第3話日常その二


午前の授業が終わり、私は席を立ち、空原の席の前に立つ。


「空原。学食食べに行こう」


私は空原を誘う。もちろん、奢らせるために。


「いいぜ」


空原は笑いながら承諾し、席を立ち、私と食堂に向かう。


食堂に着き、私と空原は券売機の列に並び、私たちの番がくる。


「で、何たのむ?」


空原が私に質問する。


「これ」


私はたのみたい料理の券のボタンを指さす。


「げ!?・・・・・・これは」


私が指したボタンを見ると空原は顔を青ざめる。


私が奢らせてもらおうと思っている料理は浜名湖の鰻を使った、一流のうなぎ職人が作るうな重。


理事長が「うなぎの素晴らしさを知ってもらいたい」という理由である。


値段は何と7800円。


「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。わかったよ」


空原は長い長い溜息をつくと、券売機に万札を入れ、うな重の券を買い、私に券を渡す。


「あはは。ゴチになります」


私はたからかに笑い、空原に券を受け取った。


空原は自分の料理の券も買い、注文口に向かう。


「お願いします」


「はぁいぃい!?」


空原が食堂のおばちゃんに券を渡すと、雷に撃たれた様に驚いた。


それはそうだ。入学してから毎日この食堂を利用しているけど、うな重を頼んでいる人を見たことがない。


「そ、空原くん」


「ん、何ですか?」


「私はここに勤務して、20年経つけど。」


「うな重頼んでいる人初めてだよ」


おばちゃんは神妙な顔で言う。


「は、はは。でしょうね」


空原は半笑いし、券を渡し私たちは受取口の近くで待つ。


「お待たせ。とんかつ定食、高級うな重お待ち。」


おばちゃんは笑顔で料理を受取口に置いた。


「ありがとうおばちゃん」


「ありがとうございます」


私たちはすぐに受取口に行き、料理を持ち、空いているテーブルに座る。


「「いただきます」」


私と空原はそう言うと、私は一口食べる。


「!!!!!」


食べた瞬間、うなぎの旨味が広がり、私の箸が止まらくなる。


「おいしい!!」


私は無意識に言う。


「そうか。そりゃあ良かった」


空原は笑っていたが、どう見ても苛立っている。


「なにより・・・」


私は箸を止めて言う


「なにより?」


「奢ってもらったご飯だからすごくおいしい」


満面の笑みで私は言う。


「ぶん殴るぞ」


空原の笑顔が怒り顔に変わる。


「その時はもう課題見せないから」


「ごめんなさい。」


空原は頭を下げる


「よろしい」


私はいやらしい顔で言う。


「はぁ~俺のバイト代が~」


空原はうつむく。


「そういえば、バイトしてるんだっけ?」


私は空原に質問する。


「あぁうん」


空原は頭を上げる。


「バイトていうか、義兄さんの手伝いで」


「へぇー、何を手伝っているの?」


「ひ・み・つ」


空原がおねえ口調で言う。


「きも」


私は蔑んだ目で言う。


「ひどい」


空原は涙目で言う。


「いや、マジできも・・」


「幸田さんちょっといい?」


「うん?」


聞き覚えがない声が私を呼んだので私は声が聞こえた方向に向く。


そこには、知らない人がいた。高身長のイケメンだ。


「えっと・・・誰ですか?」


「3年B組の水町だ。少し用がある。今日の放課後、体育館裏に来てくれないか?」


水町と名乗る先輩は鼻につく言い方で言う。


「え、えぇーわかりました。いいですよ」


私は苛立ちを隠し、笑顔で言う。


「ありがとう。それじゃ放課後よろしく。」


そう言うと、水町先輩は去った。


「相変わずモテモテだね」


空原がニヤニヤしながら言う。


「あの人、この学校一番のイケメンだぞ。」


「へぇー」


私は他人事のように聞く。


「『へぇー』て、何を他人事の様に聞く。お前、これからあの人に告白されるんだぞ」


空原は呆れた様子で聞く。


「だって・・・・・興味ないもん」


私は思ったままに言う。


「はぁー・・・・さすが、学校随一の美少女で、学年1位の幸田新渚にとっては眼中にないてか」


「うん、ない」


私はそう言うと、またうなぎを食べ進める。

              ┃

              ┃

              ┃

              ┃

              ┃

              ┃


放課後、私が体育館裏で待っていると、水町先輩が来た。


「すまん、待たせた」


「いえいえ、さっききたばかりですから。で用とは何ですか?」


私は丁寧に言う。


「あぁ・・・・そうだね」


水町先輩は笑顔で言う。


「幸田さん・・・・・・・君に一目惚れした。好きです付き合ってください」


水町先輩は自信満々に告白する。


「ごめんなさい。」


私は、即,断った。


「・・・・・え」


水町先輩はとても驚いた顔する。


「えっと・・・・理由を聞いても?」


「今日知り合った人だから」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


水町先輩は放心状態になる。


「それじゃ・・・・・・私帰ります」


私はその場を去り、正門に向かう。


「お~~い新渚」


私を呼んだ声が聞こえたので声が聞こえた方向に向くと、斬島、保治、七風、弁田、志透がいた。


「一緒に帰ろう」


斬島が誘う。


「・・・・・・うん」


私は五人といつもの路地裏に行く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る