ep.35
トオルが祝福の光に包まれた瞬間を偶然見かけた者が他にいた。
生徒会長のグリスである。
え?あれって継承の光よね?
しかも私と同じ金色なんて...
そんなグリスと浮かない顔のトオルを他所にアニはただ喜びを爆発させていた。
「トオルさん!すごいですよ。レアギフテッドであること間違いありませんよ!ああ、良かったー!!」
あれはAクラスのアニだろう。
どうして、Fクラスのゴミムシとつるんでいるんだとグリスは思う。
しかし、あの男、トオルと言ったか。
私と同じ金のギフテッド。
とりあえず、グリスという少女はトオルを密かに監視することを決めた。
退学をかけたバトルロワイアルの日がやってきた。
カイはとても不安そうな面持ちだ。
何せ、落ちこぼれ二人の相手はAクラスの赤髪のバン、青髪のセキが相手だからだ。
それはトオルたちにとって、お前たちは不要だと言わんばかりの構成だと思わせられていた。
ただ、今日のトオルはいつもより座った顔をしているような気をしているのがカイの内心だ。
さっき手を貸せと言われて、手の甲をサッと擦られると謎の紋章が俺の手に浮かんだのだがこれは一体何だ?
とにかく俺に任せろといつになく真剣な顔で言われたので素直に従ったはいいが。
そして、模擬戦が開始される。
カイはいつも通りファイアボルトを繰り出した。
それは何の変哲もないファイアボルトだと思われた。
放出した瞬間にカイは気づく。
「なんじゃこりゃー!!!!!!!!!」
尋常ではない大きさの火球を創り出していたのだ。
その大きさは普段の約5倍だった。
「グアアア!!!!」
あっという間に普段酷い扱いをしてくるバンを木端微塵にしてしまう。
残るはセキだ。
だが、カイは右手の甲の紋章が消えたことに気付く。
「後は任せろ!」
トオルにそう言われカイは首を縦に振らざるを得なかった。
「説明はまたしてやるさ。」
まただ。トオルの持つ剣に紋章が浮かび上がる。
「行くぜ!」
「バンを倒したくらいでいい気になるなよ!!」
トオルは魔法の才に秀でているわけではない。
かといってギフテッドすら持たない異端の存在だった。
しかし、剣の稽古はこれでもかというくらい真面目にやってきた。
それでも、何にも恵まれなかったトオルがAクラス、いや国屈指の魔導士と熾烈な剣戟を繰り広げている。
そして、最後にトオルは僅差の勝負で押し勝つために切り札らしきものを使う。
自身に紋章を浮かび上がらせたのだ。
そして、金色の光に包まれる。
さらに、トオルの髪が赤く燃え上がった。
「フルパワーで行くぜ!!」
その刹那足元が、闘技上の石が割れ始めた。
一気に地面を壊しながら踏み込む。
その圧倒的すぎるスピードに周りにいたカイもアニもバンも、Aクラスの担任の一級魔導士ゼレスさえも目で追えなくなる。
そして、密かに監視していたグリスも驚愕といった様子だ。
双剣使いのセキも奥義を使う。
「アイシクルオーバー!!」
鋭い氷の氷柱がいくつも的を外し、飛んでいく。
「馬鹿な!僕がFクラスの愚鈍な屑に負けるわけが...」
そして、勝負あった。
双剣を弾き飛ばされ、尻餅をつくセキ。
勝者Fクラス。
「なあ?トオルお前一体何があったんだ?」
カイはどうしても尋ねざる得ないほど気になって仕方がないようだ。
「ああ、俺はなギフテッドを授かったんだ。」
「ギフテッドを持たない異端児なんて周りに言われてたがついに...おめでとう!良かったじゃねえか!?」
カイは不遇な状況に置かれても尚できる事を続けていたトオルを祝福する。
それでだ。
「種明かししてもらおうじゃねえか?」
「ああ。」
トオルが新たに授かった能力。
「オーダースタンプ」
自身やその他の人物、物体に紋章をスタンプし、最大限の能力を引き出すと言ったものだ。
自身にスタンプすると、人智を超えた力を発揮するが、3分間までしか保たない。
つまり、まだ未完成の能力なのである。
また、呪いの解除も同時に行われる。
つまり。
「カイ。俺がお前にしたのは自身の能力を最大級に引き出すというもの。お前にはどうやら魔力制御の呪いが課せられていたらしい。」
「何だって...」
「経緯は俺にもわからない、というより知らないがお前の力はFクラスには勿体無いという事だな。」
カイは有頂天になる。
「俺もっと修行してお前に負けないくらい強くなるぜ決めた決めた!」
「ああ!」
そして。
何とトオルとカイはゼレスにAクラスへと引き上げられてしまう。
そして、授業の合間の休み時間のこと。
「ミナカミトオルさんですね?」
そこにいたのは、もう卒業したはずのグリスだった。
「私、Aクラスの副担任をやることになりましたわ。改めてグリス・ロワイスです。」
「はあ。これはご丁寧に。」
「それでですね。私はあなたに折り入ってお願いに参りに来ました。」
「それは、どんな内容でしょう?」
「ええ、それは私とパーティに出て頂けませんか?」
ロワイス家。
国に仕える名家の一つであり、その財力、権力は国有数のものだ。
そんな名家のお嬢様が、Aクラスに上がって間もないトオルをご指名というわけだ。
一体何故。
「私、半年前の模擬戦を見て思いましたの。ああ、何と素晴らしい能力だと。」
グリスは何故か恍惚とした表情を浮かべ、股を閉じる。
「私のギフテッド。Fクラスのゴミムシどもにはとても届かないサンライトと組めば、あるいは...」
聞いたことがある。
元会長の能力は日の出ている時間なら魔力が数倍に跳ね上がり、日中はもはや最強と謳われていた。
「今年こそは、良い殿方とパーティに出席したかったんですの。」
「お断りします。」
「へ?」
グリスの予想を裏切る言葉に思わず、彼女は間抜けな声を出す。
「あなたは、Fクラスをゴミムシだと言った。僕は弛まぬ努力と、ようやく授かったギフテッドでここまで辿り着いた。だから、Fクラスのやつらをそんな風に言う人とパーティなんて気が引けます。」
それを聞いたグリスは顔を真っ赤にした。
着用していた手袋をトオルに投げつけ、
「決闘です。私が勝ったら黙ってついて来なさい。あなたは私と同じ金のギフテッドの所持者。どこぞの馬の骨と思っていましたが、それを知っては放置するわけにもいきません。」
この世界のルールでは決闘を避けることはできない。
「良いでしょう。僕が勝ったらさっきの言葉の訂正。そして、パーティの出席はなしです。」
「良い度胸ですね。もちろん夜中でも私は構いませんが?」
「いいえ。日中で行きましょう。」
敢えて、トオルは挑発に乗り、日中を選択する。
確かに、会長は夜中でも十分強い。
近くにいたカイが歩み寄ってくる。
「こりゃ大変なことになってるな。」
「ああ、ロワイスさんと色々あってな。」
その時もう既に、グリスはその場を立ち去っていた。
明日の正午。クレイツ公園で待つと言い残し。
それにしてもだ。
カイは少し、不安になる。
いくら何でも現役最強クラスの魔導士とトオルじゃ分が悪いのではと?
しかし、トオルという男をこの時カイは見くびっていたと思い知らされることになるのであった。
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