第4話 黒髪お嬢様
駅へと向かう西向きの国道。そこには延々と続く車の長い列。
その中の一台――黒塗りの車の運転手は、少し前から、そのグレーヘアの頭を頻りに動かしていた。朝は良く渋滞する場所ではあったが、これ程、混んでいるのはこの道を使う様になった四月以降初めてである。そのため先程から前方を確認しようとしていたのだが、その動きが不意に止まる。
「お嬢様、赤色灯が見えますので事故の様でございます――」
運転手は落ち着いた渋い声で後ろへと報告する。
「そうですか」
穏やかな声で返したのは後部座席に座る黒髪の少女。
「少し遅くなりましたので、宜しければ直接、高校まで御送りさせて頂きますが?」
「いえ、まだ時間もありますので、いつもの様に歩いて学校へ参ります」
そう言うと黒髪の少女は鞄を持ち、車を下りようとしたのだが――
「えー咲ちゃん、今日はパパに学校まで送って貰おう」
隣に座っていたショートヘアの少女が携帯電話を握りしめ、不満げな顔を黒髪の少女に向けた。
「私はここで下りますから、舞ちゃんはおじ様に送って貰って構いませんよ」
少女はそう言うと腰まである美しい黒髪を揺らしながら車を降り、運転手に礼を言ってドアを閉めた。
「じゃーパパ、そういう事で――」
と、言ったものの……微妙な空気が車内に流れる。
「もーわ・か・り・ま・し・た。降りればいいんでしょう 降りれば!」
「もぉっ!」
車を降りた少女は、八つ当たりとばかりに思いっきりドアを閉めた。
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