運良く『スライム』をテイムした牛飼い娘は何故か魔物の飼育は上手くいくので【魔物牧場《モンスタファーム》】しながらスローライフ生活を目指します!〜牛を育てるのは失敗したけど代わりに伝説を育んでいました~
第1話 牛が全滅したのでスライムをテイミングした。
運良く『スライム』をテイムした牛飼い娘は何故か魔物の飼育は上手くいくので【魔物牧場《モンスタファーム》】しながらスローライフ生活を目指します!〜牛を育てるのは失敗したけど代わりに伝説を育んでいました~
霞杏檎
牧場準備編
第1話 牛が全滅したのでスライムをテイミングした。
辺境の地にぽつんと佇む小さな牧場。その片隅に、今日も元気(?)に働く少女が一人と猫が一匹。
「……ねえ、ルーナ。なんでこの子たち、また痩せてるの?」
「にゃー(知らんがな)」
サリア、17歳。髪は栗色、目は薄緑。田舎暮らしが似合う素朴系美少女――だったのだが、牛を育てる才能は壊滅的だった。
エサの分量はちゃんと量ってる。牛小屋もこまめに掃除している。水も毎日取り替えて、愛情だってたっぷり注いでいるつもりだ。
「それなのにぃぃぃ、どうして痩せていくのぉぉぉ……!?!?」
今日も牛はげっそり。小屋にはハエがブンブン飛び回り、もう地獄絵図である。
「でも、生きていくためには牛を育てて、売って、お金にしないと……」
泣きながら干し草を投げ入れるサリア。健気である。しかし報われない。
元々はこの国の中央都市である”ストラス”で雑貨屋営んでいたのだが、経営が上手くいかずにお店が潰れてしまい……行く宛もなく彷徨っていたら雑貨屋の常連さんで畜産農家をしている方からのお誘いでこの土地をお借りして私も畜産農家を始めた。
簡単なスキルや魔法は扱えたが、畜産農家に関するスキルを何も持っていなかった私はオーナーさんから簡単なスキルを1週間を数個程教えてもらい、無事仕事を始められることができたのだった。
だけど……色々頑張ってるんだけど、どうもうまくいかない。
おかげで、家計は毎日火の車でこのままだと本格的に生きていけなくなる……
そんな不安感を毎日抱きながら、サリアはめげずに牛を育てていたのであった。
そんなある日。
「さて、今日も頑張って牛を育てるとしますか!!」
「にゃー!」
今日の自分に気合いを入れて、家の扉を開けたサリアとルーナ。
しかし、目の前の光景にサリアの目が飛び出た。
「う、嘘でしょ……!? うちの牛が……!」
眼前には自分の牧場内でぴょんぴょんと飛び跳ねながらうろつく大量のスライムの軍勢が広がっていた。
実はストラスの国では昨日、近くの森にて突如大量のスライムが発生したという情報が広がっていた。
低級魔物とはいえ、数が多ければ話は別。近隣の森の管理をしているストラスの自警団達も駆除するのに手間がかかる為、下手に手を出すのが出来ず、対応が遅れてしまっていたのだ。
その結果――
流れてやって来たスライムたちによって、サリアの愛しくも痩せ切った牛たちは、スライムに襲われて全滅してしまった。
スライムの軍勢達は骨だけとなった牛の上で楽しそうにぴょんぴょんと跳ね続けている。
「な、な、な、なんてことを……」
怒りと悲しみに震えるサリア。
(プチンッ……)
その時、サリアの中にある千切れかけていた堪忍袋の緒が切れる音がした。
手には、牛をなだめるために使っていた唯一のスキル《テイミング》が灯る。
《テイミング》は本来牛や豚、鳥や犬などの魔物ではない動物を使役するためのスキル。農家の便利スキルとしてオーナーさんに教えてもらったスキルの一つだ。
本来魔物に向けて使用しても効果がないはずのスキルを無意識にも使用しようとしている。
しかし、サリアにとってかかるかからないは問題ではない。
この、不条理で不運続きの人生に対する行き場のない怒りを何かにぶつけたかっただけなのだ。
そして都合よく、目の前には憎悪の対象に丁度良い青い悪魔たちが沢山いるのだから。
「……もう知らない! どうにでもなれえええええええええ!!」
やけくそで放ったテイミングのスキル。
すると、動き回っていたスライムたちの動きが止まる。
「ピギュ?」
「ぷるぷるっ?」
「ピイイイ!!」
光の波に包まれたスライムたちが、一斉にサリアの方を振り返った。
……目が、合った。
しかも、なぜかつぶらな瞳がキラキラとしている。
「……え? ちょ、何????」
すると突然、大量のスライムたちがサリアの方へと向けて走り出す。
「にゃにゃにゃーー!?(なんだなんだ!?)」
これにはルーナも驚き、驚くサリアの頭の上へと非難した。
怒涛の進軍によってサリアは目の前で何が起こっているのか理解するのに時間がかかった。
そしておよそ数百体程のスライムたちはサリアの家の目の前に集まり、サリアへ向けてキラキラとした期待の眼差しを向けている。
と、取りあえず、何か変なスキルをかけたってことで襲ってくる様子は見られない。
「せ、整列!!」
サリアは大きな声でスライムたちに命令するとぐちゃぐちゃだったスライムの陣形が一気に整えられ、気が付けば国に遣える騎士団の如く、綺麗な隊形を組んだ。
「右向け右!!」
「「「「「ピギュ!!」」」」」
サリアの声と共にスライムは一斉に右を向く。
「左向け左!!」
「「「「「ぷるっ!!」」」」」
今度はしっかり左を向いた。
「直れ!!」
「「「「「ピイッ!!」」」」」
そして、正面を向いた。
これってもしかして……懐いてる?
「……え、なんで? 捕まっちゃったの? うそでしょ?」
なんとサリアは数百匹いるスライムたちをまるごとテイミングしてしまったらしい。
(あれ? おかしいな……)
サリアはオーナーさんから言われていたことを思い出す。
(良いサリア? この《テイミング》のスキルは魔物には効果がないから間違っても魔物に使っちゃだめだからね?)
確かにオーナーさんはそう言っていた。
しかし、目の前には私のスキルで懐いた魔物がいる……
とりあえず、この捕まえてしまったスライム達をどうにかしなくては。
ここにはちょうどこいつらに喰われてしまった牛の牧場がある。
私はこの数百匹のスライムを先導し、収容スペースギリギリだったけどスライムを収容することができた。
「ふぃーー……疲れたぁ」
そう言ってもサリアの仕事はまだまだ沢山あるし、新たな問題も浮上する。
そもそもスライムってどう育てるの?
スライムの育て方などオーナーさんに教わってないし、まさか自分がスライムを育てるなど考えたこともない。
一度家へと戻り、サリアは本棚から動物図鑑を取り出し、スライムのことを調べる。
しかし、それは動物図鑑であり、魔物であるスライムの事についてなど書かれていなかった。
「やっぱり書いてるわけないよね……ねぇルーナ、私どうすれば良いと思う?」
「にゃーー(私にも分からん)」
多分だけど私にも分からんっとかいってるんだろうなぁ。
肩を落としながら外へと出るサリアは牧場内に広がるスライム達を眺めながらあることを思った。
「はぁ……テイム解除しちゃおうかしら」
その時、サリアは思っていたことをどうやら口に出してしまった。
その瞬間、全てのスライム達がサリアに目を向けた。
「「「「「「ぴぎゅぅうううううううううううう!!!!」」」」」」
突然スライム達が目から大量の涙(?)を流しながら、私の方へと柵に向かって体当たりをし始めた。
「ちょちょちょちょっと待って!! 柵がぶっ壊れるぅ!!!!」
数百のスライムが一斉に私に何かを訴えまいと一箇所の柵へ集中砲火してた。
「だぁああああ!!!! 嘘嘘!! 捨てる話は嘘だから今すぐ柵を壊すのは辞めなさぁああああああい!!!!」
サリアの言葉によってどうにかスライム達の暴動を止めることができた。
スライムもこれにはニンマリ。
まさか、こんなにも懐かれているとは思っていなかった。
でもだからといって育て方は一向にわからない。
何だか面倒臭くなったサリアは小屋から残っていた樽いっぱいの牛用の干し草を取り出した。
「ええい、もう知らん! 適当に干し草でも撒いとけぇ!!」
と、投げやりにスライムに餌を撒くサリアだった。
ーーしかし、数日後。
「え、待って? スライム、ちょっと大きくなってない? 肌もつやっつやだし……え、君、分裂したの? どうやって?」
気づけばスライムたちはモリモリと成長し、勝手に自己増殖し、農場の収容量を既に超えていた。
牛の時はあんなにも世話をしたのにうまく育たなかったが、適当に餌を撒いて放っておいたスライムの方がここまで綺麗に育ち上がっている。
サリアの頭の上はハテナマークでいっぱいだったが、一つ思ったことがあった。
「……これ、私、スライム育てる才能あるのでは?」
そう、その考えが運命のスイッチが入った瞬間だった。
このスライムを育てて、上手く何かに加工できれば牛よりもお金が稼げるのではないのか。
そう思ってしまったとき、サリアは目の前の極上のスライム達を見て決意する。
「決めた!! 私、スライム農家始める!!」
こうして、元・牛飼いの少女サリアは、辺境で伝説のスライム農家として第一歩を踏み出すのだった。
「これさ……他の魔物もいけるんじゃね? なんてね」
「にゃー(知らんがな)」
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