[総ルビ]私たちだけ24時間オンライン生産生活

１．医療実験

●タイトル

私（わたし）たちだけ２４時間（じかん）オンライン生産（せいさん）生活（せいかつ）

●通常版

https://kakuyomu.jp/works/16817139555551568015

●あらすじ

　ＶＲ技術（ぎじゅつ）が一般（いっぱん）化（か）される直前（ちょくぜん）の世界（せかい）。予備（よび）校（こう）生（せい）だった女子（じょし）の私（わたし）は、友人（ゆうじん）二人（ふたり）と、軽（かる）い気持（きも）ちで応募（おうぼ）した医療（いりょう）実験（じっけん）のニか月（げつ）間（かん）二十四時間（じかん）連続（れんぞく）ダイブの被験（ひけん）者（しゃ）に当選（とうせん）していた。それは世界（せかい）初（はつ）のＶＲＭＭＯＲＰＧのオープンベータ開始（かいし）に合（あ）わせて行（おこな）われ、ゲーム内（ない）で過（す）ごすことだった。一般（いっぱん）ユーザーは一日（にち）八時間（じかん）制限（せいげん）があるため、睡眠（すいみん）時間（じかん）を除（のぞ）けば私（わたし）たちは二倍（ばい）以上（いじょう）プレイできる。運動（うんどう）があまり得意（とくい）でない私（わたし）は戦闘（せんとう）もしつつ生産（せいさん）中心（ちゅうしん）で生活（せいかつ）する予定（よてい）だ。

　まずは薬師（くすし）の薬草（やくそう）からの調合（ちょうごう）、ポーションづくり、少（すこ）し錬金（れんきん）術師（じゅつし）、友達（ともだち）は木工（もっこう）アクセサリー、ちょびっとだけ鍛冶（かじ）とかそんな感（かん）じで。

◆１．医療（いりょう）実験（じっけん）

　私（わたし）こと大野（おおの）真美（まみ）、十八歳（さい）は女子（じょし）高（こう）をこの春（はる）、無事（ぶじ）卒業（そつぎょう）した。行（い）きたい大学（だいがく）に合格（ごうかく）できなかったため、予備（よび）校（こう）生（せい）をしている。

　私（わたし）はネットで見（み）かけた、二か月（げつ）間（かん）二十四時間（じかん）連続（れんぞく）ＶＲダイブ医療（いりょう）実験（じっけん）の被験（ひけん）者（しゃ）に友達（ともだち）と応募（おうぼ）し、それに当選（とうせん）した。

　ＶＲ技術（ぎじゅつ）は実用（じつよう）化（か）寸前（すんぜん）の段階（だんかい）まで進（すす）み、関連（かんれん）医療（いりょう）機器（きき）などの開発（かいはつ）も急（きゅう）ピッチで進（すす）んでいる。

　募集（ぼしゅう）要項（ようこう）は、十八歳（さい）以上（いじょう）の健康（けんこう）な方（かた）で親（した）しい三人（にん）ひとグループ単位（たんい）。家族（かぞく）の同意（どうい）が得（え）られる方（かた）。免責（めんせき）事項（じこう）の書類（しょるい）に同意（どうい）できる方（かた）のみ。

　ちょうど夏休（なつやす）みの二か月（げつ）間（かん）の時期（じき）と重（かさ）なり問題（もんだい）なかった。

　このゲーム内（ない）時間（じかん）は加速（かそく）世界（せかい）が採用（さいよう）されていて六倍（ばい）のスピードで時間（じかん）が進（すす）むため、実質（じっしつ）２×６で一年（ねん）間（かん）行（おこな）われることになる。

　体感（たいかん）期間（きかん）が長（なが）いこともあり、高額（こうがく）の謝礼（しゃれい）金（きん）も出（で）る。

　ゲームの名前（なまえ）は「Wonderland Virtual Reality Online」通称（つうしょう）ＷＶＲＯである。

　剣（けん）と魔法（まほう）の少（すこ）し不（ふ）思議（しぎ）なＶＲ世界（せかい）だ。

　オープンベータ終了（しゅうりょう）後（ご）はそのまま本（ほん）サービスに移行（いこう）する。

　本（ほん）サービスは月額（げつがく）課金（かきん）制（せい）を予定（よてい）しており、ゲーム内（ない）ではアイテム課金（かきん）はないので、課金（かきん）者（しゃ）が有利（ゆうり）になるわけでは無（な）い。

　クローズドテストまでは、守秘（しゅひ）義務（ぎむ）が課（か）せられているためか、プレスリリース以上（いじょう）の情報（じょうほう）はほぼ公開（こうかい）されていなかった。

　ＷＶＲＯが開始（かいし）される三日（みっか）前（まえ）、私（わたし）たちは、秋立（あきたち）総合（そうごう）大学（だいがく）病院（びょういん）に集（あつ）まった。

「やっはろー、真美（まみ）」

「はろはろ、みくる」

「おはようございます。真美（まみ）さん」

「おはよう、さくらちゃん」

　それでは、これから一年（ねん）間（かん）一緒（いっしょ）に冒険（ぼうけん）する仲間（なかま）を紹介（しょうかい）しよう。

　三人（にん）は同（おな）じ高校（こうこう）出身（しゅっしん）だ。

　まず私（わたし）。身長（しんちょう）１４８センチ。体重（たいじゅう）は軽（かる）いほう。なぜか胸（むね）だけ大（おお）きくなりそこそこある。

　黒髪（くろかみ）で肩（かた）までのストレートヘアをしている。

　顔（かお）は友人（ゆうじん）曰（いわ）く、ロリ系（けい）で頬（ほ）っぺたが膨（ふく）らんでいて可愛（かわい）いらしい。

　運動（うんどう）は苦手（にがて）。得意（とくい）なのは数学（すうがく）と読書（どくしょ）と図工（ずこう）。小（しょう）学校（がっこう）の図工（ずこう）では、よく作品（さくひん）がクラス内（ない）の賞（しょう）を取（と）り、二回（かい）市（し）の公民（こうみん）館（かん）に展示（てんじ）されたこともある。

　次（つぎ）は安達（あだち）みくる。十八歳（さい）。身長（しんちょう）１５５センチ。体重（たいじゅう）は軽（かる）いほう。

　胸（むね）は、残念（ざんねん）ながらぺったんこだ。いや、膨（ふく）らみかけだ。

　顔（かお）は普通（ふつう）。どちらかというと、すっきり顔（がお）の美人（びじん）系（けい）かな。

　運動（うんどう）はできる方（ほう）だが、勉強（べんきょう）はあまり得意（とくい）ではないようだ。

　次（つぎ）は春巻（はるまき）桜（さくら）。十八歳（さい）。身長（しんちょう）は１６０センチ。体重（たいじゅう）はたぶん見（み）た感（かん）じ軽（かる）め。

　スタイルはかなり良（よ）い。髪形（かみがた）はロングですべすべ、さらさらしている。うらやましい。

　勉強（べんきょう）は何（なん）でもできて、運動（うんどう）は普通（ふつう）だ。絵（え）がすごくうまい。写実（しゃじつ）的（てき）なのもアニメ調（ちょう）もできる。

　あまりしゃべらないタイプだけど、話（はな）すとですます調（ちょう）でお嬢様（じょうさま）キャラが似合（にあ）っている。

　三人（にん）とも集合（しゅうごう）時間（じかん）には間（ま）に合（あ）って、説明（せつめい）室（しつ）へと案内（あんない）される。

　しばらくすると、イケメンの眼鏡（めがね）をかけたお医者（いしゃ）さんが入（はい）ってくる。

「今日（きょう）からよろしくお願（ねが）いします。私（わたし）は、この実験（じっけん）の責任（せきにん）者（しゃ）の丸木（まるき）です」

「「「よろしくおねがいします」」」

　加速（かそく）世界（せかい）への長（ちょう）時間（じかん）のダイブは、まだ実験（じっけん）があまり進（すす）んでいない。

　理由（りゆう）は簡単（かんたん）で、長（ちょう）時間（じかん）過（す）ごすだけのコンテンツが読書（どくしょ）ぐらいしかＶＲ世界（せかい）にまだなかったからだ。

　そこでちょうどサービスが開始（かいし）されるＷＶＲＯで過（す）ごす実験（じっけん）が提案（ていあん）された。

　私（わたし）たちは、毎週（まいしゅう）または何（なに）か問題（もんだい）が発生（はっせい）した時（とき）にレポートを提出（ていしゅつ）すれば、あとは自由（じゆう）にゲームを進（すす）めていいと言（い）う。

　後（あと）たまに、ゲーム内（ない）で丸木（まるき）さんが問診（もんしん）をするそうだ。

　なお、普通（ふつう）の人（ひと）たちは現実（げんじつ）時間（じかん）で一日（にち）八時間（じかん）のログイン制限（せいげん）が課（か）されている。

　丸木（まるき）さんに案内（あんない）されて、私（わたし）たちは五階（かい）にある部屋（へや）に案内（あんない）された。

　そこには、最新（さいしん）のＶＲヘッドギア連携（れんけい）の寝（ね）たきり介護（かいご）用（よう）ベッドが置（お）かれていた。

　ギアには筋力（きんりょく）低下（ていか）を抑（おさ）えるための機能（きのう）が備（そな）わっている。

　今日（きょう）はＶＲヘッドギアのセットアップと、体（からだ）に異変（いへん）が出（で）ないかの事前（じぜん）チェックだった。

　私（わたし）たちは、入院（にゅういん）着（ぎ）に着替（きが）えた。そして、ＶＲヘッドギアを付（つ）けてベッドに寝（ね）た。

　脳波（のうは）測定（そくてい）、身体（しんたい）チェックが行（おこな）われ、ＶＲ空間（くうかん）に降（お）り立（た）つ。

　そこは、簡単（かんたん）な部屋（へや）になっていて、姿見（すがたみ）、コタツ机（つくえ）、ベッドがあった。

「私（わたし）そっくり」

　私（わたし）は思（おも）わずつぶやいた。ゆったりしたルームウェアを着（き）た私（わたし）と瓜二（うりふた）つのアバターが鏡（かがみ）の前（まえ）に立（た）っていた。

　視界（しかい）の隅（すみ）には「メインメニュー」なるものがホログラムで浮（う）かんでいる。

　ここはまだＷＶＲＯのゲーム内（ない）ではなく、ＶＲヘッドギアのプライベート空間（くうかん）だった。

　私（わたし）たちは、半日（はんにち）かけて専用（せんよう）のミニゲームをして六倍（ばい）の加速（かそく）世界（せかい）をひとまず体験（たいけん）した。

　ジャングルジムにロッククライミング、パラグライダー、テニスなどだ。

　現実（げんじつ）で体験（たいけん）すると危険（きけん）な遊（あそ）びも、ゲーム内（ない）なら安全（あんぜん）だ。

　健康（けんこう）診断（しんだん）や様々（さまざま）な事前（じぜん）検査（けんさ）が行（おこな）われ、あっというまに準備（じゅんび）の二日（ふつか）間（かん）が過（す）ぎた。

　明日（あした）から、いよいよ長（なが）い長（なが）いＶＲゲーム生活（せいかつ）が始（はじ）まる。