Case03:胡蝶舞うは夢現の狭間
木々の
苔むした岩の間。
生き物や物の“隙間”から見えるもの。
──そうした場所は“あちら側”と繋がる場所であると言う。
***
一見、霧に覆われた平原に見える場所だ。
……でも、ここは何処だろう。
とにかく、辺りを見てみる事にした。
歩いて
歩いて
歩いて
はたと気が付いた。
──同じ場所をぐるぐる回っている……?
***
「またこの時期がやって来たか……」
春。
生き物たちが凍てつく季節を越えて目覚め、その生を謳歌し始める季節。
そして、とある生き物が風に乗ってやって来る季節でもある。
出逢えば夢幻に囚われ、狭間の世界を彷徨う事になるという厄介な虫。
──
また今年も、少年少女を中心とした行方不明案件が増えていた。
***
ぐるぐる
ぐるぐる
歩き続けて。
でも、景色は変わらない。
結構な時間、ここに居るはずなのに、辺りは薄明るい黄昏時のまま。
でもまだ、お腹も空いていないし大丈夫。
疲れてもいないからまだ歩ける。
まだ。
まだまだ。
まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ
──ピシャッ!バーーーーン!!!
突然、閃光と共に轟音が轟いた。
次の瞬間ゴウッと強い風が吹いて、霧がみるみるうちに晴れて行った。
そして。
巨大な影が2つ、羽ばたきと共に通り過ぎて行く。
タッ!とその影──巨鳥から飛び降りたのは、幼い子供たち。
「居たね」
「生きてたね」
「「良かったね」」
交互に話すこの子たちは双子……だろうか。
黒の混じる黄色の髪と、白の混じる赤色の髪。
持ちうる色は違えど、似た雰囲気を持っていた。
「僕は兄のクサントス」
「ボクは妹のエリュテイア」
「「あなたは?」」
慌てて自分も自己紹介をしようとして──気が付いた。
あれ……じぶんってなんだっけ
「あれれ、忘れちゃってるみたいだね」
「あらら、忘れちゃったみたいだね」
「「大丈夫、ここから出れば思い出せるよ」」
不思議な雰囲気の兄妹が空を見上げた、次の瞬間。
──
***
雷と嵐を従える黄の大鷲──
死と再生を司る炎を従える紅の鳥──
神話に詠われる巨鳥を従え……否、共にあるのは、まだ幼き兄妹。
“あちら側”に魅入られ、己が名を、記憶を無くした哀れなる子供たち。
しかし、運良く“あちら側”でも
“あちら側”は時の流れが異なるという。
こちらの1年があちらでは1週間であったり。
はたまた、こちらの1日があちらの10年であったり。
そんな場所に住むモノに名を。
存在を与えられた人間はどうなるのか。
『あの時、この子らに名付けたのは間違いであったのだろうか』
その翼の下で、黒の混じる黄色の髪の子供……に見える人の子、クサントスを抱く雷鳴鳥がいう。
『あの時はそれが最善でした。それは間違いのないことでしょう』
その足下で、白の混じる赤色の髪の子供……に見える人の子、エリュテイアを抱く不死鳥がいう。
永きを生きる巨鳥が守るは、人間の
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