「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」という死亡フラグキャラに転生。結婚フラグを避けて最強を目指します。ただ、ヒロインたちが光の無い瞳で見つめてくるのは気のせいだよな……?
御子柴奈々
第一章 勇気の灯火
ひとりぼっちの聖女
第1話 死亡フラグ
夢。夢を見ていた。
俺はまるで幽体離脱しているかのような感覚で、その光景を空から見ていた。
「──俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」
彼はとても真剣な顔つきでそう言った。
その言葉を聞いた仲間は盛大に祝福し、彼もまた満更でもない様子だった。その空間は確かに、幸せに満ち溢れていた。
けれど、それは絶対の因果が成立してしまう呪いの言葉。
一度口にすれば待っているのは──死。
そして、彼は戦争を戦い抜く。最愛の人が待っているからこそ、彼は戦い続けることができた。
しかし──最期はこの物語の主人公を
「おい! なんで……!? なんで、俺をかばって……!?」
「ははは……なんで、なんでだろうな……」
彼は天を見上げる。
すでに戦争は終わりつつある。主人公陣営は無事に劇的な勝利を収めた──だが、決して無傷の勝利などではなかった。
多大な犠牲を払った上での辛勝。彼はその犠牲の一つになってしまった。
「ユーリ! どうして……どうして……っ!」
「テオ。お前はこれから先の時代に必要だ……でも俺は……あまりにも多くのものを犠牲にし過ぎた。これは天罰さ」
「そんな……! そんなことは……!」
テオと呼ばれる青年からは大量の涙が溢れ出す。ぽたり、ぽたりとテオの涙がユーリの体に零れ落ちていく。
「絶対に、絶対に助ける……! ユーリ! お前はここで死んでいいわけがない……!!」
彼は懸命に回復魔法を発動するが、血は止まらない。
テオは勇者であり、史上最強の冒険者。後に英雄と呼ばれる傑物だが──それでも救えないものはある。
ユーリはもうすでに視界が見えなくなっており、呼吸も荒い。回復魔法で回復できる範疇を超えており、命の灯火は消えつつあった。
そしてユーリは血塗れの手でそっと、テオの頬に触れる。
「テオ。──のことを……頼む」
「ユーリ! 待てよ……! 彼女が帰りを待っているんだろう!?」
テオはユーリの手を痛くなるほどに握る互いに約束した未来がある。けれど、その未来が訪れることは──もうない。
「じゃあな……短い間だったが、楽しかった……またお前と戦えて、嬉しか……った……」
だらりとユーリの手から力が抜けていく。瞳孔は散大し、脈拍も停止。紛れもないそれは──死の兆候だった。
「ユーリ? おい。嘘だよな? 待てよ。待ってくれよ。俺はお前にもっと……ユーリ! おい! ユーリ!! う、うわあああアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
テオはユーリに覆いかぶさるようにし、涙を流し続けた。
今は亡き、親友のもとで。
見渡す限り真っ赤な世界。大地は紅蓮の如く燃え続け、空は黒煙で満たされている。
今、ここにあるのは、一人の
†
「はっ……!?」
目が覚める。夢にしては、あまりにもリアル過ぎる光景だった。
俺の名前はユーリであり、親友の名前はテオ。ただあの夢の光景は、どちらも歳を取っていた。
「間違いない。この顔は……」
鏡で自分の顔をじっと見つめる。微かに乱れた前髪が額に影を落とし、その奥で冷たく光る瞳が鋭く輝いている。
「まさか俺は転生しているのか……?」
俺はそっと自分の頬に触れる。
同時に俺は思い出す。俺は前世、日本でサラリーマンをしていた。新卒だったが、一年目から社畜で無限に働き続けていた。
その中で俺は、とあるゲームだけが生きがいだった。
そのゲームの名前は『星霜のアストレア』と呼ばれるもので、傑作RPGとしてあまりにも有名だった。
俺は睡眠時間を削りながらそのゲームに没頭して死んでしまい、気がつけばこの世界に転生してしまった……ということなのか?
「だが、ここは本当にあの世界なのか……?」
まだ実感が湧かないが、このユーリの記憶を辿ってみるとそれは間違いなく、ゲームの内容そのままだった。
ユーリは誰かと婚約して最終戦でテオを庇って死ぬ。それだけは今、しっかりと思い出すことができている。
ただ問題なのは──
「俺は誰と婚約するんだ……?」
この作品には複数のヒロインがいるが、基本的には主人公のテオ周りの物語が展開される。
ユーリの情報はそれほど多くない。原作の中でも婚約したことは言及していたが、誰とまでは明言されていない。
元々ユーリは主人公のテオの親友だが、闇堕ちして敵サイドへと言ってしまう。しかし、物語の終盤でテオと和解をして一緒に最終戦へと臨むのだ。
やはり物語とは主人公の視点で進むので、ユーリサイドの情報は俺はそれほど多く持っていないのが現状だ。
「情報を整理するか。まず、俺は死亡フラグを唱えて死ぬ運命にある。誰と婚約するかは不明……って感じか」
俺、この戦いが終わったら結婚するんだ。それはあまりにも有名な死亡フラグ。まぁでも絶対そうなるかは不明だが、不確定要素は避けるに越したことはない。
ま、これは誰かと結ばれるのを避ければいい。とても簡単なことだろう。
加えて、仮にあの原作通りの最終戦が起きた際、生き残ることができるだけの力をつけておくべきだな。幸いなことに、俺はこのユーリの特性をしっかりと理解している。
「問題は……この先の展開だよな」
ボソリと俺は呟く。
原作では確か、ユーリは傲慢で冷徹な人間だった。
主人公のテオとヒロインのソフィアと同じパーティーを組んでいたが、ユーリはテオの才能に嫉妬して彼をパーティーから追放する。
テオはそこから這い上がり、勇者として覚醒。一方のユーリはソフィアに愛想を尽かされ、孤独になり闇落ちする。
一度は敵サイドになり、テオと戦うことになるが──テオに敗北することで、ユーリは改心する。そして再びテオの仲間になり、最終戦に臨む……というのが、大まかな流れだ。
「うん。そうだな。こうしてみるか」
俺はここで思い切って、自分の知っている展開を変えてみることにした。
別に今の俺はテオのことを厄介だと思っていないし、そのイベントはスルーしてしまってもいいだろう。
死亡フラグを避ける=特定の女性と結ばれないようにする。
戦争を生き残ることができるだけの力を身につける。または、戦争そのものを止めることができればベター。
俺の目標はこの二つに決めた。まぁ前者は余裕だろう。必要以上に女性と絡まなければ避けることができるしな。
問題は力を身につけることができるかだが、まぁこれは考えがある。
「よし。行くか」
そして俺は自宅を後にするが、もうここに戻ってくることはないだろう。
荷物をまとめて、俺は出ていく。そして向かう場所は──冒険者ギルドだ。
いつものように冒険者ギルドに辿り着くと、そこにはテオとソフィアがいた。
本来であれば、ここでユーリがテオをパーティから追放する流れになるが。
「ユーリ! おはよう!」
「あぁ」
どこまでも眩しい笑顔でテオは俺に声をかける。
金髪金眼の超絶イケメン。まるで太陽のような人物で、まさに主人公にふさわしい風格を纏っている。
「おはようございます。ユーリくん」
そしてソフィアも同じように挨拶をしてくる。彼女もメインヒロインの風格があり、まるで深窓の令嬢のような雰囲気をしている。
俺たちは幼馴染で冒険者としてずっと同じパーティで活動してきたが、俺は意を決してこう発言した。
「テオ、ソフィア。俺は──このパーティから出ていく」
「「──え?」」
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