第24話 流氷の上




という訳で、僕達は流氷の近くまで歩いて行った。


近くまで行くと僕の体に冷たい水がはねてきていることに気がつく。


すごく冷たいけれど、ここまで来ると少し気持ちいいとまで感じてしまう。



「それじゃあ今から流氷の上に乗ってみようと思うんだけど、メグは大丈夫?」


「うん、ルカが守ってくれるだろうから、大丈夫だよ。」


「そっか…………じゃああたしは一足先に乗ってるぞ!」



アニは流氷へと飛び乗った。


流氷に着地する時にチャプンという音がなって少し可愛かった。



「ほら、早くみんなこっちおいでよ!」


「はいよー。」



続いてサナもアニを追いかけて流氷の上へと行った。



「じゃあ、私達も行ってみようか!」


「う、うん。」



アニとサナは流氷に乗っても大丈夫みたいだったから危ない事は無いというのは分かってるんだけど…………。


うぅん、やっぱり怖いものは怖いな。


何かあってもルカが守ってくれるとは思うけど、まずルカに何かが起こっちゃうかもしれないし…………。


3人は凄くスタイルが良さそうだから良いけど、僕は別にそんなに痩せてるほうじゃない。


お風呂に入った時なども自分の体とみんなの体を見比べていつも少し恥ずかしかった。


僕が太ってしまっているがために流氷が沈んじゃったりしたらなんて申し開きしたらいいか…………。



「…………本当に大丈夫? 嫌なら全然行かなくても良いんだけど…………。」


「そういう訳じゃなくて、僕が太ってるから流氷に乗ったら沈んじゃわないか心配で…………。」


「え? 太ってる?」



ルカは心底不思議そうに答えた。



「え、だってルカ達と比べたらお腹だってぷにぷにしてるし…………。」


「ふふ、別に太ってないよ? 私達は筋肉があるからスっとしてるだけで、別にぷにぷにしてるから太ってるって訳じゃ無いからね?」


「そ、そうなのかなぁ?」



まぁ、これだけ落ち込んでる僕だけどよく考えたら太っている人っていうのを見たことが無い以上分からないもんなぁ…………。



「メグは今が1番可愛いんだから、それでいいんだよ!」


「ちょ、褒めても何も出ないよ?」



何も出ないと言うより何も出せないが正しいんだけどね。


ルカの励ましによって何だかちょっとコンプレックスに思っていた事も何だか楽になった。


まだちょっと怖さはあるけれど、何だか大丈夫なんじゃないかなと思えるようになった。



「よぉし、じゃあ行くよー!」



ルカは掛け声と共に飛び上がった。


ヒュウっと僕を水飛沫を含んだ冷たい風が包んだ。



「ひゃぁっ!?」


「おー、冷たいねぇ。」



その風を抜け、ルカと僕は流氷の上までたどり着いた。


流氷の上はルカに抱き抱えてもらっているにもかかわらずグラグラと揺れて不安を掻き立てる。



「る、ルカ、これ本当に安全!?」


「んー、ちょっと不安定だけど、大丈夫じゃないかなぁ?」



不安がってる僕たちを他所にアニとサナは流氷の上をぴょんぴょん飛んで遊んでいる。


あの二人は本当に仲がいいなぁ。


僕はあんな感じにルカと遊べないから少し羨ましい。


僕達がそうやって遊んでいると、僕は遠くから今まで聞いたと音とは少し違う音が聞こえてくるのを感じた。



「ねぇ、この音なんだろう…………。」



僕はみんなにそう問いかけてみたが、みんなは特に何も聞こえていないようだった。



「うぅん、私達の中で1番耳がいいのは多分メグだろうし、そのメグが変な音が聞こえるって言うんだったら万全を期してここから離れた方がいいかな?」


「えぇ!? あたし達さっきここ来たばっかだぞ!?」


「危険な目に会うよりかはいいからねー、ほら行くよアニー。」


「うぅ、まだ遊びたいのにー!」



ブーブー言うアニをサナが引っ張りながら僕達は流氷から降りて元いた場所まで戻った。


僕が変な音が聞こえたというのはそれが危険を示している事だったのかは分からないから、少し申し訳なかった。


別に危険でもないのであればまだ2人は遊んでいたかっただろうし、ルカももっとあそこに居たかったもしれない。


というか、もしかしたらあの音も僕の聞き間違えだったかもしれないし…………。


僕がネガティブな思考に陥っているその時、アニが何かを発見したようだった。



「あっ、あれってなんなんだ?」


「んー? あれは…………砕氷船だね、こっちに近づいてきてるみたいだ、さっきのメグの聞いた音ってのはこれの事だったみたいだね!」


「おぉー、じゃあさっき早めに逃げて無ければ危なかったのか…………ありがとうメグ!」



ほ、本当に危険が迫ってたんだ…………。


となるとやっぱりさっきあの音の事をみんなに知らせておいて良かったんだ…………。


僕はホッとした。



「…………それで、砕氷船ってなに?」


「さっき乗ってた流氷を砕いて回る機械の事だよ、特に僕たちを狙う事は無いんだけど、巻き込まれたら危険だから、近づかないようにしなきゃいけないんだよね。」



僕は砕氷船の事は見えないが、次第に大きくなる音からその力強さは伝わってきた。


ちょっと怖い。



「うぅん、砕氷船がいるってことはもうここら辺の流氷は全部砕かれちゃうだろうし…………もう行こっか。」


「うん、しょうがないねー。」


「うぅ、もっと居たかったけど…………出発進行ー!」


「おー!!!」



いつもより元気の無いアニの声で僕達は再出発した。

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