第21話 妖魔軍団の作戦会議3
妖魔軍団インデックスの本拠地、その会議室では、重々しい空気の中、六つの影が座している。中央にはエーテル。その隣にはヴェイルが控え、円卓を囲むようにヴォルティ、スカイラ、ヴェルデ、ガルムが並んでいた
「……ドゥルガニスに続いて、ザフィロナまで倒されたましたか」
エーテルの言葉が静かに、しかし確実に場に重くのしかかる。誰もが驚きを隠せなかった。ドゥルガニスが倒された時点でも衝撃だったが、続けざまにザフィロナまで失うとは誰も予想していなかった
「信じられねぇ……あいつがやられるなんてよ」
ガルムが低く唸るように呟く。巨体の彼は拳を握りしめ、悔しさを滲ませていた
「ザフィロナは強かった……だが、相手がそれを上回ったということだね」
スカイラの冷静な声が場の緊張をさらに深める
「(ヴェルデ、お前が最も悔しいでしょうね)」
エーテルがヴェルデに視線を向ける。ヴェルデは顔を伏せたまま、静かに息を吐いた
「……ザフィロナ」
ヴェルデの声はどこか悲しげだった。普段は軽口を叩き、冗談を言う彼も、今だけはその面影を感じさせなかった
「あなたは……よく戦った。お調子者に見えたかもしれないが、最後の最後まで私の軍団のために力を尽くしてくれました」
彼の手は震えていた。しかし、それを見せまいと必死に堪えている
「……貴方の敵はいずれ必ず」
彼女の言葉が終わると、一瞬の静寂が場を包んだ
「……ヴェルデ、気持ちはわかる」
静けさを破ったのはヴェイルだった。彼は皆を見渡しながら、優しく、それでいて力強い声を放つ
「だが、ここで沈んでいても仕方がない。我々は何をすべきかわかるだろう?」
彼の言葉に、皆が顔を上げた
「二人を失ったのは痛手だ。しかし、だからこそ、ここで立ち止まるわけにはいかない。俺たちが弱気になってどうする?」
「そうね……戦いは終わっていない」
エーテルが静かに言い放つ
「次の戦力を決める。前回の決めた通り、次に数字の大きかった者の軍団から出します」
エーテルの言葉に、ヴェイルが頷く
「次に大きな数字を掴んでいたのは、スカイラ、お前の軍団だったな。大丈夫か」
スカイラは無言で頷いた。その目は鋭く、決意が込められていた
「承知した」
彼の簡潔な返答に、場の空気が引き締まる。
「スカイラ、お前の軍団には期待している。」
エーテルがそう言うと、スカイラは静かに目を閉じ、一瞬の沈黙の後、目を開いたスカイラは静かに立ち上がった
「果たせなかった任務、私の軍団が必ず遂行する」
彼女の言葉と共に、重く沈んでいた空気がわずかに和らいだ。ヴェルデは小さく笑みを浮かべた
「頼んだぞ、スカイラ」
スカイラは静かに頷く
「私の軍団から、ランク2のジンホァを出します」
彼がその名を告げると、ヴォルティが口笛を吹いた
「ジンホァねぇ……奴なら大丈夫だな」
「彼女なら確実に敵を仕留めることはもちろん拘束することも可能だからな」
スカイラの言葉に、ヴェルデが肩をすくめる。
「へぇ、じゃあお手並み拝見ってやつか……ま、期待してるぜ?」
スカイラはそれには答えず、ゆっくりと立ち上がる
「……来い!!ジンホァ!!」
次の瞬間、大広間の奥にある巨大な扉が開かれた
ドォォォン!!!
重く響き渡る銅鑼の音が空気を震わせる。そして、その音に合わせるかのように、無数のスート兵が整然と行進しながら、大広間へと入ってきた
「スート…スート…」
その中心に、ひときわ異質な存在があった
「………」
金色で、やや逆立った短髪の女性。彼女は堂々とした歩調で進み、軍団の先頭に立つと、鋭い視線で円卓の幹部たちを見渡す。そしてジンホァは鋭く声を上げた
「我らは何者か!!」
その瞬間、彼女の後ろに控えていたスート兵たちが、一斉に気勢を上げるシュプレヒコールを放った
『妖魔軍団インデックス!!』
「私の所属は!!」
『スカイラハート団!!』
「私の名前は!!」
『紅閃の毒牙、ジンホァ!!』
「我が刃は何をもたらす!!」
『閃光の如き死!!』
「我が毒は何をもたらす!!」
『抗えぬ終焉!!』
「敵に慈悲は?」
『不要!!』
「ならば叫べ!!」
『スカイラハート団、最強!!』
圧倒的な熱気が、大広間を満たす。まるで戦場の狼煙が上がるような、強い意志が込められた声だった
「……スカイラ、お前の軍団のコールは相変わらず迫力満点だな」
ヴェイルが静かに目を細める
「当然だ」
スカイラは静かに言った
「ジンホァ」
ジンホァに視線を向けた
「今回の任務は魔力の回収よ。しかし、ドゥルガニスとザフィロナが倒されたことを忘れないで……慎重に行動を」
ジンホァは一瞬、表情を曇らせた。冷酷非道な彼女も、仲間の死には動揺を隠せない。しかし、すぐに表情を引き締め、深く一礼した
「了解しました。任務、必ず成功させてみせます」
ヴェイルが励ますように声をかけた。
「ジンホァ、君ならできる。冷静さを忘れずに」
ヴォルティも続けた
「あまり無理はするなよ。生きて帰ることも任務のうちだ」
ヴェルデは静かに頷き、ジンホァに視線を送った。
「ザフィロナの無念を晴らしてくれ。期待している」
ガルムは腕を組みながら、低い声で言った。
「敵は強い。だが、お前も負けてはいない。気を引き締めて行け」
ジンホァは一瞬だけ目を閉じた。そして、ゆっくりと不敵な笑みを浮かべる
「光栄です!」
その表情は、まさに 戦場に飢えた猛毒の蜂そのもの
「……
会議室を後にした。その背中には、仲間たちの期待と信頼が重くのしかかっていた
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