20

 中央のテーブルに置かれた白い湯気が立つ紅茶に手を伸ばしながら、ヴィンセントはにんまりと笑みを浮かべた。

「何やら面白いことになっていたらしいな?」

「ああ、うん。らしいね? もう二度とやらないけど」

「そう言ってもう一度同じことをするのは目に見えるがな」

 あれから、時間が経ち、もう陽が暮れ始めている頃合い。

 昼間の慌ただしい時間が落ち着き、陽が落ちたらもう寝る時間だなぁと呑気に思っていたらヴィンセントがエドヴィンを引きつれて静の部屋に訪れた。

 静はその時、呑気に窓際に置かれた椅子に座り、のんびりとネーヴェの毛並みを堪能しながらわずかにうたた寝をしていた時だった。

 リーリアが対応し、エドヴィンと共に中に入って来たヴィンセントは静のその姿を見て何故かルイスを見て、改めて静を見て何故か妙に納得した顔をしていた。

 あれは一体何だったのか、静は未だに分かっていない。

 静もまた紅茶へと手伸ばし、落ち着かせるために一口飲む。途端香り立つハーブ独特の清涼感に、ほぅ、と小さく息をついた。 


 あの後、静は思い出すのも羞恥なりなんなりに塗れて憚れてしまうほどだった。

 音沙汰ない静とルイスを心配してか、様子を見に来たリーリアがやってきて、静の膝を枕にして眠るルイスと、身動きが取れずに途方に暮れていた静を目撃されたのが始まりだった。

 本当に熟睡をしていたのか、それとも寝たふりをしていたのかは今も分かってはいないが、とにかく起きないルイスにリーリアは驚き、そして腕の中ニイタネーヴェは何を思ったのかルイスの隣で寝始めるという暴挙をし始めたが、静はそれよりも空腹でほんのちょっとだけフラフラとし始めて来ていた自覚があったため、急いで何か食べられるものを持ってきてもらったのだ。

 スープは流石に難しかったので手軽につまめるサンドイッチを、何故かオリヴィア達が持ってきた。正しくはオリヴィア、他漆黒二名。そして扉の外から部屋にのぞき込む奈緒達複数名。その中でも呑気に寝息を立てているルイス。

 静はちょっと泣きたくなったのと同時、苛立ちまぎれにルイスに拳を落としたくなったがちゃんと踏みとどまれたことに何度でも拍手を送りたい。

 深紅三名はその時廊下の外にいたらしいが、覗き込まれないだけ良しをしている。

 そんなこんなをしていれば、当然のことながら騒がしくなり、眠っていたルイスはようやく目を覚ました。が、ルイスは全く焦る様子すら見せずに何事もなく起き上がり、服装等の乱れを直しながら状況の把握をした様子を見せ、普通におはようございますと言ったもんだ。

 こいつ、最終的にこうなることが分かっていてやったな、と静はおはようと、声をわずかに荒げながら返したのだった。


 それが昼間に起きたことだが、致し方がないことだと静は受け止めている。

 何せ三日間も眠ったままだったのだ。しかも無自覚ではあったが命の危険があったというのだから、甘んじて押しつぶされるなりなんなり、全てを受け止めるに徹する他なかった。

 とはいえ、その間に重要そうな、静が眠っていた間の話は特に聞かされてはいないわけであるが。

「それで、どこまで聞いた?」

「……起き抜けだったから簡単にだよ。三日間寝ていたっていうのと、ディック達が敵の捜索なりをしているらしいね」

 気を取り直し、静は紅茶を片手に答える。

 ヴィンセントは何かを考えるようにわずかに琥珀の瞳を横に動かし、また静へと向けた。

「ああ、あれらはかなり有能だ。おかげでだいたいの奴らは捕えた。残りは主犯だな。とはいってもまだ末端に過ぎないが、それでもネーヴェと静が目覚めたと言うことは大きい」

「……何があったの。この三日間」

「なかなかに慌ただしかったさ」

 落ち着いた状態でようやく話しを聞けそうだと分かり、静は無意識に寄りかかっていたソファーの背もたれから背中を離した。 

「おそらく、ユフィアータが眠りにつきそうになった時と同時だったのだろうと思われるが、あくまでおそらく、だ。その時、他の愛娘と聖女達にも異変が起きたんだ」

「異変?」

「ああ。突如強い眩暈であったり、動悸、軽い過呼吸等々の症状に襲われた。それによりユフィアータが眠りにつきかけていることが発覚した」

 先ほどまでいた三人からはそれについて何一つ語られることは無かった。

 静を心配させまいとしたのかもしれない。逆の立場であったなら、静もまた心配させたくなくて言わない選択を堂々と取るからだ。

「……それで?」

「早急にルイスを中心に隊を編成。青藍のあのユアンという者が即座に協力を名乗り上げ、諜報等々に使えそうな魔具を無償で提供をしてくれてな。そのおかげであの噂を流す奴らの足取りを想定よりも時間がかからずに見つけることが出来た。とは言ってもまだ末端の末端だろうがな。後はディック達が猟犬の如く、一人ずつ捕えている最中だ」

「敵は」

「貴族が複数名。それとディック達のような者達の他、漆黒が若干名……らしいが。ルイス」

「はい」

 傍らに立つルイスは短く返事をした後、よどみなく報告をし始めた。

「現在、五名の漆黒が逃亡。他漆黒が身辺調査をした結果、取引を行った契約書、金銭等々が見つかっております。しかし相手は同じ漆黒と言うこともあり、まだ足取りを掴めていない状態です」

「だろうな。にしても、金で買われたか」

「そのようかと。これを受けて漆黒はもちろんですが、深紅の方でも身辺調査が行われています」

「ああ、それは聞いている。おかげで兄上が公の動けるようになったのは結果的に良い。だが見事な尻尾切りと言わんばかりに、その上にいるであろう奴らの跡が未だに追えないでいるのが現状だ」

 まだ敵の規模、正体も掴めてはいない。だが、それでもほんの僅かであるが掴めたと言っても良いだろう。

 何せ相手は十年単位もの間動き続けていると予想されるが、こちらはまだ比べてしまえば一年、半年、下手をすれば一月も経っていないのではないかと思うくらいに短い時間の間でようやく掴めたのだ。

 肉を切らせて骨を断つではないし、静自身、喜んで身を差し出しているわけではないが結果的にはそれに近いものにはなった。とはいえ今後はもう使える手ではない為、次はもっと確実に安全に敵の何かしらを掴む必要があった。

 静は煮詰まりそうな思考を紅茶で流し込み、さて次、と思考を切り替えた。

「分かった。それじゃあ、わたし……というか、ユフィアータについて、だけど。どうして眠りに付きかけたのかって言うのと、どうやって起きたのかっていうのは分かる?」

 目の前の琥珀がわずかに揺らいだのを静は見逃さなかった。

「……確定の話ではない」

「噂程度でこうなっているんだから、今更だと思うけど」

 ヴィンセントは目元を強く抑え、深く吐き出した。

「……あの噂があるだろう」

「ああ、ユフィアータが罰を与えた云々」

「一部の馬鹿共がそれの乗っかり、ユフィアータに向けて死を与えろと願い始めた」

「与えろって、誰に」

「気に入らん相手にだろう?」

 だから伝えにくかったのか、と静は湧き上がりそうになる苛立ちに耐えるように背もたれに寄りかかり、長く息を吐きだした。

 本当に気に入らない。そいつが目の前で願ってきたならば遠慮なく拳を顔面にでも入れてやったというものを。

「……それで、こうなった、と」

「だが、まさか。これでそこまでになるとは」

 もっと他に何かあるのではと勘ぐってしまうのも当然だ。

 噂は噂。しかもその願いはある意味で言えばよくあるものだ。だからこそほんの僅か、ささやか過ぎる願いにまさか眠りにつかされる羽目になるとは想像もしていなかった。

『……それほど、私が許容できていたものがこぼれ始めたということだろうな』

「……ああ、うん。そうかもねぇ」

 定かではない。しかし、グラスに満杯に入れらた水にまだ入るだろうと僅かな雫を落としたらついぞ零れたようなものだ。

 きゅぅん、と小さく鼻を鳴らし、ぺたりと静の膝の上に伏せるネーヴェの背を撫でる。ゆるり、と尾が一度揺れるが、こちらもまたぺたりとすぐに落ちてしまった。

「……それは分かった。で、どうやって起きたのか、だけど……」

「伊織達ももちろんだが、愛娘達も動いてくれた」

「愛娘達も?」

 動いたと一体どういうことか。静が小さく首を傾げた。

「伊織から話だから俺も正しく理解はしていないんだが、急激に消滅しかけたユフィアータの力を無理やりお前の内側に留めさせた、らしい」

「え、どうやって」

「傍目から見れば、お前の手を伊織達三人で握りしめて祈っていたと言うしかない。ただ、伊織達ばかりに負担をかけさせては俺達がいる意味がないからな。祈り、そして願いによって引き起こされたと言うことは、こちらも正しく祈り、願えば良いだけのこと。さすがに信徒達には言えんが、神官達に少しばかり祈りの時間を増やさせたのも功を奏したのかは知らんが、その結果目覚めた、のだと思う」

 確信ではない。しかし皆、ユフィアータの為に祈り、願ってくれたのは確かなのだと知った今、静は無意識に胸元にそっと手を当てた。

 そしてふと、今までにない温かさが胸の内にあるのに気づいた。

 ゆらり、とほのかに揺れている灯火のような、そんな不確かなものだった。けれどもこれがそうなのだと、静は確信した。

「……うん。そうみたいだね」

「分かるのか」

「なんとなく、だけど。感覚的に、何かがわたしの中にあるのが分かる。力は……使えないようだけど。だよね、ネーヴェ」

『ああ、さすがにそこまでの力を姉上達は与えてはおらん。最低限、保つためだけのものだ』

 ゆらり、と尾を一度だけ揺らし、ネーヴェは伏せたまま動かない。

 申し訳なさがその全身から伝わり、静はネーヴェの額を指先で軽く突くように撫でた。

「聞きたいんだが。何故、愛娘達の力を分散させているんだ。その役目のことも重々承知はしているが、一人に集めればまた違う結果になるんじゃないのか?」

『ああ、集めることは可能だ。しかし、不可能だ。人間達が耐えきれん』

「なぜそうもはっきりと?」

『一度、それを望む人間がいたのだ』

 何事も思いついたものは、誰だって思いつくものがほとんどだ。だから驚くことはなかったが、つまりはそれを一度行った、と言うことだ。

『我らは、愚かにもその人間一人に力を与えた。結果、人間は破滅した。故に我らは力を一人の人間に全て与えないことを誓った』

「……何故、その人間は求めたか聞いても?」

『守る為だ』

「何から?」

 耐えきれぬほどの力を求めてしまうほどに、何かを守ろうとした。

 ヴィンセントの続く問いに、ネーヴェは少しの沈黙の後、耳をわずかに伏せた。

『……すまんな、何故かそこは覚えてはおらんのだ。ああ、しかし。あやつは勇猛果敢であったことは覚えているとも。そして……そう。それが必要だったことも』

 長い長い時を過ごしている愛娘達は、一体どれほどのことを記憶しているのか。

 その全てを知っている、覚えているとは到底、静は思っていない。とはいえ人間である静にとって、の話だ。人間ではない彼女達の場合がどうなのかは定かではない。しかし、その人間がいたことは覚えているのに、何から守ろうとしていたかがぽっかりと忘れている、というのは少しばかり疑問を抱いてしまうのは仕方がないのだろうか。

 静は今のネーヴェに問うことはせず、ヴィンセントに視線を向ければ、何か決めたように一人小さく頷いた。

「神話に残っていないか、改めてそのあたりは確認するとしよう」

『ああ、すまんな』

「とは言っても、あの書庫から本が紛失した件も残っているわけだが……」

 ああ、そうだ。それもあったと、静は忘れかけていたそれを思い出した。

 忘れてはいけないのに、それ以上のことが次々と起きているのだ。いい加減にそのことについても何かしら動かなければならなかった。

「ヴィンセント様。それについてですが、引き続きディック達に探らせるつもりでおります」

「何か掴んだか」

 猟犬の如く動いているらしい四人に、更にそこまでさせるつもりらしい。

 意外にもルイスは人使いが荒いのか、と静は一瞬思ってしまった。だが何とも元気の良い姿しか想像できない為、問題ないだろうと勝手に結論付けた静は大人しくルイスの報告を聞くことにした。

「ヘクターからですが、神殿をよく出入りしている職人がおかしいと」

「ああ、犬みたいなやつか。あれの直感はどうなっているんだ?」

「生まれ持ったものらしいです」

「……まぁ、なんにせよ、素晴らしい才能であることに変わらないか。で、おかしいというのは?」

「突然、姿が見えなくなったと」

 魔術によるものなのだろうか。しかしルイスの様子を見る限り、それだけではないようにも見て取れた。

 と、突然ルイスが静へと視線を向けた。

「静様、いかがいたしますか」

 まさかこちらに振られるとは思わずにいた静は驚きで、肩を小さく跳ねさせた。そしてすぐに誤魔化すように背もたれから背中を離し、小さく首をひねった。

「……無茶はしないように」

「静様におっしゃられても」

「確かにお前に言われてもな」

『静、しばらくは私と大人しくしていような。ああ、もちろん、リーリアも一緒だぞ』

「はい、しっかりとお世話させていただきますね」

 一言言えば、三人と一匹から言い返された。さすがにエドヴィンからは何も言われなかったが、その目はしっかりと静を心配するものを向けて来ていた。

 静はぐっと顔をしかめた。

「ああ、もう分かった! 無茶しないし、大人しくしてる! だからちゃんと無茶せずに、その愚か者を確実に捕えろ!」

「はい、静様」

 半ば自棄に静が言えば、ルイスは恭しく頭をわずかにさげた。そのわざとらしが余計に鼻に付き、落ち着くために残りの紅茶を飲み干すもどうも苛立ちは消えなかった。

 静はぐっと背もたれに寄りかかりながら両手で顔を覆い、小さく呻いた。

「今日起きたばっかりなのにぃ」

「目覚めたばかりだからこそ、だろ。理解しろ」

「……努力はするよ」

「善処するとは言わないんだな」

 変なところで敏いヴィンセントに静は内心舌打ちをこぼしつつ、僅かに視線をそらした。

「気分」

「なるほど?」

 ヴィンセントは何か面白いものを見つけたと言わんばかりに笑みを深め、喉奥でくつくつと小さく笑った。

「で、その面白いことが起きていたらしいが。どうしてそうなったんだ?」

「なんでまたその話を……」

「俺が面白がるためだが?」

「言わないけど?」

「おい、ルイス。静に膝枕をしてもらったらしいじゃないか。なんでそうなったんだ?」

「寝かしつけられました」

「ちがっ、いや、違くはないけど、違うっ!」

 そう、あれは半ば致し方がなかったのだ。寝かしつけたようなものにある意味近いようでも、ルイスが、いや、彼は無言だったから、静が勝手に察して行動してしまったわけで。

 これ以上は墓穴になりそうで、静はぐっと口を閉じ、恨めしと言わんばかりにルイスを睨みつけた。だがルイスはどこ吹く風か、全く持って涼しい顔を見せていた。

「ルイス。もしや、静が刷り込みと言ったことを根に持っているな?」

「何の事でしょうか」

「……これはだいぶ根に持っているぞ、静」

「ごめんってぇ!」

 なんとも情けない声だと自覚しながらも静がうわんと声を上げた時だった。

 ルイスは口元に拳を当て、そっと顔をそむけたのだ。おおよそ初めて見る行動ではあるが、静はすぐにそれが何か悟ってしまった。

「……え、ルイス。何、もしかして笑ってる?」

「失礼いたしました。あまりにも情けない姿をなさるので」

「クソガキっ! その横っ面ぶん殴ってやるっ!」

「全力で防ぎますので、逆に怪我をなさるかと」

 黙って大人しく殴られてはくれないと知り、静は盛大に舌打ちをこぼした。しかもだ、本人は真面目に事実を返してくるものだから余計に苛立ちが湧いてくる。

『ふむ、ルイス』

「はい」

『良いぞ。遠慮はいらん』

「……だそうですが、静様」

「ネーヴェ?!」

 注意をしてくれるかと思えば、ネーヴェはなんとルイスにもっとやれと言ってきたのだ。

 ルイスはわずかに驚きの表情を見せたが、どことなく声色が面白がっているようなものに聞こる。

 言いたいことがたくさん湧いてでてくるが、何よりも先にするのはネーヴェをこれでもかと、もふる刑に処すことだ。とたんきゅうきゅうと鳴きだすが、そんなものは無視だ。

「……お前ら。何故そうなんているんだ?」

 それを目の前に見ているヴィンセントは初めて目の当たりにする二人のやり取りを呆気にとられていた。

 思わずと言うように呟いた言葉は独り言に近く、もちろん返答はない。リーリアの様子を見る限り、これはリーリアも知らないようである。となると、今日、起き抜けに何かあったと言うことだ。もちろん膝枕の件もあるが、おそらくはそれだ。

 なんとも面白いことになっているなぁ、とヴィンセントはのんびりとその様子を眺めることにした。

「静様」

「何っ?」

「誰か来ます」

 一瞬緊張が走るが、ルイスはその様子を見せずに何故か窓を開けた。

 その瞬間、黒い影が室内に飛び込んできた。 

「急ぎか、ロビン」

「ああ。悪いな、静様が目覚めたばかりだってのに。いやぁ、探しましたよ、大神官様ぁ」

 その黒い影、ロビンは数度勢いを殺すように数歩歩きながら、あー、と声を漏らした。よほど急いでいたのだろう、遠目からでも肩が軽く上下し、呼吸も少々上がっているようにも見えた。

「悪かったな。それでお前が俺に、と言うことは兄上か」

「はい」

「……静がいるが」

「どうせすぐに広まる話なんで問題はありません。たぶん」

 ルイスがわずかに顔を歪めたが、ロビンはそれを一切視界に入れずに姿勢を正した。

「十日後、陛下が戻られます」

「十日後? 今年はずいぶんと早いな。それで?」

「聖女様方にお会いしたいとのことで。陛下主催の夜会を執り行う、と」

「ああ、だから問題ないと。しかし夜会か……しかも陛下主催とは面倒だな」

 何とも聞きたくない単語がいくつか聞こえた静は、ヴィンセントの次の言葉を待つ。

 と、琥珀が静に向けられた。

「一先ず、静は欠席」

「わぁい」

「その体調でなければ出席させたんだがな」

 喜ぶ静をよそに、リーリアが少し落胆したように肩をわずかに落としたのが見えた気がしたが気のせいだろう。きっと。

 この時だけは、この状態で良かったと不謹慎ながら静はつい思ってしまった。と同時、伊織達、三人の顔が浮かび、そうきっと、ちょっとばかり文句なり言われるか何か言われるだろうなぁ、という予感はしていた。

 そんな浮かんだ予感は紅茶を飲んで落ち着こうと思ったが、すっかり空だったことを思い出し、静はおかわりをもらおうと思いルイスに視線を向け、すぐに諦めることにした。

 というのも、伝達を終えたロビンがルイスにダルがらみをちょうど始めたところだった。

 静はしばらく考えた後、仕返しと言わんばかりにそのまま放置することに決めた。

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