第8話 グループ分け

 名前呼びを強要されたあの夜から1か月、わたしはなるべく高嶺に関わらないようにして来た。変に近づいて名前を呼ぶ様な羽目になっては敵わない。

どこをどう間違えたらクラスで1番嫌いな高嶺を名前で呼べるんだ?!

あいつの頭の中はピーマンみたいに何も入ってないと思ってたが全くもって大正解だ。



「それじゃあ、2か月後にある文化祭での学習発表会は3人ひと組で行う。誰と組んでもOKだ。みんな期待してるぞ」

HRで担任からの告知。

友達のいないわたしにはこういったチーム編成が1番堪える。


『仕方ないな…また足らないグループに入れてもらおう…』

わたしは深い溜息を吐きながら帰りの用意をする。


「高嶺く〜ん!」

何人かの女子が高嶺を呼ぶ声が聞こえる。

『やれやれ…こう云う時は人気者が羨ましい…』

アイツはこんな時、最後まで誰にも呼ばれず人数の足らないところへやっと入れてもらう気持ちなんて判らないだろうな…

えっと…ウチのクラスは女子が12…男子が15だから取り敢えず3でり切れる…

絶対どこかのグループには入れてもらえるはず…いつもみたいに鈴木さんと玉木さんのところに入れてもらおうかな…


「おい、志摩! 志摩!」

仲良しペアの鈴木さんと玉木さんを考えているといきなり腕を掴まれる。びっくりして相手の顔を見ると………高嶺……?!

なんで?


「お前、今凄い嫌な顔したろ?」

束の間の沈黙の後、見透かした様な眼差しを向け言い放つ高嶺に思わず反射的にそっぽを向く。

「そ…そっちこそ何いきなり腕なんか掴んでんのよ!」

そう言って、反対の手で掴んでる手の甲をペチペチと叩いた。

男子から触られるとか有り得ない。


「何度も呼んでるのに返事が無いからだろ」

グループ分けが気がかりで気付かなかった…

「だからって何気安く触ってんのよ!」

掴まれた腕よりも、そんな事をされたわたしに向けられる他の女子からの冷ややかな視線が痛い…

「悪かった」

そう言いながら笑って離すが、その顔は全然悪いと思ってないだろ?


「志摩、今回のチーム分け俺と組むだろ」

当たり前の様な高嶺の発言に周りの女子からどよめきがおこる。

ああ…なんかこの状況…凄く居たたまれない…

大体なんで組む前提なのよ?

こんなのOKしたらクラスの女子から殺されちゃう…

取り敢えず断らなきゃ…

「あ…あの…悪いけど…」

「そう云えばもう一人いるな。 おーい、成嶋~」

わたしの話しも訊かず、最前列に座っている成嶋柚子なるしまゆずに手を振って近づいて行った。

わたしはチャンスとばかり急いで鞄を持つと、一目散に教室から走って出た。


頭が空っぽのあんたでも察しろ高嶺!



「なんだ志摩のヤツ…そんなに急いでたのか?」

的外れな事を話す高嶺を成嶋柚子は静かに見上げる。

「それより成嶋、俺たちと組まないか?」

「俺は良いけど宮本の方は大丈夫か?どう見てもお前と組むの嫌そうだったぞ」

「それなら大丈夫だって、アイツは…」

「高嶺くん、なんで宮本さんなの?わたしが組みたかったなぁ」


上目遣いでお強請り顔を高嶺に向け、二人の話に割って入ったのはいつも彼の近くを陣取っている大澤繭子おおさわまゆこだ。

「え〜 だっていつも同じメンバーじゃ自由にメンバー組む意味無いでしょ?それに宮本は歴史結構強いから今回組む相手にはうってつけなんだよ」


笑顔を向け、宮本と組むメリットを伝えてやんわり断ってる。そんな彼の様子を見て、表情こそ変えないが成嶋は内心可笑しくてたまらない。

『高嶺が自分から組むなんて宮本と何かあるのか?』


「じゃあ成嶋くんが代わってよ」

「やだ」


『こっちの方が楽しそうなのに代わる訳ないじゃん…』






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