第18話 再会の昼食会(4)
前世の、数々のザマァマンガみたいな運命的な出会いとかはまったく求めていなかったけれど、滉雅さんのおかげで最近諦めていた自分の在り方を認めてもらえている気がして――
「離れている場所でも思考を送れる。しかも声を出すこともない。音に反応する
「そのような
「ああ。この霊符があれば……」
一度言葉を止める。
滉雅さんは目を閉じて、なにか祈るような、悔やむような表情で唇を一つに結ぶ。
俺にはよくわからないけれど、やっぱり命懸けで
もしもこの携帯電話参考の霊符が
「あの、もっと作ってお渡ししましょうか?」
「あれば使ってみたいが、今日は大丈夫だ」
そういって首を振られたが、俺は今『思考共有』の霊符をつけている。
『では使用感はいかがですか?』と滉雅さんに向かって思考で話しかけ話しかけてみると、目を見開かれた。
『普通に考えるだけで相手に伝わるのか?』
『そうです。今は私だけが受信対象である霊符を持っているので私だけが受信できるのですが、送受信数を増やすなら相手を指定する機能をつけなければいけませんね。まあでも、簡単にできますよ』
『霊符は複雑な指令を転写する場合、必要な霊力が増えていくはずだが? こんな複雑な内容の指令を複数枚製造できるものなのか?』
『え? そうなんですか? ああ、でも確かに難しい指令の言霊を和紙に転写する時は、確かに霊力消費されますね。でもそういう常日頃から霊力を使う生活をしているから、霊力量が増えたんだと思うんですよね』
『生まれつき霊力が多かったのではないのか?』
『生まれつき多かったようです。でも、幼少期に測った時よりも先日測った量が大幅に増えていました。幼少期に測った時は三級量でしたが、先日測った時の量は一級の上の一等級でした』
思った通り、口を開かないと頭の中でめちゃくちゃ喋るなこの人。
頭の中でならたくさん考えて、言葉にできなくて苦労していたんだろうな。
でも、俺の話はいいんだよ。
「舞、急に黙り込んでどうかしたのか?」
「あ、申し訳ありません。霊符の『思考共有』で話をしていました」
「思考を共有……本当にそんなことができるのか?」
「正確に言うと脳内の言霊を霊符を媒介にして共有しているんですよ。霊力で効果を発動するので、その人固有の霊力を登録・指定することで複数人で使い分けは可能ですね」
「は、はあ……」
親父には難しかったか?
まあ、簡単ではないができなくもないってことで。
「まあ、その……そうか」
「はい。あのでも、便利な分悪いことにも利用できそうなので、作るのはいいのですが滉雅様の部隊でだけ、お試しという感じでご利用いただければと……」
「それはもちろんだ」
携帯電話は前世でも犯罪の利用されていたもんな。
なんか、最近は霊符作りにもそういう『霊符の危険性』を考えるようになってしまった。
小百合さんに言われたことが地味に効いているんだよなー。
「滉雅様、まだお時間があるようでしたら娘とゆっくりお話ししてはいかがでしょうか。その霊符のことでなく、結婚後の話など。うちの娘は内地の名家に嫁がせるような教育をしておりませんので、細かな指導についてなど検討していただければと」
「………………」
口半開きになってポカーンとなる滉雅さん。
俺も思わず親父を見てしまう。
あ、簡単に考えていたけれど、
学校で花嫁修業の授業は受けているが、嫁を真面目にやるつもりがなかったから花嫁授業の成績は微妙に悪い寄りなんだよ、俺!
ぶっちゃけ霊術と霊符の勉強が楽しすぎて蔑ろにしてたんだよなぁ!!
しかし、学校で三年間一つの科目になるくらいには花嫁修業というのは覚えることが山ほどある。
俺も成績は悪いが真面目に授業は受けてきたから、まったく知らんわけではないが……滉雅さんは内地トップの
しかも、その本家!
「た、確か霊力量で娶られる花嫁が格式に釣り合わない場合、側室を娶って妻の担う家の業務を役割分担するとか」
「そういうこともある――が……」
言い淀む滉雅さん。
しかし、『思考共有』では『財力的に問題はないが、俺は複数の女性と交流を持てるほど器用ではない。それでなくとも母のせいで婚約者候補は皆去っていってしまった。舞殿の負担になるのであれば、家の業務は姉に一任すればいいかと思っていたが』と続く。
この人こんなこと考えていたのか。
いや、でも嫁入りするのに嫁業務をなにもしないのは、職務放棄みたいなもんだろ?
嫁入りって言えば永久就職ともいわれる。
その就職先で仕事しないのはダメだろう。
せめて覚える努力しないと!
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