3.ただの受けではなさそうです!
「わぁ! 湖が綺麗ですね!!」
「せっかくのいい天気だしねぇ」
「このメンツで来る湖も何だかんだ久しぶりだな」
ロッテ家の私有地にある避暑地。森に囲まれた湖に誘われたリーゼは、帽子が飛ばないように片手で押さえながら、簡素なドレスのスカートをはためかせた。
森を抜けた先にある静かな湖面は美しく、自然豊かで静かな空気は清廉だった。
お付きの馬車と侍女、警護の者には適度な暇を出して、3人は慣れた足取りで湖のほとりへと向かう。
子どもの頃にはよく訪れていたこの湖も今では各自が何かと忙しく、3人揃って来ることも少なくなっていた。
「何する? 泳ぐ? それとも釣り?」
「何でもいいけど、とりあえず暑いから泳ごうぜ。着替えはレオの分もあるからよ」
「おっけー」
軽い口ぶりでバサバサと上半身の衣服を脱ぎにかかる男2人を無言で眺め、リーゼは1人ポツンと岸からその光景を眺めていた。しかしてその胸中は穏やかではない。
幼少期から何かと見慣れている2人ではあるが、陽に輝く美男子2人の裸体はいつにも増して眼福ものだった。
レオには負ける身長であるアッシュは、いくらか筋肉質で引き締まった体躯。対するレオは彫刻のように美しい均整の取れた無駄のない細身の長身を惜しみ無く晒している。
もしここに令嬢方がいればこの湖はきっと鼻から吹き出る血で赤く染るだろう。そんなバカなことを考えながら、リーゼは静々と木陰に移動する。
腰ほどまで水に浸かって戯れあう2人を遠目に眺めた。そろそろ大人の仲間入りともなる年齢なのに、水に入ると年甲斐もなく戯れ合う2人が微笑ましい。
ーー男の人ってほんと子どもなんだから。
ふふんとそんなことを考えながら、弾ける水に彩られた笑顔と裸体と笑い声に、リーゼはムフフと1人邪にほくそ笑んだ。
「うわっ」
「はっはーっ!! ざまーみろ! スカした顔ばっかしやがって! その紳士面、引っぺがしてやる!!」
「……全く、アッシュはいつまでも子どもなんだから」
思いっきり撥ね飛ばされた水を頭からモロに食らったレオは、やれやれと言いながらその濡れた前髪を鮮やかに掻き上げる。
「…………ぅぶっ!!」
「うぐっ!! くっそ、マジで無駄にキラキラしやがって! ほんっと腹立つヤツだな……っ!」
水も滴る何とやら。レオの濡れた金髪がその色気を増幅させて、その体躯を滑り落ちる水滴一つ一つから目が離せないほどの求心力を周りに放つ。
その力に当てられて、リーゼとアッシュは思わず同時に胸を撃ち抜かれたような声を上げて赤面した。
「さてさて、それじゃぁ仕返しといきますか?」
「えっ……!?」
「なっ!? ちょっ! まっ!!」
不穏な空気を放つレオに思わず腰を上げて身を乗り出すリーゼと、ジリジリと笑顔で距離を詰めるレオに後退るアッシュ。
「やっていいのはやられる覚悟がある人だけだよー?」
「どっかで聞いたようなセリフを
狼狽えるアッシュに年甲斐もなく笑顔で優雅に飛びかかるレオ。かくして2人の姿は大きな水柱と共に消える。
「お、お兄様!? レオ様!?」
何かを察知して思わず湖へと駆け寄るリーゼの前で、束の間静かだった湖面からザバっと2人が顔を出す。ギョッとして目を見開くリーゼの目に映るのはーー。
「おっまえ何すんだよ!! 全身ずぶ濡れじゃねぇか!!」
「またまたぁ、こうされるのを期待してたんでしょう? それに、どうせ濡れるつもりだったじゃない」
「期待なんぞするか!! つかお前に濡らされるのは何か腹たつ!!」
「それアッシュが言う?」
「…………っっっ!!」
未だ体勢を整えられずに尻もちをついたまま、真っ赤になって焦ったような顔で目を吊り上げてレオを見上げるアッシュを、あははーと半ば覆い被さるような距離感でレオは
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