第16話 仁×ルイ

「では、儂は村長に獲物を渡してくる。仁は問題を起こしてはならんぞ」

「わかってるよ」


 リンは僕のお母さんか。面倒見はいいが、見た目少女は困ることになるぞ。彼女は僕を子ども扱いした後、村の中へ歩いていった。そして僕とルイが残され、互いに顔を見合わせる。


「どうする?」

「うーん。暇になるね」


 ルイは悩んだ。そして答えを得た。


「そうだ!仁って槍を持ってるから、槍が使えるでしょ。稽古しようよ。ボクが見てあげる」

「確かに持ってるけど…」


 森に行くために持ってはいた。だが正直やりたくない。ルイは大きな鎌を持っているから、怖いのだ。


「仁は神性力がまともに使えないんだから、それ以外の部分を鍛えないといつか死ぬよ。この世界はモンスターもいるし、人だって善人ばかりじゃない」

「そうなのかな。ちなみにモンスターってどれぐらい強いの?」

「種類によるかな。竜とかは全部強いよ。あとはゴブリンとかオークとかオーガとか人型のモンスターは弱いのもいるし、強いのもいて数が多い。あとは獣みたいなのもいる。今の仁だったら瞬殺されるようなモンスターは少なくないと思うよ」

「そう言われるとやるしかなくなる…」

「じゃあ、決まりだね!このまま村の入口近くでやろう」

「わかったよ」


 稽古をする事に決まった。そして僕は精一杯の強がりを言う。


「ケガしても知らないからな!」

「大丈夫!急所以外なら」


 彼は元気よく答えた。そして周囲に何もところでお互いに向き合う。


「ルイ、その鎌で斬られると僕は絶対死ぬんだけどどうすればいい?」

「大丈夫。刃は君に向けないよ。殺しちゃうからね!」


 笑顔で言われた。だがこれで本当に稽古で済むようだ。僕もルイを傷つけるのは本意ではないので、槍の穂に布をまく。


「仁、君から来なよ」

「わかった。じゃあ…」


 先手を譲られたので、腰を落とし、槍を構える。


「行くよ!」


 一気に突っ込む。そして勢いのままに槍で突く。行動不能にするため、足を狙う。彼は大きな鎌は持っているが、盾を持っているわけではない。槍で突かれるのは嫌がるだろう。だがそんな思いとは裏腹に、簡単に弾かれる。槍を大鎌の長柄で叩かれたのだ。そして僕がもう一度攻撃しようと、槍を手元に戻して彼に突きや払いを繰り返す。ルイも稽古だからそれをわざと観察して僕の力量を見ている。だがゾンビのときのように振るった槍は全く彼に届かない。遊ばれているのがわかる。僕は何もできず、無力感を感じた。そして僕が疲れとストレスで槍が鈍ると、懐にするりと入り込んできた彼に蹴りをもらう。


「ぐっ!」

「槍の扱い方は悪くないけど、単調だね。わかりやすい」


 僕はあっけなく負けたのがわかった。彼はやろうと思えば、いつでも蹴りだけではなく、そのまま大鎌を振り回せたのだろう。力量差がありすぎる。


「仕方ないよ。実戦もゾンビ相手が初めてだし、僕は棒術しか教わっていない」

「そうなんだね。でも棒術か…。それにしては違和感なく槍を使えてたよ。誰かに教わったの?」

「いや教わってないけど…。あれかな?リンが棒と槍は扱いが似てるからって言ってたよ」

「うーん。そんな単純なことじゃないよ、きっと。ボクはこの大鎌しか使ったことないから知らないけど」

「じゃあ、どこを見てそう感じたの?」

「そうだね。槍には棒にはない穂があるでしょ。その刃先がちゃんと槍を振る方向を向いていた。矛先ならぬ、槍先がきちんと合っていたんだ」


 槍先とはなんだろうか。そんな言葉があるのか疑問である。そして僕はそれを意識してやっていない。父に教えてもらったように槍を振っている。


「君がもし無意識でやっていたのなら、それは直接教わったことではなくて誰かを見て盗んで覚えたんじゃないかな?例えば仁の棒術の師匠とか」


 それつまり、父は元々棒ではなく、槍を振るっていたということだろうか。僕は父の棒裁きが好きでよく見せてもらい、マネをしていた。父の棒の握り方や攻撃の姿勢をよく観察していたのである。それなら辻褄があう。でもどうして父は槍ではなく、棒を振るうようになったんだろう。現代日本には合わないからだろうか。槍持って歩けないし。


「そうかもしれない。今思えば父さんはあんまり過去のことを話さなかったからわかんないけど。教えてって言っても『俺は未来に生きる。だから未来の話をしよう』ってよくわかんないこと言って誤魔化してたような気がする。」

「へー、でも不思議だよね?仁は異世界出身でしょ。何でそんな仁の父親が槍を使えたんだろう。仁の世界もやっぱりボクたちの世界みたいに物騒なところなの?」

「国によっては物騒だけど、槍はもう使ってないはずだよ。もしかしたら他の武術も受け継いでいる人がいるから、父さんもそのうちの一人だった可能性はあるね」

「面白そうな世界だね!今度その話聞かせてよ」

「いいよ。ルイには今後もお世話になりそうだし」


 そうして僕らはまた稽古を続けた。



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inoinoです。

ここまで読んでくださり、読者の皆様ありがとうございます。


実際にここまで書き始めて、今まで読んできた作品の凄さが改めてわかりました。

特に毎回3000文字ぐらいで投稿されてる方は頑張っているんだなと感じます。

今まで安易に読み飛ばしたこともあるので、申し訳ない気分を味わいました。


自分も精一杯やりきろうと思います。例え誰にも読まれなくとも!笑

見直しはしていますが、誤字などがあるかもしれません。

そのときはあなたの頭の中の鉄板の上で僕は土下座をしています。

せいぜい焼いてやってください笑


それでは次回以降の投稿もぜひ!

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