第五章 バレンタイン事変(1)
第五章 バレンタイン事変
2月3日(水) 放課後パトロール
バレンタインの日まで、あと11日。「清子」はバレンタインの日を考えながら「仁雄」や「和子」とともに「雅史」を守る名目でありとあらゆる場所「河川敷」「商店街」「住宅街」「通学路」「駅」、街全体をこれから巡回するところ。「ラファエル」や「ミュゼット」、「源郎」もこの巡回に参加している。大好きな人に仇をなす者を徹底的に取り締まる。
「(清子:)風紀委員会の仕事を手伝ってくれるなんて、さてはわたくしと同じ考えですかね?」
「(ラファエル:)ああ、その通りだ。この体制で雅史を守ろうではないか。」
「(源郎:)毎度言うが、なぜおれまであんちゃんの手伝いせねばならんのか。
「(ラファエル:)頼もしい奴が欲しくてな。この街の衛兵に親分の力が欠かせんからな。」
「(源郎:)おれの力を評価するとは...あんちゃん何者だ?」
「(ラファエル:)ラファエル・アトラス。ニューヨーク州出身で、コンブリオにはかなわない半端者だ。」
「(清子:)ラファエルさん、知人だけでなく源郎さんを引き入れてまでパトロールをより強固にしてるのですかね。」
「(増田:)ともに巡回しているんだ。人員が多いほうが効率よく仕事しやすい。」
「(和子:)いつでもお供にしますよ、委員長さん。」
「(ミュゼット:)私は私の意思で清子の仕事に付きあってるのよ。ラファエルに振り回される試験落ちの親分とは違ってね。」
「(源郎:)だっ!?」
「(ラファエル:)そういうことだ、毎度俺たちの力になれ。」
「(源郎:)...わーった。おまえらのためにつくす。...疑問に思うがおれの子分を誘わないのはなぜだ?」
「(ラファエル:)戦力にならん奴は除外対象だ。わかってくれ。」
「(源郎:)...許せ文太。あんちゃんの言う通りだ、スルーされて当然だ...。」
「(清子:)お話はこのへんにして、巡回していきましょう。徹底的に取り締まってやりますわ。...チョコのレシピを考えとこ。」
巡回するべく動き出す一同。それと同時にバレンタインの話をする。歩きながら...。
「(ラファエル:)その日は
「(清子:)そういえば、ラファエルさんの出身地では女に花束を贈る習慣でしたの。」
「(ミュゼット:)そりゃそう、国によって違うってことだよ清子。...受け取ったことないけどね。」
「(和子:)わたしだって委員長の為にチョコ作りますよ!!」
「(ミュゼット:)おお!?私達女子3人がガールズトークしてる??でも私に彼氏なんていないし...チョコを作るにしても...ま、深く考えないでおくよ。雅史にチョコをあげよっかな?」
「(和子:)ちょっと!!料理が壊滅的なのは見え見えですよミュゼットさん!!家庭科の調理実習で膨張したパンケーキを作るつもりがお好み焼きモドキに錬成したじゃないですか!!あれはもうひどかったですよ...。」
「(清子:)...前の学校時代でよく聞く話ですが、ミュゼットさんの腕で本当にチョコ作れますの?」
「(ミュゼット:)下手でも作れるって!!ジャイアンじゃあるまい。イアンだけに。」
「(ラファエル:)...くだらぬギャグを。」
「(清子:)そうして皆さんとお話していると楽しいですわ。皆さん、しりとりしましょう。まずはわたくしからいきます。しりとり。」
「(和子:)りんご。」
「(ミュゼット:)ゴリラ。」
「(ラファエル:)ラーメン。」
「(清子:)...ラファエルさん、ンがついてますの。それとも、Nに置き換えるおつもりで?」
「(ミュゼット:)寒ぅ...。あまりにも寒いギャグ。」
「(ラファエル:)気にしなくていい!!風紀委員長、Nから始まる単語を。」
「(増田:)...Narration.」
「(清子:)...結局、ンで終わってますの。」
「(ミュゼット:)遊んでいるところ悪いんだけど私たち、同じ場所をグルグルまわってない?」
「(清子:)言われてみれば、そうみたいですの。...?」
違和感の正体にいち早く気づいたようだ。
「(清子:)どうりでおかしいと思いましたわ。おそらく、敵の能力ですの。」
「(ラファエル:)俺も同意見だ。君達、気を引き締めてかかれ。」
「(ミュゼット:)そらやっぱり...。どうにかしてループから抜け出さないとね。」
6度目の非日常、この章からずっと相次ぐであろう大事件の前兆。大事件とは何なのかは、来月で判明する。この狂ったループ脱出作戦は今、始まらんとする!!
【Phase-1】
「清子」達の現在地は住宅街。今の状況では第三者の能力によって閉じ込められたループ空間。河川敷に向かおうにも、犯人をなんとかしない限り、抜け出すのは難しい。2つのチーム「ラファエル班」「仁雄班」に分けて敵将を探すことになった。
「(ラファエル:)ミュゼットと親分よ、俺達を閉じ込めた奴を探し出すんだ。」
「(ミュゼット:)あのね、探すぞと行き当たりばったりじゃ見つけられないよ。」
「(源郎:)やれやれ、全部まわってきたのによ...。」
「(増田:)うちの可愛い清子と和子よ、とりあえず公園に行こうか。」
「(清子:)さすがはわたくしの風紀委員長。公園で見落としているところがあるとか、いい判断ですの。」
「(和子:)さすがです委員長さん!!」
公園の周囲をくまなく調べてみる風紀委員会3人。ブランコか滑り台か、ベンチの下か。答えは、低木の中に隠れていた。敵将?の能力「無限ループ空間」は文字通りの意味で半径50mの範囲内の人を閉じ込めるものである。
「(増田:)一見すると、変質者に見えなくもない。即時確保するに越したことはない。」
「(清子:)そうですね。わたくし、ラファエルさんに報せておきます。」
「清子」は「ラファエル」を呼ぶべく飛び出て、「仁雄」は敵将の身柄を確保するだけ、簡易な終わり方に見えた。
「(清子:)ラファエルさん!!犯人を確保しました...?この人は誰ですの?」
「(ラファエル:)ああ、道端で寝ているのを見かけたんで。」
「(ミュゼット:)かわいそうに...私達、ずっとこのままかな...。」
「(源郎:)...そんなんじゃねぇ。この違和感、おまえらは何も感じねぇか?」
「(ラファエル:)...?」
実は敵将の手のひらであり、罠だった。両者を確保したとしても、閉鎖空間が解かれることはない。
一方「雅史」サイドではいつも通り、河川敷で幼馴染とともにサッカーをしていた。もちろん「ハンナ」もついている。
「(雅史:)こうして3人で遊ぶのは久々だね。小6以来かな。ミュゼットとは中1の頃からこの河川敷で知り合って一緒に遊んでたし。...それに清子は最近、僕達とは遊ばなくなったし...どうしたのかな...。」
「(健太:)おかっぱ風紀委員は杏璃ちゃんにひどいことをしたせいで、合わせる顔がないに決まってるよ。」
「(雅史:)まさか。清子は辛口風紀委員だからといって、それはありえないでしょ。」
「(健太:)...雅史には杏璃ちゃんがいるでしょ!!僕個人として好きなのに...僕のような他の男には見向きもしないし、雅史しか見てない杏璃ちゃんはどれだけヒッシなのか...。おかっぱ風紀委員が来てからおかしくなったんだぞ?傲慢先輩とおかっぱ風紀委員ばっかり、僕と杏璃ちゃんを置いていくほど離ればなれになるかのように...。」
「(雅史:)健太の言うことはわかるよ。目立った活躍はなくて悔しいと。うん、大活躍したいもんね。杏璃、そろそろ時間なので住宅街に帰ろう。」
一切のセリフなしに慣れてるせいか「杏璃」の反応は鈍いようだ。
「(健太:)...杏璃ちゃん?」
「(杏璃:)あ、はい。帰りましょう。」
「(雅史:)セリフがないからといって無反応とはどうしたのよ、もう。拗ねてるの?」
「(健太:)いくら幼馴染とはいえ、今の発言はどうよ?」
「(雅史:)やばっ、つい思ったことを口にしてしまった。わざとじゃないのよ。ごめん、大丈夫?」
「(杏璃:)...気にしないでください。あたしは大丈夫です。」
日が暮れているので遊びはここまでにして、家路につく一同であった。住宅街に到着した「雅史」達の目前に不審者が2人いた。2人は何かをしているようだが...。
「(雅史:)...知らない人は清子達がやってくれるようだし、スルーしても問題ないない。さ、帰ろう。」
「(ハンナ:)雅史くんと2人は先に帰って。」
「(雅史:)姐さん?」
「(杏璃:)じゃあ、あたしが残ります。」
「(ハンナ:)だめ。最近世の中物騒だから自宅にいて。」
「(杏璃:)どうせあたしをお荷物にするつもりでしょうがそうはいきません!!勝手ながらここに残ります!!」
「(健太:)あ、杏璃ちゃん...。激高してどうしたんだ...。」
「(雅史:)...杏璃...最近元気ないと思ったけど、らしくないくらいいきり立つとは驚いた。姐さん、ごめん。僕は杏璃の気持ちを尊重して一緒についていくよ。」
「(ハンナ:)...私の後ろに隠れて。力技でいくか、オカリナを強く吹き倍音を鳴らすか。いずれも私の流儀に反する行為だけどやるしかない。杏璃さん、手伝って。押さえるだけでいいから。」
「(杏璃:)...わかりました。」
「(ハンナ:)既に気づかれているので迅速にお願い。さぁ。」
「サッカー部」一同に気づく不審者2人。「杏璃」は真っ先に動き、片方の身柄を押さえる。「ハンナ」は力技でもう片方を投げ飛ばす。とどめはオカリナで倍音を鳴らし、双方を悶絶させる。するとどちらかの能力らしきものが解かれて、能力で閉じ込められた6人の姿が確認される。
「(ラファエル:)な!?俺達は外側の奴の手のひらに弄ばされたというのか...。道端で寝ていた人形も低木の中に隠れていた人形も全部奴が仕掛けたものだというのか!?」
「(ハンナ:)そう、人の目を欺くのに欠かせない人形を作ったのは杏璃さんが押さえた女子。私が押さえた男子こそが犯人よ。2人とも私の学校の黄組だけど。」
「(ラファエル:)...なぜ俺達を閉じ込めるような真似をするのか、説明しろ!!」
「(黄組の男子:)日給1万円の金額がもらえるというパートがあって、僕はただ、その仕事をしただけよ。」
「(黄組の女子:)金に困ってる相方が放っておけなくて仕方なくやっただけさ。依頼主のことはわからないわ。」
「(清子:)いわゆる裏パート(裏バイト)ってことかしら。知らない人に騙されていることを知らずに...その得体の知れない仕事は立派な犯罪ですの。おわかりで?」
「(ラファエル:)...例の商人に類似した事件か。カネのために俺達を陥るような真似は許されるものではない。この件は学校と家族に話す、次の日に教師の指導を受けなさい。」
「(ハンナ:)私が連絡する。とはいえ、電話帳は学校だけだけど。2人は帰ってもいい。雅史くんも。」
「(雅史:)あ、うん。」
「(黄組の男子:)申し訳ない赤組のハンナ。」
「(黄組の女子:)バレンタインデー、迎えるといいね。」
「黄組の2人」、「雅史」と幼馴染はこの場から退場する。
「(ハンナ:)では本題に入る。あの2人は明らかにラファエルくんと清子さんを封じ込めるつもりだった。心当たりはないの?」
「(ミュゼット:)異議あり。なんで私まで巻き込まれなぁならんのよ、そんなのあり?私だって被害者なのよ。」
「(源郎:)あのやろう、おれたちを巻き添えにしおって...。」
「(増田:)...俺にはわからん。だがひとつ言えることは、昨月から異様な事件が相次いでることだ。さすがはラファエルが懸念していたことか。」
「(和子:)い、委員長さん?何の話をしているんです?」
「(ミュゼット:)こっちだって理解を求めてるから。」
「(清子:)...ラファエルさんとわたくしどころか周囲の人々を巻き込むというのは理解に苦しみますの。」
「(ラファエル:)...ああ、その通りかもな。コンブリオとの意見交換でわかった。彼の言うジャパンにおける異様な事件とはそういうものだなって。」
「(ハンナ:)...いい?最近相次いでいる異様な事件は警察が対処する。学校の生徒のあなたたちには荷が重い。」
「(清子:)法的措置...つまり最終手段ですか。確かにハンナさんの言う通りですの。今日の巡回はここまでにしますわ。」
「(ラファエル:)法的措置を取らせて対処できるものではない、コンブリオの言うことは正論だ。ジャパンの警察はあてにならん!!俺は巡回を継続する。帰りたい奴は帰ってもいい。」
「(ミュゼット:)雪郎雪郎って...。ま、その時はね...。」
「(清子:)ラファエルさん1人で人々の日常をお守りくださいませ。」
「(増田:)ああ、ハンナの言う通りだわ。雪郎だろうがコンブリオだろうが存じ上げないので俺は帰る。」
「(和子:)疲れました、私はこれでターンエンドです。」
「(源郎:)あんちゃん、おれの力を貸してほしいならいつでもな。」
立て続けて5人は帰宅していく。残った2人はお互い異なる考えを示しながらそれぞれ1日の終わりを迎える。「ラファエル」は「アレグロ雪郎」の考えは絶対という理由で20時まで巡回を継続。「ハンナ」は警察に何度も相談するという方針。見ての通り、お互いの考え方、方向性が全く違うのであった。次回はバレンタインデー前日。女性陣が作るチョコは何だろうかね?
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