第18話 付与魔法の授業で、またやらかした?

 自分の席についてリサが隣に立ち話をしていると、先生が近寄ってきた。あ、授業中に話をしていて怒られちゃう……と警戒をしていると。


「さすがですね……もう、お二人は終わってしまったのですか?」


 それ……嫌味?さすがですねって、褒めておきながら、終わってしまったのですか?って……なに?


「ええ。終わりましたわ……。それに、その言い方はバカにしていますの?褒めておいて、終わったかどうかの確認ですか?失礼ですわね。ふん!」


 さすがリサ……教師にも容赦なし?別に良いけど……先生にそんな態度をとっちゃって大丈夫なのかなぁ?


「失礼しました。終わったように見えたので、褒めてしまってから……回りを見たら終わっている者が、お二人だけだったので確認をしてしまいました。あはは……」


 慌てた様子で教卓へ戻ろうとしていた教師の動きが止り、ゆっくりと振り返りナイフを見つめて驚きの表情をしていた。


「あの……ミサ様……このナイフは?」

「え?私のナイフですけれど?なにか?」

「異様な気配を感じるのですが……?」


 教師が気になるようだったので手に取り、鞘からナイフを抜くと青白い光を放つ怪しげなナイフに、リサと教師が目を丸くして驚いていた。


 そんなに驚くものなの?付与が終われば光るものじゃないの?あー違うか。魔力を流している間だけ普通は光るんだっけ?


「ほらー付与は終わってるでしょ?」

「なんですの?その……怪しくキレイに輝いているナイフは……?そう言えば……以前に王城で国王様が、お父様に自慢気に同じ様に光る剣を見せていらっしゃいましたわね……」

「そのような高級な品を学校に、持ってきてはダメですよ……父上に教師の私も叱られます」


 何を言ってるんだろ?光ったらダメなの?こんなナイフ無くなっても壊れても、いくらでも作れるし問題ないけど?お父様も別に怒らないでしょ?ナイフの存在を知らないのだし。


「大丈夫ですよー!安物ですし。付与したら光りだしたのですよ?付与をすれば光るのでは?」


 置いてるとだけだと光ってなかったし、光って無くても異質な感じのナイフだったけれと……


「……普通は光りませんわ。でしたら……私のナイフにも同じ様にして頂けませんか?」

「リサ、私を疑ってるんだ?」


 リサが驚いた表情をして、慌てて顔を近付けてきたので焦った。な、何する気?と思ったら小声で話しだした。


「ちがいますっ!あの驚いた先生は家から持ち出したナイフだって思ってますわ……ようは、ズルをしていると……」

「……そう思わせたのって……だれよぉ……」


 リサをジト目で見つめると、気不味そうに目を逸らした。


「すみません。私が余計なことを言ってしまいました。ですので……遠慮なく、このナイフをお使い下さい」


 リサがナイフを手渡してきた。ようはリサのナイフを同じ様に付与して光らせれば良いんでしょ?


「先生、このナイフの確認をお願いしますわ……あ、付与してしまっていました!」

「もぉ……付与を取り消せば良いんじゃないの?」


 リサが先生に手渡そうとしていたナイフに手を翳して、付与されている魔法を全て消し去った。


「先生、確認してっ」

「あ、あぁ……そんなに簡単に付与魔法を無効に出来るもんなんだな……付与する事も難しいが……消すことの方が難しいはずなんんだが……」


 先生がナイフを丹念に調べて紙を切ったりして確認が済むと手渡された。


「まぁ……普通のナイフだが高級品で良い品だな。切れ味は良い方だな」


 良いナイフを持ってきて……どうするのよ!?机の上にナイフを置き、手を翳した。さっきと同じ付与魔法を掛けると青白い光を纏うナイフが完成した。


「…………は?こんな短時間で、しかも素材無しで付与魔法を!?いやいや……あり得んだろっ!」


 先生が手に取り紙を切ると音もなくスーッと切れて、ナイフを机に置き教卓へ向かい、私が切っていた木の魔法のスティックを持って戻ってきた。


 目を輝かせた先生が木のスティックを軽く切り刻んで感動した表情をしていた。


「どうですかー?成功ですかね?」

「……どこで、こんな高度な付与魔法を?」

「それは……ひみつです!死にたいのですか?」


 こういう人は……しつこいので軽く脅しておかないと付きまとって聞いてくるんだよね。回りが見えなくなるタイプだね。しつこく効かれても答えられないしさぁ……家の秘伝とでも思わせて置けば下手に調べようとは思わないでしょ!


「……そっか……それは残念だ。教えられない門外不出の魔法もあるからな!」


 残念そうに教卓へ戻っていった。リサの方を見るとホッとした表情をしていて嬉しそうにナイフを手に取った。


「あのさぁ……それが欲しかっただけとか?」

「ちがいます……わっ」

「その慌て方……あやしー」

「……ミサ様の付与魔法ですもの……1つは側に置いておきたいと思ったのですわっ!」


 頬を赤くさせてナイフを見つめていたので、もっとからかおうと思ったけど……止めておいた。それだったら私だって皆の、何かを側に置いておきたいと思ってるってば……


「分かったよ……じゃあ、リサの何かと交換ね!」

「交換ですか……例えば何かしら?」

「髪留めとか……下着でも良いよ?うふふ……♪」

「な、なにを言ってるのミサ様っ!」


 顔を真赤にして慌てているのが可愛い……


 さて戻ろっと。慌てているリサを放置して自分の席に座って困っていたルリちゃんに声を掛けた。


 

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