第41話思う詩人
言葉が消えて、悲しい時、声を聴きたい、みんなの声を。
戦いに明け暮れた日々に、躓いた言葉が、覆いかぶさる苦しみに、跳ねのけることができない。
朝。
布団を出て、そっと耳を澄ませれば、季節外れの鈴虫が、泣いている。
玄関の向こうで、希望が待っていた。
心に穴が開いた。
叫び声が聞こえる。
まだ先へ行ける。
そんな時、風の中から、声がする。
すると、一筋の星が、降ってくる。
救いを求めた言葉に、届かない言葉。探していた。
朝の日差しを、まどろんだ睫毛を、濡れたほほを。
どこにもない、自由の光が、たどり着けない僕に、コートを脱いだ、晩に、やってくる、見つからない場所で、もがいた、もう一人きりだった。
そっと耳を貸せば、誰もいない、そこには。
躯になっていく肉体が、再生を求めて、動く、伸ばした先に草花がある。
露に濡れた明日に、目を閉じるなら、見えない鼓動に、咲いている花があった。
あどけない頬に、打つ雨が、少年の幻を映している。
反射した鏡に、流れ込む悲しい眼が、死を願うなら、僕は、また明日へ向かっていく。
決意よりも失意を。
平和よりも、葛藤を
信じている。
信じているなら、僕の、言葉は、きっと息をしている。
もし、幻を囁いた昼間に、隠れた影にある宝石を見つけられる。
かくれんぼは終わった。
かくれんぼは終わった。
それから、大人になっていく日々に、上を向いた時、未来を描いた鳥が、弧を描いて、隙間に入り込んだ肉体が、砕ける。
バランスを崩した膝が笑うから、言葉が回転して、逆光の時を、進んでいく。
ノイズに紛れて、澄んだ声がした。
それは、幼い時に見ていた自分だった。
出会いたいと願う。
思う詩人は、孤独を生きる。
荒野に立った獣が、月を愛でるなら、星が嫉妬して、流れ込んでくる。
意識の奥深くに、消せない傷があるから、僕は、言葉を消さない。
でも、そんな逡巡が、あだとなるなら、月は笑うだろうか?
月は、月は……
体が動いて、一房のブドウを取った。
むさぼり食った唇に、ついた果汁が、甘い。
酸っぱい果肉を、砕いた歯が、涙の味になるから、自由の歌は、孤独をかけていく。
空が見えた。
落ちていく星に、精いっぱいの抵抗を、感じて風となる。
きっと、生きることは、歌うこと。
止めてしまえば、青春の兆しは、芽生えた新芽を食む虫たちに紛れて、僕は消えてしまう。
抵抗を感じた肌に、重なる緑の木々があった。
ふさぎこんだ僕は、感じている。
虫の葉音と声を。
草木が語れば、時代は過ぎていく
つなぎ止める糸は、赤ではなく白いから、蚕が食むと、僕は巻着いた混沌を破る勇気を信じていた。
思うから感じている。
この青空を。
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