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回文短歌風(果ては何処まで行くのやら。450まで)五十首詠 401-450


01(401)

 無派の死を 無しと身高の 飛び火浴び 人の形見と 姿を忍ばむ

 むはのしを なしとみだかの とひひあ(び ひとのかたみと しなをしのばむ)


02

 奇跡の手 憑かれて民は 祈祷乞う 時は乱れて 且つての軌跡

 きせきのて つかてれたみは きとうこ(う ときはみだれて かつてのきせき)


03

 木揺らしの 埴の鳥屋斑 妻も我も 奉らむ宿の 庭の白雪

 きゆらしの はにのとやむら つまもわ(も まつらむやとの にはのしらゆき)


04

 長き蔓 鳥屋と破柵は 事欠くか 床は草葉と 宿る月かな

 ながきつる とやとはさくは ことかく(か とこはくさはと やどるつきかな)


05

 梁高し 醸むる夏田菜 旧都跡 浮名立つなる 昔語りは

 はりたかし かむるなつたな きうとあ(と うきなたつなる むかしかたりは)


06

 白墓は 蜷の閉ざしに 嫠婦印し 古りにし里の 何は変はらじ

 しらはかは になのとざしに りふしる(し ふりにしさとの なにはかはらし)


07

 深雪降る 春日の山の 桜原 草の間矢篦か 縋る不軌弓

 みゆきふる かすがのやまの さくらは(ら くさのまやのか すがるふきゆみ)


08

 草枯れて 苦果に外様や 問ふ薺 ふと山里に 隠れてか咲く

 くさかれて くかにとざまや とふなづ(な ふとやまざとに かくれてかさく)


09

 失楽は 老けて怪我にて 十一鞭 糸手にかけて 今日は暮らしつ

 しつらくは ふけてけがにて といちむ(ち いとてにかけて けふはくらしつ)


10

 流れつつ 水も知らへし ことの音の 今年減らしも 罪綴れかな

 ながれつつ みづもしらへし ことのね(の ことしへらしも つみつづれかな)


11

 豊国の 鏡の山に 岩戸跡 灰に魔夜の身 かかの肉よと

 とよくにの かがみのやまに いはとあ(と はいにまやのみ かかのにくよと)


12

 常に 通ひし君が 番ひ合ひ 勝つ神来し日 余暇に再従姉妹と

 とことばに かよひしきみが つがひあ(ひ かつかみきしひ よかにはとこと)


13

 三十の死か 山の桜は 散り濡れぬ 律は楽座の まやかし望み

 みそのしか やまのさくらは ちりぬれぬ りちはらくざの まやかしのぞみ)


14

 誰がの東風 拭くに先立つ 従者の手の 指す蔦先に 喰う稚児の形

 たがのこち ふくにさきだつ ずさのて(の さすつたさきに くふちごのかた)


15

 地味の罪 世深く泣きつ 睨む一日 胸突き泣くか 不予三つの道

 ぢみのつみ よふかくなきつ ねむひと(ひ むねつきなくか ふよみつのみち)


16

 名は残し 手名付け諫め 為終える画 惜しめ歳月 撫子の花

 なはのこし てなづけいさめ しおえる(え おしめさいげつ なでしこのはな)


17

 岸中の 夕闇なるを 名は知らじ 花折る波や 冬の悲しき

 きしなかの ゆふやみなるを なはしら(じ はなをるなみや ふゆのかなしき)


18

 皆も酔ひ 立ちて身にこし 馬乗りの 申し子に御手 千度会も波

 みなもゑひ たちてみにこし うまのり(の まうしこにみて ちたびゑもなみ)


19

 皆に夏 もどく鍛冶らは 妻問ふと 松原近く 艫綱に波

 みなになつ もどくかぢらは つまどふ(と まつばらちかく ともづなになみ)


20

 鹿は見る 草野ら寒く 深き秋 傾く武者らの 下ぐる御佩刀

 しかはみる くさのらさむく ふかきあ(き かぶくむさらの さぐるみはかし)


21

 御代黒し 曇りなき世の 月晴れは 吉の世奇なり 黙示録読み

 みよくろし くもりなきよの つきばれ(は きつのよきなり もくしろくよみ)


22

 祝い咲く 小梅陽の児か 律動と 釣駕籠の姫 動く幸い

 いわいさく こうめひのこか りつどう(と つりかごのひめ うごくさいわい)


23

 遠ざかる 傷に麻痺の日 今朝見た身 叫びの暇に 過ぎる風音

 とおざかる きずにまひのひ けさみた(み さけひのひまに すぎるかざおと)


24

 夕探る 雪解けの梅 入れ馳すは 霊妙の卦と 消える草冬

 ゆふさぐる ゆきどけのうめ いれはす(は れいめうのけと きゆるぐさふゆ)


25

 群弓と 煙絶えにし 塩釜に 墓誌死に得たり 武家と見ゆらむ

 むらゆみと けぶりたえにし しほがま(か ぼししにえたり ぶけとみゆらむ)


26

 片敷くか 菊の露にや 残りたり この野に斎つの 釘隠したか

 かたしくか きくのつゆにや のこりた(り このやにゆつの くぎかくしたか)


  ※ ゆ‐つ【▽斎つ】

     [補説]一説に「いほつ(五百箇)」の音変化で、数の多い意とも。


27

 太敷くか 菊の露にや 残りたり この野に斎つの 釘隠し問ふ

 ふとしくか きくのつゆにや のこりた(り このやにゆつの くぎかくしとふ)


28

 死なれつ死 羅睺も喚くか 芙蓉葬 夜深く目をも 凝らしつれなし

 しなれつし らごもをめくか ふようそ(う よふかくめをも こらしつれなし)

 

 ※ らご【羅睺】

    《(梵)Rāhuの音写》日・月の光を覆って日食・月食を起こすとされた阿修羅。羅睺阿修羅王。


29

 伝え頬 夜深く目をも 凝らす疵 羅睺も喚くか 不予覚え断つ

 つたえほお よふかくめをも こらすき(ず らごもをめくか ふよおぼえたつ)


30

 偽外郎 夜深く目をも 凝らす疵 羅睺も喚くか 撫養雷雨忌

 ぎういらう よふかくめをも こらすき(ず らごもをめくか ぶようらいうき)


31

 朴柏 鷺の鳶跳ぬ 端も辺も 耐えぬは人の 階かとも

 もとかしは さぎのとびはぬ へたもへ(も たへぬはひとの きさはしかとも)


32

 月影の 澄み渡るかな 天の端の 真穴刈る撓 水野家の吉

 つきかけの すみわたるかな あまのは(の まあなかるたわ みずのけのきつ)


  ※ たわ【×撓】 [名]

    1 山の尾根のくぼんで低くなった所。山の鞍部 (あんぶ) 。たおり。

    2 枕などに押されてついた髪の癖。


33

 春の鳶 浸り姉ふと 示す鈴 飯と船あり 旅人乗るは

 はるのとび ひたりあねふと しめすす(ず めしとふねあり たびびとのるは)


34

 子の日して 齢が伸ぶる 船の夜の 嬲る負の下婢 端世で慈悲の音

 ねのひして よはひがのぶる ふなのよ(の なぶるふのかひ はよでじひのね)


  ※ か‐ひ【下婢】召使いの女。下女。はしため。

    か‐び【加被】神仏が力を貸して守ってくれること。加護。


35

 目立たしい 背黄青鸚哥(セキセイインコ) 鬱金印 「合コンいいぜ!」 帰省したため

 めだたしい せきせいいんこ うこんい(ん ごうこんいいぜ きせいしたため)


36

 人も惜し 人妬みをり あぢきなき 千益を御種 問ひしをも問ひ

 ひともをし ひとねたみをり あぢきな(き ちありをみたね とひしをもとひ)


37

 浮図に書に 花の都の 雅致微か 誓の児闇の 名は女子に問ひ

 ふとにしょに はなのみやこの かぢかす(か ちかのこやみの なはにょしにとふ)


38

 人の世に 妬む落差や 菜葉の根の 花や咲くらむ 種に世の問ひ

 ひとのよに ねたむらくさや なばのね(の はなやさくらむ たねによのとひ)


  ※ 那覇の端の(なはのは(の) 縄の値の(なはのね(の)


39

 師とこの辺 蛙の声に 怪異の気の 池に飢児の図 葉替への如し

 しとこのへ かはつのこゑに けいのけ(の いけにゑこのづ はがへのごとし)


40

 酔ふ杯で 紫深き 局見ね 発起歌舞伎座 ラムで祝ふ会

 ゑふはいで むらさきふかき つぼねみ(ね ほっきかぶきざ らむでいはふゑ)


41

 躑躅らし 咲ける盛りは 風月満つ 今日貼り飾る 今朝知らしつつ

 つつじらし さけるさかりは ふげつみ(つ けふはりかざる けさしらしつつ)


42

 稚の入る間 爺は問ひぬか 雛に児に 靡かぬ人は 縮まる命

 ちのいるま じじはとひぬか ひなにこ(に なびかぬひとは しじまるいのち)


43

 旅立つか かなりの巨利と 揉めてきて メモと旅記載り 長かった日だ

 たびだつか かなりのきょりと もめてき(て めもとりょきのり ながかったひだ)


44

 旅立つか かなりの距離と 末の世の 絵図と旅記載り 長かった日だ

 たびだつか かなりのきょりと すえのよ(の えずとりょきのり ながかったひだ)


45

 立ち凌ぎ タカ派とヤクザ 名は知らじ 花咲く宿は 堅気の死地だ

 たちしのぎ たかはとやくざ なはしら(じ はなさくやとは かたぎのしちだ)


46

 雪解けは 真魚の祝いに 香示し 酒煮祝いの ナマハゲと消ゆ

 ゆきどけは まなのいわいに かざしめ(し さかにいわいの なまはげときゆ)


47

 私生活 背黄青鸚哥(セキセイインコ) 追行後 「一献いいぜ!」 季節介せし

 しせいかつ せきせいいんこ ついこう(ご いっこんいいぜ きせつかいせし)


48

 百の児も 手を折り笠の 菜葉の卦の 花の盛りを 彼面此面も

 もものこも てををりかさの なはのけ(の はなのさかりを をてもこのもも)


49

 折る目端 日を折り傘の 瑠は嫁資か 花の盛りを をかしばめるを

 をるめはし かををりかさの るはかし(か はなのさかりを をかしばめるを)


50(450)

 百の児も 手を折り笠の 縷は花糸か 春の盛りを 彼面此面も

 もものこも てををりかさの るはかし(か はるのさかりを をてもこのもも)

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