第4話青の秘宝

 「クロノ・トワール」レッズはそう唱えて見せた。そう、頬に十字の傷がある男を見つけたのだ。といっても、想像していたよりも数段若かったが。


 ラセムはミーラに言う。「大丈夫。援軍だ。それも彼はかなりの手練れっぽいぞ。」


 「ええ。そうらしいわね。遺跡の主がどこか委縮してるようにさえ見えるわ。」


 レッズは角を切り落とされた主に再度攻撃を叩きこまんとする。レッズの横なぎは主を叩き飛ばした。


 「あれは、剣なのか?なぜか禍々しくさえ感じるが。」ラセムは不思議な剣のような物をそう捉えた。


 そして、怯んだ白虎をレッズは縦に叩き斬った。


 「なんて強さだ。危険度S級はあったはずなのに。確かに少し消耗はしていたとは思うがそれでも....」他の攻略メンバーたちがざわつくなか、ラセムだけは違った。


 英雄。そんな言葉が彼にはぴったりだと心の中で感嘆していたのだった。


 他のメンバーがレッズを畏怖する中、ラセムはレッズに向かっていった。


 「危ない所を助けていただきありがとうございました。」青年は赤髪の男に感謝を述べる。


 「俺もこの遺跡に用があってな、訳あってダルクンベルクスを探している。」


 「青の秘宝ですか。伝説で謳われてますね。心当たりが全くないわけではありません。確かこの遺跡で見掛けられたと聞きました。」


 「本当か!?」


 「はい。この遺跡の宝物殿に恐らくあるのではないかと。俺は宝物の方に用があります。青の秘宝は持っていってもらっても構わないかと。」


 「助かるよ。で、どこにあるんだ?」


 「隠し部屋を探す必要があるかもしれません。」


 「なるほどな。心当たりはあるか?」


 「恐らくあそこかと。」


 頬に傷のある青年は主が最初に座っていた場所の床を耳を澄ませてトントンと叩いた。


 「やっぱり。空洞があります。後、お名前は?俺はラセムと言います。」


 「レッズだ。案内してくれると助かる。」


 「レッズさんですね。分かりました。」


 ラセムは手榴弾を取り出し、その床を壊した。


 「階段があります。行きましょう。」


 一行はその階段を下っていった。


 すると、そこには宝箱と、金銀財宝が散らばっており、その奥の四角い石の上にあったのは


 「青の秘宝だ。ついに見つけたぞ。」レッズは大事そうにその小さな青くて丸い綺麗で宝石のような

石をしまった。」


 カシムたちは大きなカバンに金銀財宝をしまっている。


 宝箱の中身は破れた地図だった。それをレッズは取り出すと。


 「俺たちには必要ありません。」とラセムに言われたので秘宝と共に大事にしまった。


 レッズはこの地図を恐らくだが、魔神族の領土のものだと思った。そこには、遺跡に来た時最初に見た紋章そっくりのものが右下端に刻まれていたからだ。


 「これももしかすると集める必要があるかもな。グレスに一応報告だ。」とレッズは独り言を言う。


 この遺跡ももしかすると魔人族と関係があるかもしれないと思ったのだった。


 






 レッズたちは共にケレスまで戻った。最後に道を教えてくれたおっちゃんは驚いていたのであった。


 「まさか本当に無事に戻ってくるなんてやるじゃねえか赤いの!」


 「ああ。宣言通り誰も死なせてないぜ。おっちゃん。」


 「はっはっはっ。俺はこのケレス自治区の一応長であるラビスだ。ラセムついにやったんだな。」


 「ああ。この御人に危ないところを救ってもらった。」


 「ほう。赤いの。今日はラセム達のキャンプに寄っていくがいい。」


 「もちろんそのつもりだラビスのおっちゃん。お礼をさせてもらわねば。」


 「そ、そうか何だか悪いな。お言葉に甘えさせてもらうことにするよ。」とレッズはちょっとだけ恐縮している。これもレッズの人柄だろうか。


 「はい。故郷の復興もあなたのおかげでなんとかなりそうです。改めてお礼を。」


 「いやいいのさ。俺も宝物殿に用があったからたまたまだって。」


 「私からもお礼を言わせてください!」とミーラだ。


 「これで下の子たちに美味しいものを食べさせてあげられるわ。」


 「そうだな。」とラセム。


 







 レッズはラセムたちのキャンプにお邪魔した。


 「俺たちの村はここから南西にあるガレスト自治区にあるんです。もし寄ることがあれば頼ってください。ココラ村といいます。」


 「ほう。村の復興の資金集めのために冒険者になったのか。」


 「はい。俺とミーラはもうこの稼業で5年ですね。A級にはなれましたがレッズさんを見ているとまだまだです。」


 「はは。俺はそんな大層なもんじゃないさ。娘みたいな存在ができてな。まだまだ頑張らねえとな。」


 「レッズさんはとても謙虚なんですね。」とミーラは感心していた。


 すると、料理が出てきた。


 「これは、カモの肉を塩漬けにして、しばらく置いて揚げたものです。どうぞ。」


 「これはうまいな!塩気が効いていて熱々でいいな。」


 「気に入ってもらえて良かった。」とラセムは少し安心していた。


 そして、レッズは気持ちよさそうにハンモックで眠りにつくのだった。


 別れの時が来た。


 「俺たちはまとまった金が入るので村のために冒険者を引退します。こっちのミーラとくっつくつもりです。」とラセムが言うとミーラは頬を赤らめた。


 「そうか。世話になった。元気でな!村の復興を祈ってる。」


 「はい。レッズさんもお元気で!」と笑顔の二人とレッズは別れた。


 「結婚か。俺には縁がないかもな。」とレッズは笑ったのだった。









 レッズは港まで向かった。キーナに土産を買い、船で帰路についた。


 レッズは今回の旅をこう振り返った。遺跡はもしかしたら魔人族と関係があるやもしれないこと。そして、情報にはなかった地図がともに置いてあること。まあ他の秘宝が全部遺跡に隠されているとは限らないが。


 なんにせよレッズにもまとまった金が入る。キーナに何かごちそうしてやるかと親ばかレッズはそんなことを思っていたのだった。








 そのころ、魔人族側にも動きがあった。「どうやら魔人王レーネスト様を復活させる動きに感づかれているようですね。」


 謎の女は言う。「そうみたいね。私たちの封印も解けたばっかりだし....」


 「ゼネスよ。」初老の魔人がゼネスに声をかける。


 「ハッ。何でございましょう。」


 「レーネスト様復活の準備に必要なものは私たちに任せておけ。お前は各地の隠れた不穏分子を片付けてほしい。」


 「承知しました。グラン様。どの者からがよろしいでしょうか。」


 「赤髪の大剣を持った剣士を知っているか?」


 ゼネスはニタリと笑った。


 「ええよく。私があの者の故郷を壊滅させましたので。」


 「ならば適任だ。そやつは人間にしてはかなりやるようでな。早めに潰しておけ。」


 「かしこまりました。」とゼネスはグランと呼ばれる魔人からレッズ抹殺を命じられたのだった。


 レッズはこの時は知る由もなかったのだ。古の魔人たちが復活し始めている事実を。


 そして、レッズたちに猛威を振るう魔人たちの強さとは。

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