第三話 状況整理もお手のもの
「リアンももう少しで聖ロマネス学園に入学か……。もし行きたくなくなったらすぐにパパに言うんだよ? 勉強なら今まで通り家庭教師を雇って家でしたっていいんだし」
ルシアスパパ! 会話選びナイス! もう少しで聖ロマネス学園に入学ということは、リアン様は今14歳か15歳。ヒロインの一学年上だから、彼女に出会うまではあと1年半くらいあるってことか。よかった、ヒロインにすでに悪行を働いていたら取り返しがつかなかったけれど、今のタイミングであればまだどうにかなりそう。
「パパありがとう。でも大丈夫よ、とっても楽しみだわ……! パパとなかなか会えなくなってしまうのは寂しいけれど必ずお手紙を書きますね」
聖ロマネス学園は王国の名を冠していることからも分かる通り、ロマネス王国随一の名門校だ。今は由緒正しい家柄の子しか生徒にはなれないのだが、来年にはその制限を緩和し、厳しい入学試験をクリアさえすれば、庶民の出の者でも入学できるようになる。ヒロインは庶民の出だが、この試験を首席で合格し聖ロマネス学園へと入学する。一つ上の学年であるリアン様は、それまでサマエル公爵家の一人娘ということで周りの女生徒は憧れをもって彼女に接し、男子生徒たちも恭しく接する状況に満足していたのだが、ヒロインが入ってきたことにより良くも悪くも学園に新しい風が吹き、リアン様の学園内での立場は危うくなってしまう。そして、リアン様の想い人であるロマネス王国第一王子ミカ様のヒロインへの好感度がある一定を超えるとリアン様のヒロインへの敵意はMAXに。ヒロインに対して様々な嫌がらせを行い、あの手この手でヒロインを学園から追い出そうとする。リアン様の最後としては、大きく分けて5つの可能性がある。
【ミカ王子のヒロインへの好感度が一定に達した場合】
①その上でミカ王子ルートを進むと、生徒たちの面前でリアン様の悪行をヒロインがミカ王子と一緒に告発することに。リアン様は恋に破れるだけでなく退学処分となり、ルシアスパパが抗議をするも、王位を継承することとなったミカ王子はその権力を行使。リアン様の退学処分は覆させず、リアン様はルシアスパパと共に遠くの国へと旅立つのであった。
②その上でミカ王子ルートを進まない場合、リアン様はヒロインに対し勝負を挑む。学力試験や社交界のマナークイズ、ダンス対決と称したリズムゲームなど数々の戦いを繰り広げ、ヒロインが勝った場合はリアン様の学園内での地位はすっかり落ち、みじめな学園生活を送ることに。
③上記の戦いでヒロインが負けた場合、リアン様はミカ王子に告白をする。ミカ王子はリアン様の才能や学力は素晴らしいものだけれど、自分がいなくても幸せになれるはずだと伝え、リアン様を振ってしまう。リアン様はその後シナリオには出てこなくなるが、きっと居心地の悪い学園生活を送ることだろう。
【ミカ王子のヒロインへの好感度が一定に達しない場合】
④他キャラルートを進むと、何だかんだヒロインが気に食わないリアン様はそのキャラクターとの恋仲も邪魔をしようとする。結果的に、当該キャラクターからヒロインいじめをやめるように諭され、通りがかったヒロインとミカ王子に見られてしまい、恥ずかしさのあまり自主退学。
⑤どのキャラの好感度も一定に達せず、さらにパラメーター※も低い場合、リアン様はヒロインを家来のように扱う。これによりパラメーターが上がっていき基本的には①~④のルートに切り替わるのだが、最後まで水準を満たさなかった場合は、学園はリアン様の天下となり、彼女が好き放題する様子でエンドとなる。
※パラメーターとは、学力や魅力などのポイント。会話等で選んだ選択肢によって上下するのだが、定期試験の結果も大いに影響する。ただ、基本的には好感度>パラメーターであり、攻略キャラの好感度を上げさえすればパラメーターはそこまで重要ではない。
……5つとも嫌だ。ヒロインとリアン様親友エンドとか作っておけばよかった……。もう悔いても仕方がない。①なんてルシアスパパにも迷惑をかけるから絶対に嫌だし、③とか、自分で考えたけどひどすぎない? ③ならルシアスパパにチクったら一発で学園が火の海になると思うのだけど、リアン様は誇り高き女性だから皆の前で盛大に振られたなんてパパにも言いたくなかったのだろう。この中では強いて言えば⑤がマシなのかもしれないが、好き放題したいという願望もない。①~④もたかだか学園生活の中での話と言えなくもないけれど、ゲームのシナリオでは学園生活しか描いていないけれどきっとこの世界はその後も続いていく。退学処分だったけれどルシアスパパに守られて幸せに過ごしました☆となる可能性もゼロではないが、むしろルシアスパパも戦争で亡くなり、一人となって後ろ盾もなくなったリアン様はどこかに売り飛ばされ奴隷のような生活を送ることになるのでした……となる可能性も十分ある。ゲームの仕様にどこまで抗えるのかは分からないが、なるべく穏便な学園生活を送って自分の味方を増やしておきたい。それに、聖ロマネス学園は全寮制。ルシアスパパにはあまり会えなくなるのだから、やっぱり友だちがほしい。心の内を誰にも明かせないのは苦しいもの。
「寮が嫌なら家から通ってもいいんだよ? ……でも遠いか、学園を我が家の近くに移すよう理事長に交渉するか……」
さすがルシアスパパ! 溺愛っぷりがすごい。冗談ではなく本当にやりかねないところが恐ろしい。
「いいえパパ! ずっとパパに守られていてはよくないと思うの。私もしっかり自立して、いつかはこの家のお役に立てる立派な人間になりたいですわ」
「――! リアン……! 少し会わないうちに大人になって……。でもリアンは存在しているだけで十二分にこの家の役に立っているんだよ?パパはリアンがいるお蔭でこうして毎日お仕事を頑張れているのだから」
こんなことを言ってくれるひと、転生前の世界にはいなかった……。ルシアスパパ、推せる……。
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