SF筋肉チート無双 ~俺の筋肉はすごい。負け知らずな彼が宇宙戦争の中、生きています~
夕日ゆうや
第1話 宇宙だ。わっしょい!
宇宙。
それは無限の可能性。
無限の空間。
時間とともに世界が変わっていく。
広大無辺な宇宙に俺たちは生きている。
俺はただの高校生。
今日も潜入ミッションを行っている。
『こちらシルバーワン。ドラゴン応答せよ』
「こちらドラゴン。目標を撃破。これより離脱する」
『了解、よくやったドラゴン』
「それはこの任務が完全に終わってからにしてくれ」
『了解』
俺が脱出ポッドに乗り込むと同時、施設内の爆破が開始される。
内部からの熱量に負けた構造物が溶け出していく。
ボンッと音を立てて脱出ポッドは宇宙へ放り出される。
二時間ののち、ランデブーポイントにさしかかる予定だ。
だが、脱出ポッドが音を立てて警告音を鳴らす。
「ん。機体損傷。空気漏れか」
冷静に俺は分析する。
恐らくは構造物の一部が船体にぶつかったのだろう。
脱出ポッドの軌道がずれ、ランデブーポイントから大きく外れる。
マズいな。
「まずは空気漏れからだ」
俺はガム性の破損溶剤を出す。
空気が漏れているため、そちらの方に向かって自然と流れていく。
隙間に入り込み、内部で弾けるガム。
お陰で空気の漏れは防げた。
あとは軌道の修正か。
俺は脱出ポッドに装備された酸素ボンベの一部をわざと空気漏れさせる。
これで軌道は変わる。
が、当初の予定とは違う。
俺を回収するはずのシャトルの軌道コースへと持って行けばいい。
それだけの簡単な話だ。
酸素ボンベが吐き出されると、俺はそのボンベを切り離す。
軽くなった船体はゆっくりと軌道コースへと向かう。
『こちらシルバーワン。脱出ポッド、応答せよ』
「俺だ。ドラゴンだ」
この時を待っていたとばかりに低酸素になった船内から俺は呼びかける。
『ドラゴン!? どうした?』
「船体に損傷あり。すぐに回収してくれ」
『その前に認識コードを送ってくれ』
「了解」
俺は目の前にあるキーボードからデータを送信する。
『了解。お疲れ様。回収する』
少し気の緩んだ声で応じるシルバーワン。
シャトルが接近し、ワイヤーで脱出ポッドと接触をする。
「ドラゴンだ。機体がもたない。機を捨てる」
『どういうことだ!? ドラゴン』
「三番エアロックを開けてくれ」
『……了解した』
俺は船体のハッチから飛び出し、真空を漂う。
目などの弱い気管が多い顔を覆って船体を蹴る。
そして数分、シャトルの三番エアロックの入り口にたどりつく。
それを感知したシャトルが一番ハッチを閉じる。
真空だったエアロックに空気が入ってくる。
『なんという無茶を』
『真空に耐えられるのか……』
第二ハッチが開き、俺はシルバーワンと出会う。
「ようこそ。ドラゴン」
「ああ。シルバーワン」
「さっそくで悪いが、次の戦場が待っている。ドラゴン」
「別に構わない。力なくばモラルは守られない。絶対的な支配者が必要なのだ」
「お前……」
俺はそう告げると休憩室でドリンクを飲む。
細胞一つ一つに行き渡る水分。
やはり単独で宇宙を航行するには負荷がかかるか。
この辺りは今後の課題だな。
シャトルが軌道エレベーター『クサナギ』の宇宙港に向かって進路をとる。
ガイドビーコンが船体の端をとらえ、誘導システムが起動する。
その間に俺はさっと次の任務概要を見る。
三百項ある資料を三分ほどで読み終えると、必要な物資の確認をすませる。
手榴弾二個、マシンガン一丁、弾倉一つ。
指さし確認で装備を確認すると、俺はシャトルから降りる。
☆★☆
目標はこの辺りか。
俺はサブマシンガンを両手で抱え込み、敵の展開している地区に向けて歩き出す。
丁字路にさしかかると、俺は手榴弾を投げ込む。
爆音。
黒煙が舞う中、俺はサブマシンガンを放つ。
「敵襲!!」
銃弾の雨が返ってくる。
だが、ダイヤニュウム合金製の防弾ジョッキ、衣類には傷一つつかない。
俺はそのままサブマシンガンを撃ち放ちながら進む。
銃弾に手榴弾を交ぜる。
サブマシンガンを
「敵、死にません!!」
悲鳴に似た声を上げる敵兵。
実際に悲鳴なのかもしれないが、俺には関係のない話だ。
「S-
敵兵が鉄板でさえも破壊する威力を持つと言われているS-RPGを構える。
「ふるえる」
発射された弾頭は空中で炸裂。
内部に含まれていた金属片が飛び散る。
「ふはははは。これで奴も死んだ。生きて帰れるわけがな……、なんだ? あれは?」
「服を破った、だと……?」
俺は上半身裸になりつつ、敵兵に肉迫する。
敵兵のサブマシンガンの猛襲を受けながらも筋肉のみで弾き返す。
「我が流儀・新光覇王拳を食らうがいい!」
俺は構えると銃弾を弾き返しながら猛突進する。
「はぁあ!」
筋肉を巧みに操り、敵兵の腕をへしまげる。
痛みでのたうち回り、銃を構えることができない。
敵意を失ったものに用はない。
俺は真っ直ぐに中央指令室に向かう。
そう、文字通り真っ直ぐに。
壁を破壊し、天井を突き破る。
「バカな。ここのセキュリティは完璧なんだぞ……」
敵司令官がうめく。
確かにここのセキュリティは完璧だ。
だがこの強靭な肉体には関係ない。
「突破するまでだ!」
指令室に飛び込むと、俺は拳を振り下ろす。
床に打ち放たれた力の本流。
床は粉々に破壊され、そこにいたものたちを落下させていく。
一階まで破壊し尽くすと、敵司令官とその仲間は気絶しているようだ。
俺は外にいる遊軍に連絡をいれる。
「こちらドラゴン。任務完了」
『了解。ブルー部隊を送る』
「ドラゴン撤収する」
俺はゆったりとした動きで港へ向かう。
ルイボスティーの水筒をあおり、一息つく。
顎髭に手を当てると、静かにため息を吐く。
人は、人類は宇宙に進出してもまだ争い続けている。
悲しいことだが新しい価値観には、必ず否定する者が現れる。
そうして集まった反政府組織が各地で暴れている。
彼は話を聞かないのだから力が必要なのだ。
俺の戦いはこの世から反乱軍を無くすことにある。
戦艦のエアロックに身を縮め潜る。
身体についた傷痕をなぞり、更衣室にはいる。
「よ。ドラゴン」
「ああ。フォックス」
「この匂い、また紅茶かよ」
「別にいいだろ。俺の勝手だ」
「鼻につくんだよ」
こいつはいつも噛みついてくる。
戦士としては優秀だが、そこが玉に瑕だ。
「そうだ、IQZの声明みたか?」
フォックスは、眉間にシワを寄せる。
その表情からして良くない知らせなのはよくわかる。
「仕事をしていた」
「またそれかよ」
呆れるように悪態をつく。
「オレら政府軍の人質をとって脅してきたんだ」
「ラクーンに確認をとる」
俺はそれだけ言い残し、艦長室に向かう。
「ちょょょい! 待てい!」
フォックスが後ろでなにやら騒いでいるが、聞いている暇はない。
仲間の救出作戦を考えなくてはいけない。
IQZならジインドの北西か。
武器の調達と部隊の派遣。
潜入部隊は少なくても多すぎてもダメだ。
だが敵勢力によっては全面戦争になる。
どうすればいい。
歯噛みをし、艦長室にたどり着く。
「失礼します」
アンティーク調の机や椅子が視界に映る。
この29XX年においてもまだこうした調度品が好まれる。
人のうつろいは案外変わらないものなのかもしれない。
その椅子にちょこんと座るラクーンの姿を認める。
「どうした? ドラゴン」
十二歳くらいの少女は、こちらを見てにこやかに笑みを浮かべるのだった。
まだ若いのに。
そんな感想が頭をよぎる。
だが今必要なのはちっぽけな感傷でも、悲嘆でもない。
「人質救出作戦を決行する」
SF筋肉チート無双 ~俺の筋肉はすごい。負け知らずな彼が宇宙戦争の中、生きています~ 夕日ゆうや @PT03wing
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