第22話 スタンピード part1
スタンピードに対する作戦会議から一週間ほどが経った頃、いよいよスタンピードに対抗して進行を開始した。
僕らは現代旅行の時と同じ班で行動することになった。
刀弥達を引き連れて遊撃部隊となった。
進撃が始まり、すでに前線は戦いが始まっている。
僕らの部隊を含む、中衛もそろそろ参戦が見込まれる。
僕らは今、魔法で空を飛びながら移動している。
僕らの間にも、いや、中衛の人間、全員の顔が引き締まっている。
緊張が走っていると言ってもいい。
ここで連絡が届けられる。
高速で移動できる烏が伝令部隊となっている。
それから魔力手紙が届けられる。
魔力手紙とは魔力で書かれた文字で、触れることで脳内にはっきりと理解できるものである。
「中衛部隊のみんな、そろそろ戦線に衝突する。目視でも見えるはずだ。みんなは遠方から攻撃するだけでいい。気をつけてくれ。」
全員が心の中で頷く。
そして、黄昏の連絡通り、スタンピードを視認することができた。
僕は自分の部隊に指揮をとる。
そして、僕らは戦火の中に入っていった。
これは祈里ら、中衛部隊が戦闘に入って、しばらくしてからの話である。
彼らは遊撃部隊として戦場を縦横無尽に駆け回っている。
各地で魔物を狩続ける。
前線の攻防を抜けて来た魔物達は力量の差はあれど、それなりに強敵ではある。
祈里やルナの魔法や魔術はかなり効き目があるが、他の部隊のみんなの攻撃は効き目が弱い。
とはいえ、刀弥の剣術やアルル、メルルの御業などものによっては相応の威力のあるものもある。
祈里は魔物を風で切り刻み、ルナは凍らせて、アルルは白い炎で、メルルは黒い炎で燃やし尽くす。
刀弥はバッサバッサと斬っていく。
「倒しても倒しても終わらないね。」
「仕方ないんじゃないか?三十万もいるんだろ。」
「そうだよそうだよ。」
「そうですそうです。」
彼らの会話も魔物の足音という喧騒に紛れてすぐにかき消されていく。
戦いの最中、一報の手紙が届く。
そこにはとてつもなく大きい魔力が感知されたという事。
それは二つにあり、遊撃部隊の彼らは二手に分かれて調査に向かって欲しいという内容だった。
「手紙にはなんて書いてあったんですか?」
「大きい魔力が二つ感知されたから、二手に分かれて調査しろってさ。」
「この人数を二手に分けるのか?流石にまずくないか?」
「でも、命令だからね。分かれよう。」
「どうするだよ?」
「どうするです?」
「そうだな、僕、刀弥、アルルの三人とルナとメルルの二人に分けよう。」
「ルナ達が二人だとまずくないか?」
「ああ、だからこいつを付ける。」
「こいつ?どいつだ?」
「おーい。」
祈里が自分の左手に呼びかける。
みんなが変な顔をしていると、なぜか祈里の影からヒュンッとタルタロスが現れた。
「タルタロス、二人の護衛を頼んだよ。」
「はいな、任されました。」
「というわけでルナ、メルル、二人はこいつと一緒に北東に向かってくれ。僕らは北西に向かう。連絡は僕とタルタロスが意識を共有できるからそれでやろう。」
「了解しましたわ。」
作戦会議が終わり、それぞれに散っていく。
北西に向かって進んでいく僕らは戦いながら感知された魔力源に近づいていく。
魔物がだんだん強くなっていく。
とはいえ、僕ら三人の前には塵も同じ。
文字通りあらゆる魔物が駆逐され、灰になる。
すると、急に後ろに大きな影が現れた。
背後からの一撃に間一髪回避する。
背後に現れた存在は以前森で出会ったよりはるかに大きいクマであった。
「グラァァァァ。」
クマが大きな咆哮を上げる。
これが巨大な魔力の原因なのだろうか?
クマは大きい割に素早い動きで僕らに襲いかかって来る。
魔法で空に逃げようにも空には空で魔物が居て、戦いが行われているので逃げることができない。
なので、僕や刀弥は武術の心得を使って森中を跳び回る。
アルルは隠遁の魔法を使って隠れている。
僕らはそれぞれ魔法を喰らわせるが動きを止めることはできても完全な有効打に放っているようには見えない。
「足は止まっても、ダメージがあるようには見えないね。」
「確かにです。」
「多分、魔力で皮膚や毛皮が硬いんだ。そこをなんとかしないとダメージにはならなんじゃないかな?」
刀弥、アルル、僕はそれぞれに口にする。
「じゃあ、俺があいつの体を斬り落とす。」
「あのさ、話聞いてた?硬いんだってば。」
「安心して良いさ、俺の刃は如何なるものも切り裂くことができる。」
「じゃあ、さっさと斬ってくれ。それができるんだったらさ。」
「オーケー、リーダー。」
刀弥は有言実行と言わんが如く、片腕を斬り落としてしまった。
その綺麗な切断面からは血が噴き出ている。
クマは痛みのあまり激しく暴れ回る。
僕らはそこを無視することはなかった。
傷口に魔法を叩き込む。
柔らかい肉の部分に当たると明らかにダメージがあるように見える。
五分ほどクマの抵抗もありながら魔法を打ち込み続けると、クマは絶命した。
「ふぅ、やっと倒せたな。」
「そうだな。」
「はいなのです。」
僕の言葉にそれぞれが続く。
「これが魔力の発生源で良かったんだよな?」
「そのはずだけど。」
「まさか、もう一体出て来るなんてないです?」
「馬鹿野郎、そういうことを言うと。」
刀弥がそう言いかけたその時、複数の大きな咆哮が聞こえてきた。
「今のはまさか。まさか、な?」
「嘘だろ、おい。」
森の茂みから現れたのは獅子型、狼型、ドラゴン型の三体だった。
「なんか、さっきのより強そうなんだが?」
「言うなよ。泣けて来るじゃねぇか。」
「そうです、そうです。」
「仕方ないか、やるしかないね。」
「一人一体だ。やれるな?祈里、アルル。」
「はいです。」
それぞれが攻防に入る。
僕は狼型の魔物の相手をする。
圧倒的な速さで縦横無尽に駆け回るワンちゃん。
魔法は当たらない。
無駄に放つことで森林に被害が出ている。
これでは狼のスピードがさらに加速する。
最悪の悪循環である。
とはいえ、勝機がある。
と言うより、勝てるビジョンしか浮かばない。
それは、ナーシャからもらった瞬間転移の魔法である。
これで魔法を直接ヤツにぶつける。
それでゲーム終了だろう。
直撃した攻撃に狼は横に倒れた。
これで倒したのだろうか?
周りを見たら刀弥とアルルはまだ戦っている。
しばらく観戦していると、タルタロスから連絡が来る。
ふと横を見てみると、祈里の方の戦いは終わっているようだ。
祈里は明らかに静観しているようだった。
手を貸す気はないようだ。
さっさと終わらせたのなら俺に手を貸してくれても良いのにな。
まぁ、いいか。
こちらもとっとと終わらせよう。
俺は獅子型の魔物と距離をつめる。
獅子型の魔物は爪に魔力を溜める。
両者睨み合いの状況になる。
俺から先に動いた。
まずは前足を斬り落とそうと刀を振り下ろす。
獅子はそれを爪で受け止める。
俺は後ろに飛び退きもう一度距離を取る。
そして、さらにもう一度距離を詰め今度はフェイントを交えることで獅子の前足の片方を斬り落とすことに成功する。
獅子は痛みにもがき苦しんでいる。
この隙に俺は獅子の首を斬り落とす。
僕の相手はドラゴン型の魔物である。
空を飛んでなかなか魔法が当たらない。
闇属性の魔法は設置型が多いのである。
だから、うねうね動くドラゴンには当たりにくい。
動く相手に当たるように僕は捕縛系の魔法を使う。
文字通りに敵を捕まえられることができる。
そして、僕は黒い炎で燃やし尽くした。
ドラゴンはもがきながら炎を吐き返してきた。
それはあられも無いところに飛んでいく。
そのまま、散っていった。
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