第8話 始まりの町は少し変
馬鹿に付ける薬 《気まぐれアルテミスとのんびりベロナの異世界修業》
008:始まりの町は少し変
峠の上から見た時は小さく見えたが、じっさいに近くまで来ると結構大きく、町というよりは街だ。
「お店も家も少し大きいような気がするわ。そうは思わない、アルテミス?」
「ああ、増築した感じの家もあるなあ」
「窓辺やベランダの鉢植えも手入れが行き届いている感じだわ」
「おっと、工事中だ」
メインストリートが二股に分かれた先にギルドの看板が見えるので曲がろうとしたら道路工事中で、腰の曲がった警備員が指示棒を振って迂回路を示している。
「仕方がない、迂回するか……どうしたベロナ?」
ベロナは工事の看板を熱心に読んでいる。
「ガス管を耐震仕様のに変えているんですって。行き届いていますねえ」
「へえ、あ、向こうでもやってるぞ」
ギルド方面の道の向こうでもクレーン車が出て電柱の作業をしている。
「あれは、たぶん光ケーブルの工事ですね」
「始まりの町って、冒険の準備をするところだろ。いわばベースキャンプみたいまもんで、そんなにインフラとかは揃っていないもんだと思ってたけどな」
「キャ!」
ドタドタドタドタ!
五六人の子どもたちが、手に剣や杖を持ってベロナの脇をかすめる。
「ゴラあ、気を付けろガキども(ꐦ°᷄д°᷅) !」
「まあまあ、子どもの遊びじゃないですか。そんなに怒らなくても……まあ、可愛い。あの子たち冒険者ごっこをして遊んでいるのね」
「ん、なんだ、先着組になんか言われて……戻ってきやがるぞ」
「謝りに来たのかしら、だったら可哀そう……」
「……でもなさそうだ」
子どもたちは二人の横をスゴスゴと通り過ぎていく。
「おい、おまえら」
「ちょ、アルテミス!」
「なんでしょぼくれてんだ?」
年かさの勇者風の子どもが振り返った。
「なんだ、あんたら?」
「あ、ごめんなさい。さっき、ぶつかりかけたんだよ、あたしたち」
魔法使い風の女の子が済まなさそうに、でも、勇者風の後ろに隠れて呟く。
「んだぁ、んなとこ突っ立てる方が悪いんだろが」
「んだとぉ」
「アルテミス! ううん、いいのよ、ちょっとかすっただけだし。でも、なんで元気なくなったの、あんなにやる気満々だったのに」
「冒険者保険と年金の掛け金払えって。あ、それと遅延金」
「ああ、なんだそれ?」
「ネエチャンたちも冒険者だろ?」
「そうだ」
「常識じゃねえか、冒険には危険が付き物だから保険があるし、引退後の生活のために年金かけるの」
「ああ、でも、二丁目の子たちが言うのは、ただの嫌がらせだし(^_^;)」
「そうだよ、もう三丁目だけで遊ぼうぜ!」
アーチャー風の男の子が胸を張る。
「おお」
「そうね、午後からは引退ってことでお部屋で遊ぼ。さっきはごめんなさい。おねえちゃんたちもがんばってね」
「はい、ありがとうございます(^▽^)」
「ニイチャンも男なんだから、ネエチャン護ってやれよ!」
ドタドタドタドタ!
「ニ、ニイチャン……だと?」
「アハハ(´∀`)、じゃ、行きましょうか」
「ああ、ギルドに行く前に、ちょっと町の様子を探ってみるか」
「ええ、わたしも、そう思ったところよ」
二人は道を変えてバザールの方角に向かった。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
アルテミス 月の女神
ベロナ 火星の女神 生徒会長
カグヤ アルテミスの姉
マルス ベロナの兄 軍神 農耕神
アマテラス 理事長
宮沢賢治 昴学院校長
ジョバンニ 教頭
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