【ボイスドラマ】私立・聖コープル女子高等学園「エロ研究部へようこそ♡」(※エロくはないです。矛盾では?)【「G’sこえけん」応募用に文章調整】

初美陽一

第1話(ボイスドラマ) エロ研究部・始動! ……えっ、部じゃない? え……どゆこと、じゃあ何なの……?

「エロ研究部♡ 爆誕しました~っ、イエーイ!」


「ウェ~~~イ!」


 ここ、私立・せいコープル女子高等学園にて、のっけからとんでもない部の爆誕を叫んだ二名の女子。


 一人は江神えがみルナ。欧州系の血統を連想させる金髪と美白の持ち主で、ソプラノの美声が特徴的だ。


 あえて言おう。美少女の無駄遣いである、と。


 そしてもう一人、抜群のスタイルと長身の、ハスキー気味の低めの声が魅力の呂波ろなみカヲリが、感慨深そうに言う。


「いやー、ついにヤッちまったな……エロ研究部だぞオイ? お嬢様学園って有名なのに、こんなヤベー部を設立しちまうとか……ウチら完全にイカれてんだろ……!」


「ねっ、ねっ、ヤバイよね~っ……こんなんもう前代未聞っしょ! アタシたちの存在が、この学園に大きな爪痕つめあとを残すっしょ……!」


「いやもう今の時点で伝説レジェンドじゃね? 創れちまった時点で、もうハジまってるしオワってんだろウチらッ……色んな意味でハジけてんよ……!」


「もはやせいコーじょ暗部あんぶじゃんっ……初日から何なんだけど、アタシもうテンション爆上げ最高潮クライマックスだわ……!」


 おバカ……もとい二人の女の子が仲良く盛り上がる、心温まるワンシーンである(配慮)。


 と、妙に楽しそうなルナが、いで三人目の少女へと声をかけた。


「ね、ね、すみれちゃんもそう思うっしょ? ねーねー、どうどう今の心境はDoどぅ~?」


「………………」


 声をかけられたのに気づいていないのか、黙々と本を読み続ける少女。


 彼女の名は美嶋みしますみれ、背中にかかるくらいの長さの黒髪はすずやか。

 いわゆるメガネっで、清楚な文学少女といった雰囲気ふんいきだ。


 そんなすみれが、少し遅れて反応を返す。


「……え? あ、私ですか? す、すみません、集中してて、すぐ気付けなくって」


「ウェイウェ~イ! ちょも~っ無視スルーされたかと思ったじゃーんビックリしたわー! で、で、すみれちゃん、活動初日の感想は~?」


「あ、はあ……江神えがみさん今まであんまり喋ったことないのに、いきなり名前に〝ちゃん〟付けしてくるって距離の詰め方エグいなって思ってますけど……」


「いやアタシへの感想じゃなくてね!? てか寂しいコト言わないでよオナクラでしょ~!? あとアタシのコトも名前で呼んでくんないとさ~、何か一方通行イッポーツーコーっぽくてヤダ! せっかくこのイカれたエロ研究部の仲間になったんだから遠慮とかナシでいこ!? ね!?」


「は、はあ、あつがすごいですね……じゃあルナさん……って、エロ研究部? いえ、あの――」


 元気一杯なルナに、すみれが何か発言しようとするも、やや乱雑な言葉遣いのカヲリが割り込む。


「おいルナ、オナクラって言い方なんかエロくね?」


「えっマジ? アタシ無意識にエロ部活動ヤッちゃってる? エロの天稟てんぴんでちゃってる?」


「ヤベーよ、間違いねーよ! さすがこのお嬢様学園でエロ研究部とか言い出したイカれた女だな……しかもミッション系だぞココ。逆に尊敬するよ」


「ふへへ、いやいやそんな……カヲリちゃんだってお嬢様学園とは到底トーテー思えないヤンキーじみた口調、パンクでシビれるわー♡」


「褒められてンのか微妙なトコだが、まあまあ満更まんざらでもねーので良しとしよう。……ン? オイ、マンザラもなんかエロくねーか?」


「ちょっとアンタ何言ってんの、ホンットそれさぁ…………エロいよ! なんだか名器めぇき♡じゃん……! カヲリちゃんもイイカンジにエロ研究部してんじゃん……!」


「へへっ、かたじけねぇな……何かウチもテンション上がってきたっつーか、悪くねーかもなエロ研究部――」


 おバカ二人(配慮ムリです)が好き放題に盛り上がる中、すみれがシンプルに思うのは。


(下品だなぁ……)


 非常に率直な心の声、だがすみれは改めて声に出して発言する。


「って待ってください、お二人とも……待って、本当に待って、聞いてくださいって。だから、あのですね?」


 清楚な文学少女が明かす、衝撃の事実とは――!



「ここ、部じゃなくて同好会ですよ?」


「「……………は?」」



「いえだって、今日きてない一人を入れても、四人しか所属してないですし……うちの学園、部としては最低でも五人は必要ですし。……まあ五人以上だったとしても、同好会スタートで様子見みたいな感じになると思いますけど」


「「………………」」



 思いがけぬ事実に沈黙する二人――だが、ルナが慌てて(無駄な)抵抗をすべく反論を始める。


「ちょ、ちょちょっ……それはヤバイ、同好会はダメだってー!? だってさ……〝研究部〟ならさ!? まだ知的好奇心とかそういうのでイケるじゃん、アリ範疇はんちゅ~じゃん!? でもエロ同好会は、もうナイじゃん!? エロの同好の士って、それもうっ……ただのエロい連中の集まりじゃんっ!」


「あ、そういう恥じらいはあるんですね……基準がよくわかんないな……ていうか、その……エロなんとかっていうのも、違いますよ?」


「は? ……ちょ、待って待ってすみれちゃん、怖い……コワイよお! なんなの、何を言おうとしてんの!? アタシら何だっていうの――」


「〝文芸同好会〟ですよ」


「イヤーーーァ!? ナンデ!? ブンゲー、ナンデ!? 言ったじゃんアタシ、エロ研究部やろーよって言ったじゃーーーーん!?」


受理じゅりされるわけないですよ。どう考えても棄却ききゃくされますから、書き直して提出しましたよ、申請書。ていうか承認のプリント、コピーして渡したじゃないですか。文芸同好会って書いてましたし、他にも詳細事項とか書いてましたよ」


「見てねぇーーーっ! 活字かつじ、読むの苦手ぇーーー! 頭イタくなるのーーー!」


「読んでくださいよ、それくらい我慢して」


「そらごもっともだけども! でも、でもそしたら……最初の〝エロ研究部♡ 爆誕しました~っ、イエーイ!〟何だったの!? もう全然、部じゃなかったじゃん! アタシら全員同好会じゃん! シャイな空騒ぎかっつーのよ!?」


「だから、そういうことになっちゃうんですよ」


「うっ……うぉあぁぁぁ……恥ずい、恥ずすぎるうぅ……」


 冷静に考えれば当然すぎる話だが、ガックリするルナに……すみれは追い討ちの言葉を。


「あとちなみに私達以外にも、第一文芸部と第二文芸部ってありますからね」


「ウボァーーーーー! じゃあもうアタシら三軍じゃん! 第三野球部じゃん! いや誰がクズの雑草じゃい! うわーーーーーん!!」


 もはや駄々っ子のようにジタバタするルナ、「うーん」と呆れ気味なすみれ。


 だがここで、抜群の運動神経と長身という恵まれたフィジカルを現在進行形で無駄遣いしている女・カヲリが、ルナへと語りかける。


「……いや待て、ルナ……考えてもみろ。ウチらが百歩譲って〝文芸同好会〟だとしても、だ」


「いえ百歩譲るまでもなく、その場で文句ナシの〝文芸同好会〟なんですよカヲリさん」


「すみれは黙ってな! この座れば牡丹ぼたんの文学美少女が! で、だ。第一・第二文芸部があるのは理解ワカった……だがウチらは〝第三文芸部〟ってワケじゃねー……ヤツらの風下かざしもにいるワケじゃねーんだ。これが何を意味するか、わかるか?」


「! カヲリちゃん……それって、つまり……アタシたちは……!」


 ハッとするルナに、カヲリが述べる結論とは。



「そう、ウチらのポジションは……言うなれば〝独立遊軍どくりつゆうぐん〟……!」


「……飛信隊ひしんたいじゃん……! マジか……マジかぁ……!」


「ウチらまだまだ負けてねーかんな……いつかは天下の大将軍だぞオイ……!」


「いやあの、待ってください。色々と待ってほしいですけど、うーん、とりあえず……」



 再度、サイドから切り込んでストップをかけるすみれが、指摘するのは。


「第三野球部とかキン〇ダムとかの話が飛び出すのは、女子高生の話題としてはどうかと……エロ研究とかそういうのが無いのは、まあむしろ良いんですけど……」


「なっ、すみれちゃん! 第三野球部、は、まあともかく……キン〇ダムは現役でしょーが! 実写化もしてるし! た〇お様の大活躍、見てないワケ!?」


「女子高生的にはせめてヤ〇ケンさんとかハ〇カンさんとかじゃ……いえまあ、好みを否定するわけじゃないですし、良さも分かりますけど……って、その話はもう良くって――」


「あっちなみに第三野球部を否定するワケじゃなくて。名作だけどね、名作だけどでもホラ、女子高生の話題としちゃどうかなって、さすがに思っちゃっただけってかね――」


「いえもう良いんですよ第三野球部の話も。掘り下げなくて良いですって。何なんですかもう、ここまで結構、第三野球部の話ばっかですよ。エロ研究とか何とかはどこ行ったんですか。いえまあ、しなくて良いんですけど、一貫性いっかんせいっていうか――」


 大人しく見えて結構ツッコむ、そんなすみれに、ふとカヲリが尋ねる。


「ていうか……すみれこそ、よっぽど文芸部とか似合いそうなんだけどよ……何で第一だか第二だかのほうじゃなく、コッチ入ったんだ? ルナに誘われたのは知ってっけど……意外と付き合いイイ感じ?」


「え? ああ……いえ、気楽なので。第一文芸部は〝小説や創作に本気で取り組みたい人〟が所属して、第二文芸部は〝第一ほどじゃないけど創作したり、皆で読み合いしたりワイワイ楽しみたい人〟が所属する感じで……私は〝ボッチ上等〟派なので、同好会くらいが丁度いいんです」


「ほーん、なるほどねー……でも話してるカンジじゃ、結構マンガとかも知ってるっぽいし……意外とさっきから読んでるのも漫画とかだったりすんの?」


「いえ、普通に小説ですよ。ほら」


 すみれが読んでいた本を反転して適当にページを見せると、なぜか怯えるルナとカヲリ。


「ヒイッ、フツーにショーセツ! 活字カツジイッパイ! アタシ、アタマイタイ!」


「やべーぞブンガクショージョだ! チックショー頭よさげなムーヴしやがってー! 調子に乗んじゃねーぞー!」


「うぐぐ、なになに……? 秘めた、あー、なにこれ……心奥ココロオク? アバけ……? れつみつ……うぇールビも全然ナイし! 全然アタマ入ってこないしー! せめて挿絵さしえを、挿絵をチョウダイー!」


「ハハハ……お二人とも、元気ですね」


 つい失笑するすみれだが、ルナとカヲリは「ムムム、こりゃたまらん」とばかりに退散する。


「お、覚えてなさいよね! この、このっ……メガネが似合う知的美人~!」

「次は負けねーかんな! このインテリキャラがー!」

「やーい、すみれちゃんの美白の殿堂入り~! たまのお肌~!」

「チッ、落ち着いた風情ふぜいしてんじゃねーよ! 美人女将びじんおかみかっつーの~!」

「今日のトコは見逃してやるだけだかんね! 今度ゴハンいこーね♡」

「エロ研究部の設立記念だなァ~オイ~~~! じゃーなァ!」


「あ、はーい、お疲れ様ですー」


 捨て台詞だか褒め言葉だか良く分からない言葉を残し、そのまま部室……部室? 会室? とにかく部屋を出ていくルナとカヲリ。


 残ったすみれは、ふう、と息をついて、改めて読書に戻る。


「まだ時間ありますし……もう少し読んでから、帰りましょうか。続きは、と……」


 名実ともに文学少女に相応しき、清廉ささえ感じさせる面立ちで、彼女が頭の中に反芻する物語とは。


(―――〝秘めた心奥しんおうさらけ出した彼女は男にまたがるやいなや、しとどに濡れた秘裂ひれつを隠そうともせず、むしろあふれ出す蜜を自ら見せつけるように〟―――ほう、ほうほう。ほうほうほう……)


 官能小説だし、何なら一番エロ研究部してた。

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