第17話熾烈な戦い

 レッズはいつものように大剣を構えた。赤の秘宝は埋め直されてある。


 対して、グランは杖を取り出す。


 「うおおおおおお!!」レッズは気の力を全身に流し込む。


 「漆黒の大剣を使うか。ガイア様。いや赤髪よ。」


 グランは唱え始めた。「暗黒の主たる我と共鳴したまえ。」


 グランはデーモンロードを呼び寄せた。超厄災級の存在だ。


 レッズは完全な魔人族の紋章を目に宿した。恐らくかつてないほどの力が今なら使える。そう思った。


 レッズはデーモンロードに斬りかかった。だが、相手は伝説の存在。一斬りとはいかない。


 デーモンロードは鋼鉄の両手でなんとか攻撃を防いだ。


 キーナ、クレイツが続いて、攻撃を仕掛ける。


 「天と盟約を結びし我の前にその姿を顕現せよ。ラファエル!」


 「この風凪で掻っ切る!」


 デーモンロードの後ろで退屈そうにしているのはグランだ。


 しかし、三人の連携でデーモンロードは少しずつ削れている。


 そして、伝説の存在を赤髪は縦に真っ二つにした。


 「さすが、魔人王候補なだけありますな。」


 今のレッズは力を限界以上に引き出している。いつまで保つかはレッズにもわからない。


 「フン。魔人王になるつもりは毛頭ないぜ?そして、ここでお前を倒す!」


 「はは。やってみなされ。魔人王様の剣の指南役をしていた私に剣で勝てますかな?」


 グランは暗黒剣デスソードを抜く。


 そこからは常人の目には見えないほどの剣戟が繰り広げられる。


 「キン!ガン!ゴン!」


 だが、ややレッズが優勢に見える。そこにキーナとクレイツの援護が入る。


 しかし、レッズがかなり体力を消耗してきている。慣れない力を酷使した反動だ。


 そこをグランは見逃さない。


 「ガコーン!」


 レッズの手から漆黒の大剣が離れてしまった。


 クレイツが二人の間に入り込んだ。


 「行け!風凪!」


 その直後だった。クレイツの腹に風穴が空いたのは。








 ベガは幼い見た目だが、非常に残忍な魔人だ。


 カレン達が苦戦を強いられていた中、それは起きた。


 「クレイツー!!!!!!」レッズの怒号が響いた。


 カミラがクレイツの応急処置に当たる。


 これにより、一人人手が減る。


 カレン達は顔を引きつらせる。


 クレイツの状態はかなり不味い。


 「レッズさん。あなたはもしかしたら選択を間違えたのかもしれません。」カミラはそう呟いた。


 ベガの魔の手がカレン達を襲う。


 幼い魔人はデーモンロードを召喚する。


 レッズでも苦戦する厄介な奴だ。


 だが、ユーゼは冷静だった。


 ユーゼはやむなく禁じ手を使う。


 「天より見放されし、空の支配者よ!今ここに顕現せよ」


 そこに降臨したのは


 堕天使ルシファーであった。


 こちらも伝説級のカードを出した。さすがは現第二席次といったところか。


 これにはベガも舌打ちをする。「デーモンロードじゃちょっと役不足かな。」


 そう言うと、小さな魔人は自らデーモンロードに並ぶ。


 「さあ。片付けちゃうよ。」






 クレイツは冥界の門を叩こうとしていた。


 しかし、カミラは救護に全力を尽くす。二度しか使えない蘇生魔法をここで使用すべきか悩む。


 クレイツの魂は今まさにこの世に留まるか審判を受けていた。


 瞬間クレイツの身体が光に包まれる。


 どこかで見たような天使が刹那顕現し、クレイツに息吹を吹きかける。


 そうすると、クレイツの腹に開いた風穴がどんどん修復するではないか。


 カミラはこれに驚かされる。


 まさか、今のは命の女神テルシエルか。神話上の存在がなぜ。


 いや、今はそんなことはいい。


 クレイツは目を覚ます。


 「あれ。今俺確かに死んだような。」


 「クレイツさん。お気を確かに。今はまだ魔人族と交戦中です。」


 「そうでしたね。戦線復帰といきますかね。」


 レッズはグランの剣戟に対し、防戦一方となっていた。


 しかし、レッズも守るべき仲間のため負けじと黒い大剣を振るう。


 そこにクレイツも加わる。


 レッズは心底安心したようで、「クレイツ。傷はどうした?」


 「俺にもよくわかりません。ですが、この通りまだやれます。」


 レッズはその幾戦も背中を預けてきた戦士の心強さにまるで戦闘中の孫〇空のような笑みを浮かべる。


 さらにカレンの進言でベガとの交戦からグレスが回ってきた。


 キースターの歴戦の戦士達の剣裁きには目を見張るものがある。


 そして、グランは高らかに笑うのであった。


 「はっはっはっはっは!!面白い。これだからは戦は楽しいものよのう。」


 三人が連携技を使う。


 「集え。剣の修練を極めし者たちよ。今その真価を発揮せん。」


 そして、キーナが「援護します!身体強化改!」


 三人が大幅にパワーアップする。


 「行っけーーー!!!!!!!『千本桜』!!!!」


 そして、ついにグランの身体を捉えた。


 






 一方でカレン達は魔導士の特権である魔法を駆使してベガの猛攻を防いでいた。


 そして、局面を打開するため、カレンはユーゼに耳打ちする。


 カミラにも目配せで意図は伝わった。


 後は実行するのみ。ルシファーがデーモンロードを圧倒する中、勝負に出る。


 全盛期に魔人を六英雄ゼノと共に打ち破ったユーゼがこちらにはいるのだ。


 カレンは彼に全幅の信頼を置いている。そして、攻撃の時だ。


 カレン、カミラ、ユーゼの三名は合同魔法を放つ。


 「我ら魔道を極めし者達が今ここに叡智の力を放たん!」


 天上にまるで銀河のような切り口が生まれる。


 「コスモドライヴ!!」


 その美しい衝撃波はベガを飲み込んだのであった。


 レッズ達は、あるいはカレン達は一度は勝利を期待した。


 しかし。








 「こんなものかい赤髪?」グランは飄々と言ってのけた。


 無論手傷は負わせたが。致命傷には残念ながら届かなかったようだ。


 さすがは伝説、いや、幻の存在か。レッズ達は顔をしかめる。


 「本当の戦いはここからってやつですかい?」クレイツが冷や汗を浮かべながらそう言った。


 「ああそのようだ。」グレスも消耗はしている。


 だが一番負担が大きかったのは前衛のレッズだった。力はもう使い果たされる寸前まで来ていた。


 それでも。


 レッズは大剣を支えにして、地面から膝を上げる。


 「誰一人欠けることなく戻る。これは俺の決定事項だ!!」


 「フッ。」グレスも聖剣を構える。


 「クレイツ!貴様には今聖なる力が宿っていると精霊が教えてくれた。この聖剣とその力、合わせるぞ。」


 「ええ。今日は風凪いや、光の風凪が手に馴染んでる。やりましょう。」クレイツはにやりと笑う。


 「そして、レッズ!貴様が奴にトドメを刺すんだ。」


 「ああ、任せやがれ!」


 三人は失いかけた戦意を取り戻すことに成功する。


 「聖剣よ今我とその聖約の盟主の声に応えたまえ。」


 「ホーリーソード!」「光鋼刃!」


 それはグランの身体を縦に横に十文字の傷を与えた。


 そして。


 「漆黒の大剣いや、聖者の大剣よ!今我に応えたまえ!」


 大剣が紅に染まる。


 レッズの渾身の一撃が今度こそグランに届いた。


 「ばかな。この私がこんな若造に!!」


 レッズ達はここに勝利を収めたのだった。


 


 

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