第2話 森の中の現代人、異世界を知らず

 はっとして目が覚める。 


「ここは…?」

 

 わけもわからず周囲を見渡しながら立ち上がろうとするとふいに眩暈めまいを覚え、足元が覚束おぼつかなくなる。車にかれたせいなのだろうか。フラフラしながらもなんとか膝を伸ばし、背筋を伸ばし先ほどの光景を思い出す。

 自分に突っ込んで来る車とよくわからん少女。


「…?車のほうは事故として、あの少女はなんなんだ一体?」


 この現状についていけず、口から疑問が漏れる。それに気を失う瞬間にネットで見たブラックホールのようなものにみ込まれたような気がする。


「…ふっふ…っ!」


 それに先ほどから少女の甲高い笑い声のようなものが聞こえるような…。とうとう俺の頭はやられたのだろうか。


「ふっふっふっふっふっふっふ!」

「やっぱり聞こえる!」


 そこにはいたのは交差点で出会ったローブ姿の子ども。この声からしてやはり少女に間違いないだろう。そして改めて周囲を見渡すとここは木に囲まれている。ここは森のどこかであり、どこかの森に違いない。


「む。なんだやっと起きたか。遅いぞ。こんな森の中で居眠りして死にたいのか?」

「…死にたくないです」

「であれば早く起きろ。移動するぞ」

「それより聞きたいことがあるんですけど」

「ふむ。答えてやろう。だが歩きながらな」


 なんでこの子はこんなに偉そうなんだろうか。理解できない。


 確かにここは森の中だ。こんなところで居眠りしていると危険なのは間違いない。たが何か納得がいかない。


 なぜこの少女はこの状況で平然としていられるのだろうか。それはこの少女こそが主犯に違いないからだ。自分はもっと聞きたいことがたくさんあるのだ。ここはどこなのかとか、あなたは誰なのか。


 しかし今はついていくしかないだろう。おそらくここは異世界。ブラックホールのようなわけのわからないものに吞まれた先が地球であるはずない。そんな世界に拉致された俺は井の中の蛙、大海を知らずという状況である。僕のものさしで動くと痛い目に会うに違いない。少女の機嫌を損ねるとこの場に置いて行かれる可能性もある。なので失礼のないように話をして、ただついていくしかないのである。

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