新人プログラマーの仕事終わり

羽田羅輝

これまでの人生で最悪な誕生日を迎えたので日記を書きます

20240731


 去年まで僕の誕生日は夏休みで、すっかり誕生日=休みのイメージが出来ていたのですが、社会人にもなると夏休みがないので普通に仕事です。

 微妙な気持ちになりました。それでも誕生日は誕生日なので夜はピザとケーキでも食べようかと思っていました。


 仕事が終わって会社の帰り道、雨が降っていたので買ったばかりの自動開閉式の折り畳み傘をさそうとしたんですがボタンを押してもなんか開きにくい。

 家で試したときは問題なかったはずだけど、まぁ仕方がない。手動で開きました。

 帰り道では同期と話しながら駅に向かいましたが、内心は誕生日なのに雨かよと軽く落ち込んでました。

 改めて今日の夕食は少し豪華にしようと決心しつつ、駅で傘を閉じようとしたわけですが……


 傘が閉じないんですよね笑


 ボタンをもう一回押したら閉じる傘だってことは分かっていました。もちろんボタンをもう一回押しました。でも閉じませんでした。

 ナンデェ?

 原因を探ってみたら、傘を開く支柱部分が真っ二つに割れてるんですね。

 それでボタンを押したら閉じる仕組みが壊れちゃったんだと思います。駅の改札より前のところで四苦八苦しながらそんな推測を立てましたが、どうにもなりません。

 無茶なのは承知で駅員さんに助けてもらおうと相談しました。どうにもなりませんとの回答を頂きました、そりゃそうだわな。

 なので閉じるまでどうにかしてもらうか、そのまま他の方の邪魔にならないように乗っていただくかという二択が提示されました。

あなたならどういう選択をしますかね?


 僕はもう、支柱で壊れてるんだから閉じれる訳ないだろいい加減にしろ! とか思いながら分かりました、すみませんありがとうございますと苦虫を嚙み潰したのを隠すような作り笑顔で改札を抜けました。


 どうにか電車の中に潜り込みましたが、まあ乗り込んだら急に傘が閉じる訳もなく、周りの人になんだこの人という白い視線を感じつつ、壊れてんだよ察しろとばかりに閉じる訳がない傘を閉じようとする努力を見せて納得してもらうようにしました。

 それでも、他の人の邪魔にならないようにしようと思うと無駄な努力はやめて傘を上に持ち上げる訳ですが、その姿は電車の中で傘をさす狂人そのもの。

 滅茶苦茶白い目で見られているだろうなと思いました。

 実際、「すみません傘閉じてもらって良いですか」と知らない人から言われるんですね。それに対して僕は「ああすみません、傘が壊れちゃって閉じれないんです」と申し訳ない表情を作って返すと「ああマジですか……すみません」と言われてどっか行きました。

……閉じれたら閉じてるに決まってるだろうがああああああああああああ!!!


 その後、乗り換えで電車を降りた時、また別の一人の男性が僕の傘を閉じようとしてきました。最初は完全にこの狂人の行為をやめさせよう、もしくは自動開閉式の傘の使い方を分かっていない若者に使い方を教えてやるとばかりに僕の傘のボタンを押しました。

 当然閉じる訳がありません。だって支柱が壊れて閉じる機能も一緒に壊れてる(推測)んだもん……

 でもその人は優しい人で、どうにか僕の傘を閉じようと頑張ってくれました。

 結果、無理だと分かっていただいて「すみません閉じれなくて」と謝られたので、僕は「いえいえ、すみません、ありがとうございます」とお礼を言いつつ、これで奇跡でも起こって閉じてくれてたらなぁと半笑いで乗り換え先の電車のホームに移動しました。


 乗り換え先の電車が大幅遅延して大渋滞を形成していました。

 僕が乗るときにはぎゅうぎゅう詰めの人込みの電車、そんな中で傘を広げたままの男が一人電車に入る……想像してみてください。


こ い つ 邪 魔 す ぎ じ ゃ ね ?


 こんなぎゅうぎゅう詰めの電車の中で傘をさすとか、こいつ狂人か? うわ、ヤバいやつと乗り合わせちゃった……と思われるのは想像に難くない。


それでも仕方ないじゃんと内心言い訳しつつ、駅のホームで次の電車が来るのを待っていました。

ただ単に待っているだけだと傘を開いて待っている狂人になるので、傘を閉じる努力をすることで傘が壊れて閉じれない可哀そうな人を演じていました。

いやまぁ実際そうなんだから演じてるとは言いにくいんですが、内心閉じる訳ねぇよと思いながら閉じようとする無駄な努力をしてますし……

事情の知らない人にただ単に狂人だと思われるのはものすごく心外なので。


そうして待っているうちに思考が極端な方に行くんですよね。

まず家に着く時間の天気を見ます。普通にそのまま雨でした。

これで晴れだったら戸惑いはなかったんですが、雨だったので悩みました。

でも、渋滞に乗り込むことを考えて覚悟を決めました。

僕はおもむろに傘の枝の一本を掴んで容赦なく折ると、残りの枝も一つ残らずすべて折りました。


そうです、傘を完全に壊してコンパクトにしました。


これで周りからの目は雨の日に傘が壊れた可哀そうな人にランクアップしました。多分。

その代償として、傘を折っているときは駅のホームで何故か傘を開きっぱなしにしてる狂人が突然その傘を折るという更なる奇行に走ったヤバいやつのように見られた気がしますが、まぁ許容範囲でしょう。どうせみんなすぐに忘れる……俺は忘れねぇけどな!


それからはまぁいつも通りの退勤電車に戻りました。折り畳み傘を何故か折りたたまない変わった人ではありましたが、普通の傘と同じ大きさだと誤解させられていたでしょう。そうそうバレへんって。


それからは壊れた傘を持ちながらピザを買い、コンビニでショートケーキを買って家路に向かう最中、当然壊れた傘では雨を防げないのでピザとケーキを守るために使い、靴に小石が入る他、玄関前で靴紐がほどけて今日はつくづく最悪な誕生日だったと思いながら美味しいピザとケーキを食べて満足しました。


にしても傘が壊れるのは東京に来てから3回目なんだが? 一回目が引っ越し先を探した時だから……大体8か月に3回折り畳み傘が壊れるのってイカれてないか?


一回目と二回目は強風でぶっ壊されたけど。

今回の件で自動開閉式の傘はもう買わないかもしれない。もう一回、使い方が悪かった可能性があるから買ってみようかと思うけど、それがダメだったら一生買わないかも。でもとりあえず次は手動で開閉させる折り畳み傘にします。


天気情報をあんまり見ない僕には必須な道具なんです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る