第52話

今回の体験会の反省すべき点は一つだけだと言ってもいいと思う。

罠が思っていたよりも効果的だったために調子に乗った。これだ。

実際、本来は群れるはずのラットを単体でしか登場させなかったし、罠と罠の組み合わせも使わなかった。調子に乗った結果、罠と魔物の組み合わせが少しだけど確認できたのは良かったことだけど、体験会なのに危険度が跳ね上がったという点が反省点。

お父様にはお兄様を危険にさらしたということで軽くにらまれてしまったし、お母様からもさすがにお小言をいただいてしまったので、この点は全員にしっかり謝罪した。

さすがにね、わたしが安全だ安全だと言っていても、本当のところは誰にもわからないわけで、ごめんなさい。


まあその点はしっかり反省したのでとりあえず置いておいて、結論として地下1階の構成はこんな感じでいいだろうということになった。

罠が効果的、魔物は弱いけれど、罠のこともあって適度な緊張感を絶えずもたせられる、そして宝箱の存在が思いのほか楽しいと。

最終的にはカギと罠に関する講座とかをギルドにやってほしいわね。そんな仕組みがあるのかどうかは知らないけれど検討課題としておく。

魔物もノーマルなセラータラットは回避を優先、大きくて気性の荒いセラータジャイアントラットは積極的に攻撃してくるという設定に変更。そして出現する位置も数もランダムにする。ジャイアントは少なめにね。

そしてそして、レアポップとして全身白色の毛並みの綺麗なセラータファンシーラットを導入。攻撃性は無しで、出会うととにかく逃げる。毛皮として優秀だと思うので、魔石を取って終わりではなくて、毛皮を確保するといいんじゃないかなという妄想。

宝箱の中身も体力回復用低級薬を基本に、同じくらいの価格の宝石とかアクセサリとか剣とか盾とか出るように。金額とかいろいろと考えなければならないことがあるけれど、水準は階ごとにおおよそ揃うようにしていきたい。

こんな感じかな。さすがに1階だからね、そんなに複雑にしても初心者がこなすには難しいレベルになってしまう。

徐々に上げていきましょう、徐々にね。


続いて2階以降を作成。マップはもう考えてあったからそれを元に3号ちゃんにサクッと作ってもらった。問題はここからだからね。

地下2階、魔物にセラータバットを追加。飛び回って、かみつくよ。ラットが下、バットが上担当だね。同時に出現すると上と下を同時に見なければならないから大変だよ。しかも攻撃を受けるとまれに硬直の状態異常が発生するよ。それに群れることもあるからね、弱いけれど強いね。さらに数は少ないけれどジャイアントバットも現れるよ。

罠としては一方通行の扉と隠し扉を追加。その先に宝箱を置くからね、欲しければ進むしかない。そして少し特殊なエリアも作るつもり。演出重視で通常のエリアとは雰囲気を変えて、配置する魔物も変わったものにするし、このエリアだけは難易度を高く設定するするよ。

宝箱も1つには罠を付ける。まあいきなりダメージ罠は問題がありそうなので、軽めの睡眠にしておくかも。でも気が変わって弱めのダメージ罠にするかも。どちらにしても、もらったところでどうにでもできるレベルでしょう。

宝箱の中身もちょっとだけ良くするよ。まあ100円だったものが200円になるような感じだけどね。


地下3階。魔物にセラータスネーク追加。毒持ちだね。たまーに大きさ違いとか種類違いのスネーク、ついでに大物ってことで特別大きなのとか出てきてなかなか怖いよ。特別大きなのはさすがに強いしね。

ほかにも水浸しのエリアを用意して、そこでジャイアントフロッグ、ジャイアントトードが登場。攻撃で毒付与とかではなく、もっと直接的に毒を吐くよ。そして長い舌で拘束もしてくるよ。複数出てきて拘束されて毒を吐かれるとか最悪だね。

罠にも毒矢とか毒ガスとかを追加。全体的に毒ベースっぽくしてみたよ。

この階は複数の種類の魔物の系統を用意していて、それぞれのエリアで特徴とかを考えてみた。ついでに下り階段も複数箇所用意したので3階と4階がセットの複数エリア構成になるのかな。

ついでに5階、6階に用意したイベントの仕込みも開始。それ用のエリアだね。こっちはメッセージを使った冒険者の思考の誘導を試みる。この先でびっくりして欲しいから。


地下4階。ついに人型の魔物、ゴブリンが登場。ノーマルなゴブリンなので弱いけれど、数が多いよ。裸は無し、全員腰蓑は装備させた。あれは悲しい出来事だったね。

武器持ちのウォリアーとかアーチャーも混ぜる予定。ノーマルのゴブリンよりほんの少し体力のあるワーカーも出てくる。それらが混在した形で群れて、そして何よりそれぞれが考えて動くからね。搭載されているAIのレベルが急に上がる感じかな。動物系とかよりもずっと思考行動が複雑になって、集団で出てきたら初心者には厳しい相手になるかもしれないよ。まあそんなこと言ってもノーマルのゴブリンは1対1体なら子供でも倒せるくらいに弱いんだけどね。

さらに一カ所だけダークゾーンを設定。明かりが通らないから手探りになるのに魔物がいるとかいう極悪設定。さすがにまだ序盤のうちからそこまで危険にはできないので罠は無し。出てくる魔物もこういうところにいても違和感のない弱い魔物ってことでバットだけ。人からすれば何も見えないのに戦うしかない状況、怖いね。

バット以外の魔物は侵入してこないから、その点は安心してほしい。だってバットとほかに地上を移動するタイプが混ざってしまったら、初心者では対処できないと思うのよ。ダークゾーンだよ、ランタンの明かりもライトの魔法も効果が無いんだよ。そんなところで複雑な戦闘は無理だよ。

この階は3階とセットで複数のエリア、複数の階段で区分された形を取っているから自分なりの攻略方法、攻略ルートを考えると良いと思うよ。


地下5階。魔物としてはゴブリンが主体かなと思っているのだけれど、準人型っていうことでここからは悪魔っぽいものを混ぜていく。今後重要な役回りというか配置に必要になってくるのでね。そうはいっても最下級のを想定しているからまだまだ雑魚だと思う。

それ以外にはジャイアントスパイダーを追加。蜘蛛の糸っていう行動阻害系のスキルと、毒と睡眠を使ってくるよ。この階では大きな群れは作っていないことが救いだね。

階段室の手前辺りに中ボスの部屋を作るよ。通路から大きな部屋が見えて、そこに隊列を組んだゴブリンがいるのが見える、そんな雰囲気で。戦わなくても6階には行けるけれど、その先のことを考えるのなら戦うしかないのよね。

中ボスにはゴブリンパーティーを予定。ウォリアー2、アーチャー1、メイジ1に、これぞボスということでホブゴブリンを置いてみようかなと考えている。ここでようやくメイジが登場するね。使える魔法にはもちろん制限をかけるし使用可能な数も少ないけれど、そこは魔法だからね。攻撃系、行動阻害系、状態異常系、一通り揃っているよ。これに上手に対処できなければゴブリンなんてと言いながらも一方的に負けてしまうと思う。

ここは宝箱も少し良いものを出すつもり。ボスだからね、頑張ったご褒美だよ。

ところで倒された中ボスの復活はどう設定しようか。10時間ごととか、長いか、3時間くらい?要検討だね。


ここまでは通路もそこまで複雑な構造にしすぎないように配慮してみた。まあところどころに演出重視のエリアも盛り込んだけれど許してほしい。ダークゾーンは試しの1カ所投入。誰も入ってくれないようなら何か考えないといけないね。

それから物理的な罠も少なくしたし、凶悪なものは使わないように配慮。ダメージは小さくね、小さく。でも冒険者の行動を制限したりとか、ちょっと捻るタイプは使っていきたいからね。うまく組み合わせていくよ。扉とか宝箱の罠も5階くらいからは多用しようかなと思っている。通路の罠だけだと緊張感が足りなさそうだからね。

それ以外にも魔物の種類は少なめにしてこのダンジョンでの魔物との戦闘に慣れてもらうようにして、複数種の魔物と同時に戦闘になるようなケースは少なくなるように調整して、乱入も発生しないようにして、と細かく調整。この段階から厳しいと思われないように気をつけていくよ。

カギ開けは少なくして扉や宝箱を開ける楽しみを知ってもらう。

本格的な謎解きもなし。そういうのはたぶん初心者には無理。

少しずつ状態異常を受ける状況を作っていって、回復手段の重要性とか、そもそもそういうものをもらわないようにするのにはどうすれば良いのかとか考えて欲しい。

さらに5階の中ボスで、行動パターンが複雑な集団対集団の戦闘を経験してもらって、初心者を脱出するというところまでを体験してほしい。

素材の価値が今ひとつな魔物しか登場しないので、そこは宝箱の中身を予想されるよりも良いものにして対応したいと思う。

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