少年運命共同体研究

はる

序文

 少年同士の愛が好きだ。友情よりも静かでどこまでも続いていくような、二魂一体の関係が大好き。例えばジルベールとセルジュのような。カンパネルラとジョバンニのような。カヲルとシンジ、剛と光一、アナナスとイーイーのような。時にそれは性愛であることもあるけど、それ以前に何か透明の関係性が確かに横たわっている。一心に相手のことを思う、そんな魂だけの繋がり。どんな思惑にも左右されない、たった二人の世界。私はかつて、このような関係を『少年運命共同体』と名付けた。もはやこういった関係性は元型なのだと思う。アーキタイプ。人類が共通意識の中に匿っているもの。

 この元型の主だった特徴は、最後が悲劇で終わること。つまり、片方が死んだり消えたりして、片方の世界から姿を消す。儚い生。そして残されたほうは、永遠に片割れのことを忘れない。心に刻印された相手は、永久にもう片方に影響を与え続けるのだ。

 『少年は少年とねむるうす青き水仙の葉のごとくならびて』という葛原妙子の短歌がある。この短歌は、まさにこのアーキタイプを象徴していると言っていいだろう。少年は少年の夢を見る。手は固く握りあわされているのだろう。どこへも行くなと、潜在的な死を忌避しているかもしれない。それでも悲劇は訪れる。その時、少年たちは何を思うのだろうか。涼やかな眼差しで、彼らが遠くまで行けたらいい。二人で、どこまでも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る