第5話 名前で呼ばないで!

 うそ! うそ! うそ!

アイツ、今わたしのこと【しまみん】って呼んだよね?!

なんでその名前を知ってるのよ〜?!

恥ずかしくてもう死にそう!


なんだか、自分の秘密を知られて落ち着かない…

学校で暴露されたらどうしよう…

ああぁ…もうおしまいだ…



次の日、わたしは休みたい気持を何とか誤魔化して学校に向かう…


あのチャラい高嶺のことだ。

どうせわたしのことを話のタネにして、はべらせた女の子相手に面白可笑しくバカにしているに決まってる。


これでわたしはクラスメイトから嘲笑の的になるだろう…

もう死んでしまいたい…


わたしは重い気持ちで教室に入ったが、まだ噂は広まっていないらしく別段いつもと変わらない。

高嶺もまだ来てない。


わたしは心臓を口から吐きそうな気分でいると、そのうちガヤガヤと賑やかな声がして高嶺が女の子と一緒に登校して来た。


胃が重い…

背中に変な汗が流れる…

とても高嶺の方を見る勇気は無かった。


処刑台の上で執行を待つ様な気持ちのままその日の授業が進んでいく。

当然今のわたしには授業が身に入ら無い。


昼休みになりトボトボと中庭に行く。

お弁当を広げるも食欲はない。


「わたし…このままずっと怯えながら過ごすのかな…」


わたしが一体何をしたっていうんだ…

【しまみん】と云うハンドルネームで小説を書いたり、カラオケで歌いまくってただけなのに…



「こんなところで食ってんだ」


いきなり男子の声がする。

びっくりして顔を上げると目の前に諸悪の根源とも云う高嶺蒼生かたみねそうやが立っている。


「何のよう?」

わたしは自棄糞やけくそで訊いた。


「そんな顔するなよ。お前とちょっと話がしたかったからさぁ」

相変わらずチャラチャラした物言いだ。


「わたしと話したって面白いことなんてないでしょ」

不貞腐れ気味にそっぽを向いて答えた。


「そんなつれないこと言うなよ〜 お前のハンドルネームをしってるだろ〜」

彼が悪ぶれもせず笑って話す。


「何言ってるのよ! カラオケでのわたしのハンドルネーム盗み見たんでしょう?!

従業員がお客のプライバシー盗むなんて犯罪じゃない!」

腹が立ったわたしは彼に食って掛かった。


「おいおい、よく思い出せよ。お前小説の表紙に題名と名前が書いてあったじゃないか」

わたしの方に両方の手の平を向けて落ち着けと言わんばかりの仕草だ。


「だ…だからって何?! 似合わないハンドルネームを笑いにでも来たの?!」


名前を知られた以上、彼がその気になれば言いふらすのを止める手立ては無い…


「もう落ち着けって、別に笑ったりしねーよ。小説書いてるヤツなんて初めて見たからさ、ちょっと話しがしてみたくなったんだよ」


彼は相変わらずヘラヘラと笑っていて、冗談なのか本当なのか判らない。


「俺たち特別な仲になったし、って呼んでもいいか?」

「絶対嫌!」


突然何を出だすかと思えば…そんな名前で呼ばれた日にはそれこそ周りから何を言われるか判ったもんじゃない!

それに特別な仲ってなによ!

そんな仲になった覚え無いわよ!


「なんだよつまんねぇなぁ…」

「あんたをつまらせるためにいる訳じゃ無いわよ!」


なんたか知らないけどわたしも自棄糞だった。


ってなんだよ…あははは…」

「わ…笑うな…!」


「じゃあ、そのまま名前で志摩な。俺のことも蒼生でいいからさ。時々小説の話し訊かせてくれよ」


どう云う風の吹き回しよ!

それに〈志摩〉って…あんたから名前呼びされたら周りからわたしがどう見られると思ってるのよ! 









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