原作

疲れた、なぁ。

もう、死にたい。

多分、そういったって世間はそれを認めてくれない。

頼むから死ぬな、自殺などするな。と声をかけるだけ。

カウンセリングは有難いけど、本当にこっちの気持ちを理解してくれてるのか分からない。

だから、私は人と関わらないことを決めた――。

小学校卒業から、今日で10年。

その間、私は外に出てないし、人と会うことさえもしなかった。


世間には、いつも「しあわせ」がいっぱいある。

私にはないんだ。

――それが。

私には「しあわせのかたち」が、何かわからない。

小さい頃、ずっと夢見てた。

自分にも、いつか王子様が現れて。

私に「しあわせ」をくれるんじゃないかって。

それは、違った。

私にそんな人なんて現れなくて。

ただただ日常がすぎていくだけだった。

――この日々が、うざったくなった。

だから、私はひとりでいることを決めたんだ。

辺りを見回す。

私の周りには、なにもない。

あるのは暗闇だけ。

――これは、自分で決めたこと。

ひとりでいるって、もう人とは関わらないって決めた。

もう、「しあわせ」なんて私には無いんだから。

ないん、だから。


そんな日常。

私はひとり。

周りには何もない。

何にもしない。

一日中座ってるだけ。

ただただぼーっとしてるだけ。

――なんてつまらないのだろう。

もう、なんで私って生きてるのかなぁ。

私が生きたって、周りの人に迷惑かけるだけだし。

死んだ方が、マシなんじゃないかなぁ。

誰にも言えない、この感情。

自分の人生位、自分で区切りしぬとき決めよう。

そっちの方が、迷惑をかけないで済む。

ふらっと立ち上がって部屋を出ようとする。

でも、立ち上がった瞬間に立ちくらみがして、立ち上がれない。

――あと、ちょっと。

あとちょっと、この感情に耐え抜けば。

私は、解放されるんだ。


勇気を振り絞って家を出る。

親はいなかった。

――やっぱり、私に興味なんてないんだね。

もう二度と帰ることのないだろう家を見つめる。

その家は、思っていたより小さくて、なんだか心細そうだった。


ビルの屋上まで来た。

もう、後戻りなんてできない。

あとは、ここから飛び降りるだけ。

幸い、ここのビルの柵は低めだった。

いける。

私は、人生を終わりにできる。

自然に顔に笑顔が浮かんだ。

空気に身を委ねようとした、その時だった。


「ねぇ、迷惑なんだけど。」


後ろから聞こえた、の人の声。

振り向くと、そこにはひとりの平凡そうなサラリーマンがいた。

――だれ?

困惑が顔に出ていたかもしれない。


「俺はここのサラリーマンだ。このビルで死なれると、大変なんだよ。それに……。」


それに?


「君に、死んで欲しくないし。」


ボソッと呟いたあなたの声は、きちんと私のところまで聞こえた。

――私も、求められてる?

頬が少し赤くなっていくのを感じた。


「……わかった。」


この初めての感情。

この気持ちの名前、なんていうの?

これが、「しあわせ」?

誰か、教えてよ。

胸の高鳴りを感じた。

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