[総ルビ]留学生は同棲JKエルフちゃん

第44話 エルフちゃんとホワイトデー

■第（だい）４４話（わ）　エルフちゃんとホワイトデー

　はい、皆様（みなさま）、やってまいりました。

　寄（よ）ってらっしゃい、見（み）てらっしゃい。

　ケート君（くん）のホワイトデーでござんす。

　ということで俺（おれ）がお返（かえ）しをする番（ばん）になった。

　ちょっとお茶（ちゃ）らけていないと平常心（へいじょうしん）を保（たも）っていられない。

　定番（ていばん）でいえばクッキーなのだけど、毎年（まいとし）貰（もら）ってる人（ひと）に毎年（まいとし）クッキーというのもなんだか芸（げい）がないような気（き）がしている。

　かといって唐揚（からあ）げご飯（はん）とかも違（ちが）うし。

　ステーキやカレーにするとかもなんか違（ちが）う気（き）がする。

　できれば食事（しょくじ）よりはちゃんとプレゼントの形（かたち）があって包（つつ）んで渡（わた）せるものがいいと思（おも）う。

　場合（ばあい）によりきりなのでなんともいえないけど、今回（こんかい）はチョコのお返（かえ）しなので、なんとなくそう思（おも）っている。

　俺（おれ）もいつぞやの女子（じょし）たちみたいにおセンチになって空（そら）を眺（なが）めている。

　ホワイトデー、ホワイトデー。

「まったくこれだから景都（けいと）は」

「なんだよアキラ」

「いや別（べつ）に。お返（かえ）しなんてクッキーの高（たか）いの適当（てきとう）に選（えら）んどけよ」

「まあそうだけど、なぁ」

「何（なに）悩（なや）むんだよ。クッキーセットでいいだろ」

「まあそうだけど」

「またはじまった。そうだけど、じゃねえんだよなぁ」

　女子（じょし）たちは俺（おれ）たちよりは平気（へいき）な顔（かお）をして授業（じゅぎょう）を受（う）けている。

　一年生（いちねんせい）の三学期（さんがっき）だからだいぶ気（き）も抜（ぬ）けているものの、それでも通常（つうじょう）授業（じゅぎょう）がある。

　それに対（たい）して妹（いもうと）はもう最近（さいきん）魂（たましい）が抜（ぬ）けてしまった。

　三月（さんがつ）に入（はい）ってすぐに合格（ごうかく）発表（はっぴょう）があり、みごと俺（おれ）たちの埼台（さいだい）東（ひがし）高校（こうこう）に合格（ごうかく）していた。

　それで今（いま）は充電（じゅうでん）期間（きかん）なのだ。

　新（あたら）しいセーラー服（ふく）が早（はや）く欲（ほ）しいなどと言（い）ってのろけている。

　四月（しがつ）になったら復活（ふっかつ）するだろうから大丈夫（だいじょうぶ）だろう。

「お返（かえ）し、何（なに）がいいかな？」

「え、私（わたし）？　なんでもいいなら一日（いちにち）デート券（けん）が欲（ほ）しいですぅ」

「あああれか、妹（いもうと）が使（つか）ったやつ」

「そうそれですぅ」

「さすがに三人（さんにん）に一枚（いちまい）ずつだと俺（おれ）の土日（どにち）が死（し）ぬ」

「だよねぇ」

　まあ最悪（さいあく）それでもいいけれど動物（どうぶつ）園（えん）ばっかり行（い）ってもしょうがないし、かといって水族館（すいぞくかん）と映画館（えいがかん）とか選（えら）ぶのも結構（けっこう）しんどい。

「何（なに）かクッキー的（てき）な物（もの）でお願（ねが）いしたい所存（しょぞん）」

「そうですよねぇ。あげたの生（なま）チョコでしたですぅ」

「はい」

　こういって俺（おれ）はララちゃんに手（て）で胡麻（ごま）をする。

　別（べつ）にララちゃんは俺（おれ）の足元（あしもと）を見（み）てくるような邪悪（じゃあく）な精神（せいしん）は持（も）っていないので安心（あんしん）できるが、何（なに）を欲（ほ）しいかは疑問（ぎもん）だった。

「ネットで買（か）ってしまおうかな、お取（と）り寄（よ）せ」

「ふむぅ」

　ララちゃんが難（むずか）しそうな顔（かお）をしている。

「ネットですかぁ」

　今度（こんど）はちょっと悲（かな）しそうな顔（かお）になった。

「分（わ）かった、分（わ）かった。ネットはなしね、ネットは」

「はいですぅ」

　正解（せいかい）のようだ。

　ネットお取（と）り寄（よ）せはララちゃん的（てき）にはあまりお気（き）に召（め）せなかったご様子（ようす）。

　昼休（ひるやす）みの空（あ）き時間（じかん）などもスマホでちょいちょいと調（しら）べてみる。

　これなんかどうかな。

　そうして俺（おれ）は一人（ひとり）で駅前（えきまえ）に向（む）かった。

　向（む）かうは女（おんな）の子（こ）が好（す）きそうな雑貨（ざっか）屋（や）さんだった。

　ぶっちゃけ男（おとこ）が一人（ひとり）で入（はい）るにはかなり勇気（ゆうき）がいる。

　しかしここしか思（おも）いつかなかった。

　類似（るいじ）品（ひん）であれば一（ひと）駅（えき）乗（の）れば大型（おおがた）ショッピングセンターとかでも置（お）いてはある。

　でも女（おんな）の子（こ）が欲（ほ）しそうなのは置（お）いてあるか分（わ）からない。

　雑貨（ざっか）を見（み）て回（まわ）る。あった。

「すみません、これ三（みっ）つ。別々（べつべつ）で」

「ホワイトデーのお返（かえ）しですか？」

「はい……」

　ぶっちゃけこのかわいい店員（てんいん）さんに声（こえ）を掛（か）けるだけでもバクバクものだった。

「人気（にんき）なんですよぉ。お目（め）が高（たか）いです」

　店員（てんいん）さんに褒（ほ）められるとなんとなく鼻（はな）が高（たか）い気分（きぶん）になるから不思議（ふしぎ）だ。

「本命（ほんめい）ですよね？　どれがどうとかありますか？」

「あの、公平（こうへい）に、全部（ぜんぶ）同（おな）じように大切（たいせつ）にしてください」

「あはは、ハーレムですか？」

「あ、え、そう、違（ちが）うというか、なんというか」

「まだ若（わか）いですもんねぇ、いいなぁ若（わか）いって」

　少（すこ）しだけ女（おんな）の子（こ）の目（め）が鋭（するど）いが口元（くちもと）は笑（わら）っているから、別（べつ）に本気（ほんき）ではないだろう。

　若（わか）いってとは言（い）っているが俺（おれ）たちとそう違（ちが）う歳（とし）のようにも見（み）えない。

「はいできました」

　綺麗（きれい）にラッピングをしてもらった。

　これをそれぞれ渡（わた）そうと思（おも）う。

　三月（さんがつ）十四日（じゅうよっか）。家（いえ）にて。

「はい、プレゼントのお返（かえ）し」

「ありがとうございますぅ」

「ありがとう……」

「お兄（にい）ちゃんありがとう」

　三人（さんにん）ともうれしそうだ。

「開（あ）けても？」

「どうぞ」

「「「わぁあああ」」」

　リンゴ型（がた）の石鹸（せっけん）だった。

　なんということはないけどリンゴの匂（にお）いがする。

「美味（おい）しそうですぅ」

「いい匂（にお）いね」

「本当（ほんとう）、いい匂（にお）いです」

「ララちゃん、食（た）べられないよ」

「知（し）ってますぅ」

「そっか」

「「「あははは」」」

　ララちゃんの美味（おい）しそうネタは鉄板（てっぱん）だ。

　みんなでちょっと笑（わら）って匂（にお）いを楽（たの）しんだ。

「お部屋（へや）に飾（かざ）るね」

「おう」

「あぁそうやって使（つか）うんですねぇ」

「そうだよ。石鹸（せっけん）として使（つか）ってもいいんだけど」

「私（わたし）もお部屋（へや）に飾（かざ）りますぅ」

「そっか、大切（たいせつ）にしてくれるみたいでありがとう」

「ううん、こちらこそありがとうですぅ」

　こうして三人（さんにん）の部屋（へや）にはリンゴの石鹸（せっけん）が目立（めだ）つ場所（ばしょ）に置（お）かれている。

　かなり大切（たいせつ）にされているようで、俺（おれ）もうれしい。

　部屋（へや）の中（なか）からはかすかにリンゴの落（お）ち着（つ）いた匂（にお）いがする。

　まあ俺（おれ）が彼女（かのじょ）たちの部屋（へや）へ行（い）くことはあまりないんだけど。

　今年度（こんねんど）ももうすぐ終（お）わりだ。

　ララちゃんと出会（であ）ったのもゴールデンウィークのすぐあとぐらいだ。

　一周年（いっしゅうねん）までには残（のこ）すところ二（に）か月（げつ）というところだろうか。