4章 抱きしめてもいいっすか?

「先輩、すっごい楽しそうでしたね」

「凄く楽しかったよっ!だって、初めて来たんだもん」

「へ?」

「……いつか来たいなぁとは思ってたけど、さすがに1人で来るのはハードルが高くて」

「マジっすか?北島先輩や天野先輩と来たりしないんですか?」

「こういうお店には……ね」


 世界最大規模を誇るアニメショップの本店は、フロアごとにグッズ売り場や催事スペース、ゲーム関連にアニメイトシアターまで完備されている。

 彼から声をかけられるまで今が何時なのかすら忘れるくらい、アニメの世界に魂が旅をしていた。


「じゃあ、いつでも俺がお供するんで」

「……いいの?」

「いいも何も、先輩と趣味全開のデートだなんて、俺にとったらご褒美以外の何物でもないっすよ」


 ショップを出た雫と虎太郎は、少し早めの夕食をとるために池袋内を散策する。


『デート』だなんて、私には無理だと思ってた。

 男の子と二人きりで歩くことすら想像できなかったのに。

 今は意外にも自然と肩を並べて歩けている。


「先輩、何食べたいですか?」

「ん~、好き嫌いないから、津田くんお薦めでいいよ?」

「ラーメンでもいいっすか?」

「うん、いいよ」


 眼力があって、迫力がある体だから先入観で凶暴そうに見えてしまうけれど。

 店内での彼の言動や、こうして私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれるところは、彼なりの優しさが込められている。


「聞きたかったんすけど、アルディ推しですか?」

「へ?」

「この前、駅でぶつかった時、スマホの画面がアルディだったんで」

「……あれは」

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