029 ~あしなが蜂は話せる蜂~

バルコニーに置かれた室外機の中に、

あしなが蜂が巣をつくってしまったらしい。


そうと気づいたのはもう2カ月前ぐらいだったか。

毎日エアコンを稼働させるから、

そのうち居心地が悪くなっていなくなるだろうと思っていた。


しかし案外、あしなが蜂は辛抱強かった。

結局この8月中旬にさしかかる時でも、せっせと行き来する姿が見える。

1匹2匹と順調に働き手が増えていっている気がする。


妻や子どもは嫌がっている。

しかし室外機の中だし、

何よりせっかく作った巣を壊してしまうのも忍びないと、

僕は思っている。


今となっては家族が折れ、

あしなが蜂との半共同生活を送っている。


さすがにスズメバチは恐怖するけれど、

あしなが蜂はどこか話せる相手だと思っている。


こちらから攻撃しなければ、襲ってこないと聞いたことがあるからかな。


それとも、こちら(僕)の想いが伝わったか。


ある日、窓越しにあしなが蜂の行き来を見ていると、

室外機からできていた一匹が僕の目の前で旋回し始めた。


そして僕の目の高さまで来るとその場で漂い、

そして相対して目をあわせてきた。10秒ほど。


「場所を提供してもらっているお礼かね。」

「んなわけあるかい!」


でも僕はこれで確信した。


あしなが蜂は、たぶん話せる蜂だ。


バルコニーに出ても襲ってくることは今のところない。


ぜひ元気に成長して、無事巣立ってほしい。


(*筆者は専門家による指導を受けては

  きわめて独自な対応をしております。

  みなさんは真似せず、しかるべき対応をしてしましょうね。)

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