十二組目 漁師と人魚
※今回は特殊性癖っぽい描写が含まれます
いつもと違いこうしたから実質セッ○ス理論になっちゃってますが異種族恋愛書くなら種族的にこうなるよなってネタも書きたいと思ったので書きました
『セッ○スしないと出られない部屋』
と掲げられた文字を見て立ち尽くす男がいた。男は色黒で逞しい体格の漁師であり傍らにいるのは男が作った巨大な金魚鉢に入り魔力で鉢ごと浮いている色白で美しい人魚だった。
人魚という種族は珍しくその肉を食べれば不老不死になれると云われている。その事から密猟者に襲われていたところを偶然通りかかった漁師が助けたのが二人が知り合うきっかけであった。
人魚は心無い密猟者によって体の至る所を怪我をしておりそのまま放っておくのも忍びなかったので連れ帰り現在は海の近くにある漁師の家で共に暮らしていたのだが……。
「……ヤれねーだろ」
「ちょっと! 最初の反応がそれなの!?」
いつものように二人仲良く家でのんびり過ごしていたら突然謎の部屋に拉致られ今に至る。漁師は陸にいるよりも海の上にいる方が多いため色々噂される部屋の事を何一つ知らなかったが文字の通りにしなければ出られない事は本能的に分かっていた。
しかし傍にいる人魚を見て困惑する。上半身は人間の女性と体の構造は変わらなく一枚の布をぐるりと巻き豊かな膨らみを隠しているが問題は下半身である。下半身は虹色に輝く見事な鱗のついた魚の尾だ。性交渉するために必要な部位が見当たらない。
「もしかして一生ここで暮らせってことかよ。漁出来ねーのはなー」
「……漁以外に不満はないの?」
「お前とは元々一緒に暮らしてたしな。むしろここのが広いし……おお、食料も風呂もあんのか。いたせりつくせりじゃねえか」
「ふ、ふーん。それ以外は不満ないんだー」
ここで暮らすこと自体にそこまで不満がないと聞き人魚は尾びれをパタパタと動かす。それは上機嫌な時にする仕草であった。
「ああでもお前は嫌だよな。怪我も治ってようやく海に帰れるって時にこんな事に巻き込まれて」
「べ、別に。君がいるなら退屈しないし。というか別に海に帰りたかったわけじゃないというか」
「あ? そうなのか?」
「……うん。本当は怪我もすぐ治ってたけど理由つけて引き伸ばしてただけ」
「そんなにあの狭い家での暮らしを気に入ったのか。ははっ! お前って本当に変わってるなぁ!」
人魚の好意を仄めかせるような言葉に漁師は気づく事なく豪快に笑う。そんな漁師に人魚は不機嫌そうに唇を尖らせた。
「はー!? ちがいますー!」
「じゃあなんだよ」
「えー。察してよそこはー。ほとんど答え言ってるようなもんだったでしょー」
「そんな事言ってもな……俺に女ココロなんざ分からねえよ」
漁師は幼い頃から漁をしており漁師の住む村は若い女がいなかった。つまり恋人どころか恋をした事もなかったのである。そんな漁師が人魚の複雑な乙女心など察する能力は皆無であった。それどころか自分の気持ちにすら気づいていない。
「それはそのう……」
「なんだよ」
「えっと……その………………ら〜ら〜ら〜♪」
人魚もまた恋愛経験が皆無でありヘタレだった。これまでも何度も一目惚れした漁師に告白しようとしたが恥ずかしくなって歌って誤魔化してしまう。その歌が上手いのがまた哀愁を漂わせている。
「お前歌うの好きだよなあ」
「うう…………」
「俺はお前の歌、好きだぞ」
「しゅきっ!? ほぎゃあ〜♪」
叫び声と歌声が絶妙にブレンドされたシュールな音が部屋に響く。特異的な場所に閉じ込められているというのに二人はいつも通りに過ごしていた。
「わ、私の事は……!?」
「ん?」
「わわわわ私の事自体は〜〜好きなのぉ〜〜♪」
「ど、どうした急に」
真っ赤になりながらミュージカル調に訊ねてくる人魚がシュールで漁師は真顔になる。しかし漁師のツレない態度に人魚はぐぬぬと眉を寄せながらも返事を待っていた。
「ん…………まあ好きなんじゃないか。嫌いな相手とは暮らせねえよ」
「……」
そんな言葉じゃ納得できないと言わんばかりの突き刺すような視線に漁師は頭を掻く。その姿は落ち着きがないものであり考えないようにしていたものに向き合う姿でもあった。
「……好き……なんだろうな。俺は漁一筋だったからそういう浮ついたのはよく分からんがこの先もずっとお前と暮らしていけたら幸せだと……思う」
「それって……!」
「まあ……こういう答えでいいか?」
「うんうん! 私も! 私も……何年も、何十年も一緒にいたい! 好きだから! ……言えたあ!!」
幾度となく失敗し続けた告白をやっと言えた事にはしゃいで喜びの歌を唄い出す人魚を漁師は照れくさく思いながらも抱きしめた。すると人魚もおずおずと抱きしめ返す。種族の差など感じさせない、愛の抱擁だった。
「しかし……ここはドピンクで目に悪いというか……やっぱりいつもの家のがいいな。出る方法があればいいんだが……」
「……セッ○スって子どもを作る行為の事だよね?」
「お、おう……まあ端的に言えばそうなるな」
「なら──私の卵に君の種をぶっかければいいんだと思う」
「──なんて?」
「卵にぶっかけるの。そうしたら私の卵が種に反応して子どもが出来るから実質セッ○スだよ。私達人魚は自分達で卵産むように自分の体を調整出来るし」
「あ、うん……なるほどな……お前卵生だったのか……いや、魚でもあるんだしそりゃそうだろうが……」
知られざる人魚の生態に漁師はたじろぐ。愛はあれど卵産むからぶっかけて♡と頼まれたら流石に興奮よりも困惑が勝る。加えて一つの懸念が生まれた。
「いや、でもそれだとガキが出来ちまうんじゃ……お前の事は好きだが俺今貧乏だしよ。ガキ育てるにも金がいるだろ?こんな部屋でなし崩しに子づくりするのはな……」
『この部屋にいる間は子どもは出来ませんぞ。そういうのはちゃんと迎える準備が出来てからじゃないトネ!あ、でもセッ○ス判定にするから遠慮なくぶっかけるのデス!』
「なんだよその微妙な良識。そこまで考えるならそもそもこんな部屋に閉じ込めてヤラせようとするなよ」
『それは断る。ではではごゆるりと〜』
と、マイペースな音声が途切れ部屋に静寂が訪れる。気まずいながらも漁師は丁寧に人魚をお手製の金魚鉢から出しタオルを何枚も敷いたベッドに乗せる。
「本当に水無くて大丈夫なのか……?」
「ちょっとの間なら平気。尾びれや鱗が乾燥しちゃうと困るけど」
「そうか……じゃあ早めに済ませた方がいいよな……始めるか……?」
「う、うん……!」
※ここから先は特殊なプレイ的なナニカです。R15程度の描写に濁しますがご了承ください。
「ん……はあっ……生まれるぅ……生まれるよぉ……私の卵ぉ……」
「おお……これが人魚の卵……初めて見たな」
「ああっ……! すごいっ……こんなに沢山出るなんて!」
「……別にオレ産卵フェチじゃなかったんだけどな。結構………すごいな………待ってろ……もうすぐこっちも準備出来るからな……」
「……はぁ、はぁ……すごい……人間のってこんなに大きくなるんだ……♡ 私の胸、使う……?」
「あ……これが女の……初めて見たな……柔らけえ……」
「あっ、んっ、君の、熱い……っ」
「……くっ…………そろそろいいか……?」
「うん……来て……私のに掛けてぇ……!」
といった感じで愛の共同作業を終えた二人は
「今度は本当に作ろうね♡」
「……もうちょい広い家に住めるようになったらな」
とラブラブな会話をしながら部屋を後にしたのだった。
◇◇◇
「……今回はちょっと攻め過ぎたかもしれませんな!」
『ですね。人魚の生態は興味深くはありましたが……産んだ卵にあれこれする絵面はシュールでした』
「いやー、あまりにも漁師クンが鈍感すぎるのと人魚クンがヘタレすぎてあのままだと離れ離れになりそうだと思ってとりあえず拉致りましたがこれはこれで。一つの愛の形と思えばいいですかな」
『毎回それ言えばいいと思っていませんか』
「ソンナコトナイヨー。互いに違うところをありのまま受け入れて愛し合う異種族恋愛はいいものですなー。愛の力で同じ種族の姿になるのもそれはそれで深いですが」
『割となんでもありなんですよね、貴方様は』
「愛があればいいんですぞ。あ、でも出来ればハッピーな終わりがいいですな」
『そこは同意します』
「次はどうしようかなー。なんとなく今度は異種族じゃなくて人間同士がイイナー」
『ふむ。………最終的にハッピーになればいいんですよね?』
「えっ、何? そうだけど……」
『なら親の借金のカタに売られ娼婦として働いているが初恋を捨てられない女性と遠くに行ってしまった娼婦を追いかけてその娼館の用心棒になった男性とかいますが』
「その二人の話詳しく教えなさい今すぐに!!!!!!!」
水晶玉のまたしても重たいチョイスにキリッと姿勢を正して話を聞くキブリーなのであった。
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