方が良いと思います」

「僕はどっちでも?」


 勇者達が会話をする

 それぞれ協力しようとしたり単独で動こうとしたりと意見が別れる


「そ、そもそも魔王討伐なんて……強制ですか?」


 怯えた様子の少女が王様に恐る恐る聞く


「いや、強制では無い。しかし、いずれ魔王はこの大陸を奪いに来る。いずれは戦う事になるだろう」

「……うぅ、なんでこんな事に」

「つか1人足りなくね?」

「1人?」

「確かにここに居るのは6人だ」

「その者は遅刻していると言っていた」

「重役出勤だな。まぁ居なくていいだろ。その最後の1人最下位だろ?」

「確かに6位まで揃ってるわ」


 勇者は召喚時にそれぞれ固有の力を得ている

 しかし、その力には差が存在していた

 その為ランク付けされている

 戦闘に役立つ優秀な力を持つ者が上位に入り戦闘向きでは無い支援寄りの力を持つ勇者は下位に

 7人の勇者の中で最下位に存在する勇者

 それは戦闘向きではない力を持ち支援に使える力でも無い、順位を決める際唯一満場一致で最下位に選ばれた勇者


「あ、あの7位の人はそんなに弱いんですか? 正直私が1番弱いと思ってたんですが」

「話によれば戦闘に一切役に立たない力だと聞くが」

「残念ながらそれは事実だ。彼女が得た固有能力は戦闘で役に立たない」

「それを言ったら私も使えませんよ?」

「僕も支援系だけど」

「支援にすら使えない能力なのだ」

「それは……」

「外れスキルと言う奴か」

「ならそんな雑魚連れてくる必要ないだろ」

「それならその人は不参加がいいかも知らない。力があるならともかく力がないんじゃ危険過ぎる」

「足手纏いになるし大人しく国で待ってた方がいいわぁ」

「それは本人の意思次第だ」


 王と6人の勇者が会話をしていると扉が開く

 扉を開けた者は欠伸をしながら6人の勇者が居る場所へ歩いてくる

 眠そうに何度も目を閉じてフラフラと歩く

 銀髪の少女


「……おはようございます」


 そのまま地面に頭をぶつけるんじゃないかと思う程の深いお辞儀をして挨拶をする


「おはよう」

「あ、あぁ、おはよう」

「お、おはようございます?」

「重役出勤とはいいご身分だな」

「ん? 話は終わったでしょ? 私は不参加だから頑張ってねぇ〜」


 挨拶だけして立ち去ろうとする


「ま、待ってくれ」

「何?」

「参加しないというのは協力しないという事か? それとも戦わないって事か?」

「戦わないの方だよぉ、だって提案自体ふざけてる」


 王様に向かって指を差す


「ええっと、王様だっけ?」

「あぁ、我はこの国の王だ」

「頼む立場のくせに頭が高い。身の程を弁えた方がいいよ。勝手に呼び出して偉そうにすんな」

「わぁお」

「王様になんて口の利き方を!?」

「調子に乗るな! 無礼者が!」

「貴様は戦えぬ無能であろうが」


 周りの兵士や見に来ていた貴族達がザワつく

 中には罵声を浴びせる者も出てくる

 欠伸をしながら少女はフラフラと帰っていく


「では私も失礼する。協力するのなら後程別の場所で会議をしよう。ここは空気が悪い」

「分かった。そうしよう。協力する人は訓練場に集まってくれ」

「は、はい」

「そんじゃ俺は自由にさせてもらう」


 6人の勇者達も部屋を出ていく

 勇者達が居なくなったあと静寂が訪れる


「王様、彼の者を断罪すべきです!」


 その静寂を破ったのは貴族の1人


「そうだ、王様に舐めた口を聞いたんだ不敬だ」


続くように他の貴族が声を上げる

王様はこの国のトップ、そんな相手にあのような言葉を言えば本来なら不敬罪で処刑されてしまってもおかしくは無い


「不参加ならば処刑しましょう。勇者としての責務を果たさないのなら要りません」

「それもそうですな。しかし、表立ってではなく裏で」

「他の勇者に勘づかれたら厄介ですから」

「静かにせい!」


 貴族達が勇者への処遇を話し合っている中、王様が声を上げて話し合いを止める


「皆の衆も下がれ。勇者の処遇は我が決める」


 貴族達や兵士が部屋を出ていく

 静かになった後、王様は唯一この場に残った兵士長に聞く


「あの少女の勇者が来た時、あの扉を開けたのは誰だ?」

「あの勇者が来た時ですか? ……門番! 勇者が来た時誰が開けた!」


 兵士長は声を上げる

 すると扉の奥から2人の兵士が中に入って来て敬礼をする


「扉を開けたのは勇者御本人で御座います!」

「何! それは本当か!?」

「ふむ、そうか」


 兵士長は門番のその言葉に驚きを隠せない

 門番の兵士が開けたにしては扉が開かれた時門番の姿が見えなかった

 王様はそこに違和感を感じていてもしやと思っていた、それが的中した


「はい、間違いありません。勇者様は1人で来られ扉を開けて中へ入って行きました!」


 2人の兵士が証言をする

門番にここで嘘をつく理由は無い、つまりそれは真実であると言う事


「……まさかそんな事が」


兵士長は信じられないと言った様子


「ふむ、あの勇者の力は戦闘向きでは無かった筈だが」

「はい、再三確認したので間違いありません」

「兵士長あの勇者を調べてくれ」

「かしこまりました」

「奴に届く手段は多く持たねばならん。これは絶滅戦争なのだ」

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