未だ知らない恋をする

ねおらいと

第1話 桜


僕らはまだ知らない。


こんなにも心臓がドキドキするなんて。


こんなにも君のことでいっぱいになるなんて。


こんなにもみたいになるなんて……




◇◆◇◆◇




「今日は、4月10日。新生活が始まる人もいるのではないしょうか?

 春の陽気が強まる一日となるでしょう。続いて、桜の開花予想です。

 都心では……」


リビングのテレビからは、桜の開花を告げるアナウンサーの声がしていた。

今日は、始業式。午前授業だ。クラス発表もあるけど、特に何も思わない。

あっという間に過ぎ去ってしまったような気がする高校一年生が終わりを迎え、

今日から高校二年生だ。ほんの少しの優越感と新しい環境への不安の入り混じる不思議な気分だ。


「悠飛!早く支度しなさい、学校、遅れるわよ!」


「はいはい、今出るよ」


「お母さん、もう行くからね!

 今日も遅くなるから、冷蔵庫にあるやつチンして食べてね」


「はーい。いってらっしゃいー」


バタンと家の玄関が閉まると、都会の朝の喧騒が少し遠のいたような気がした。


「行くか…」


ガチャ。

鍵を閉めると、春の暖かな太陽の光が、隣のマンションの隙間から差し込んできた。






◇◆◇◆◇






都立桜明とりつおうめい高校。

僕が通っている高校だ。

とにかく自由な高校。青春が詰まってる高校なのかな?

僕にはよくわからないけど……


「俺のあった?あった?まじ?どこどこ」

「……どこだろ。あ、やった!私、4組だ!美鈴と一緒!」


そういえば、クラス発表だった。

僕、どこだろ。


「お、悠飛、おは!お前、クラスどこ?俺、2組ー」


バシッと肩を組まれ、一瞬ギョッとしたが見慣れた顔がそこにあった。


「お、おはよう、晴翔はると。まだ見つかってない」


こいつは、足立あだち晴翔。

唯一の親友といってもいい。

ザ・体育系陽キャ男子である。

僕とは住む世界が違うね、あははははは(泣)

陸上部にも所属していて、足が速い。

足が速けりゃモテるんだろうな(小学生どまりの恋愛脳)


「お、あったよ!お前、3組やん。俺と離れちまったー」


「あ、ホントだ。今年は一緒になれなかったね、残念」


去年は一緒のクラスだったんだけどなー

今年は運なかったか……


「同じクラスに知ってる人、誰かいる?」


「うーん、いないかも……」


「わーまじかー。ちゃんとクラスの子と話せよ?」


「わかってるって」


「ホントかよ。どうせの人見知り発動して、話せないんじゃない?」


「だ、大丈夫だよ、今年は……」


「大丈夫かなあ。だって、去年は……」


こいつ、腹抱えて笑っていやがる。

人の恥ずかしい過去を。

教室の端っこの席で、近くの子と話せずにボッチしてたなんて!

こっちは思い出すだけで、めっちゃ恥ずかしいんだわ!


「あーうるさいうるさい!」


「はーおもしれ」


『晴翔ー、はよ来いやー』


「あ、俺呼ばれてたわ。今行く!」


「また後で」


「おう」


教室、行くか。



◇◆◇◆◇




えっと、2年3組ってどこだっけ。

あーここか。

緊張の瞬間だぜ。

まずはー深呼吸。


スーハ―、スーハ―


「よし」


失礼しますっと。







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