家族が残した想い
七大悪を探している。アルクは確かにそう言った。
彼女もまた、あの世界の創造者から何か伝えられたのだろうか?いいや、それは無いな。アイツは悪の王になれと俺に言った。俺の目的と被ることを彼女にわざわざ伝えるだろうか?
『七大悪の魂を全て集めて取り込む。そうすれば悪の王になれる』
もしかしたら、これをアルクにも伝えたのだろうか?
まずは確認が大事だ。アルクに聞いてみるとしよう。
ゼロ「俺の名前はゼロだ。早速だが、聞きたいことがある。」
アルク「聞きたいこと?」
ゼロ「零って名前の世界の創造者を名乗るヤツに会ったことはないか?」
アルク「お前…相当疲れているんだな。」
完全に変なヤツだと思われた。いや、普通はこうなるのが正解なのだろう。突然世界の創造者に会ったことあるかなんて聞かれたら俺だってこんな反応になる。
とにかく、これでアルクはアイツに言われて七大悪を探してるという訳ではないことがわかった。七大悪を探すのには別の理由があるのだろう。
ゼロ「実は俺達も今、七大悪を探して旅をしているんだ。闘国の国王が七大悪の情報を持っているらしくてな。」
アルク「それは本当か!?」
ゼロ「あ、あぁ…」
ものすごい反応してきた。そこまでしてアルクの言う七大悪の一人に会いたいのだろう。
ゼロ「もしよかったら、アルクが七大悪の一人を探す理由を教えてくれないか?」
アルク「私が探す理由…それは、復讐だ。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
5年前
私は母と父、弟に姉である私の四人家族であり、とある街で暮らしていた。母と父は共に武器職人であり、弟はそんな二人の後継ぎを託されていた。
私はというと、戦闘の才能があるのか悪討伐騎士団の要請でよく悪種族討伐の任務に参加していた。父と母は、機械国の技術で創られた銃という武器を長い時間掛けて私のために作ってくれて、弟は私のために近距離戦用のナイフを作ってくれた。私はそれを使い悪種族を討伐し続けた。家族といつまでも平和に暮らすためなら何も怖くなかった。
けど、あの日私が任務から帰った時には…全て無くなっていた。
アルク「なに…これ」
私の帰る場所だった街は、厄災を受けたかのように壊滅していた。
私は震える足で必死に走った。家族の生きてる姿を早くこの目で確認したかった。
淡い夢だった。
アルク「いやっ…いやっ…いやぁぁぁぁぁぁぁッ!」
目の前には無惨にも殺された母と父がいた。身体には銃で貫かれたかのような風穴が空いており、両親は蜂の巣のような姿で死んでいた。
弟の姿はまだ見えなかった。
アルク「あの子だけは…お願いだから…行きていて…」
変わり果てた我が家を散策する。そして…
メオ「姉さん…?」
アルク「ッ…!メオ…!」
頭から血を流し、腹部は銃弾のようなモノで貫かれた傷が何箇所もあり、そこから大量の出血をしている弟が今にも死にそうな瞳で壁に横たわっていた。
アルク「傷が…!安心しろメオ…!今すぐ私が止めるからな…!」
メオ「姉さん…ごめん…その前にもう…」
アルク「バカ言うなッ…!メオはいつかお母さんやお父さんを越える武器職人になる夢があるんだろ…!諦めて死ぬなんて…私は…許さないからな…!」
慣れない治癒魔術を行い、傷を塞ごうとするが、間に合いそうに無く。
顔はもう涙でぐしゃぐしゃになっており、そして声は震え、息が上手くできないほど呼吸は荒くなる。
メオ「姉さん…綺麗な顔してんだからさ…泣くなって…」
アルク「誰がこんなことしたッ…!?誰が私の家族にこんなこと…!」
メオ「……七大悪だよ…復讐しようなんて思わないでね…アイツはバケモンだ…」
アルク「そんなこと知るか…!私の大切な家族を殺したんだ…!メオまで今奪われそうなのに…!」
涙を流すアルクの顔に優しく手を伸ばし、メオは優しく微笑み伝える。
メオ「姉さんには…幸せに生きてほしいんだ…出会って…好きになって…新しい家族を…母さんや父さん…そして僕は…姉さんに死を引き摺ってほしくない…平和に生きてくれるだけでいいんだよ…姉さ…ん…」
頬を撫でていた手は砂のように崩れ落ち、メオの身体は冷たくなる。
アルク「あっ…あぁ…あああぁぁっ…!!」
彼女は愛する家族の亡骸を抱きしめ泣き叫ぶ。
今までの思い出が、彼女の脳を駆け巡る。
私はただ、泣き続けることしかできなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ゼロ「アルクも故郷と家族を…」
イゼ「だから復讐をするのね…」
アルク「あぁ………ゼロ、私から頼みがある。」
突然ゼロにアルクは何かを頼もうとする。
とても硬い表情をしており、必死さが伝わってくる。
ゼロ「なんだ?アルク。」
アルク「私も共に…闘国に連れて行ってくれ。」
ゼロ「それって…」
アルク「あぁ、ゼロ達の七大悪を探す旅に私も仲間に入れて欲しい。」
イゼ「ふっふっふっ!違うよアルクちゃん!」
アルク「違う…?」
イゼ「ゼロと私は、平和を取り戻すための旅をしてるんだよ!」
ゼロ「詳しく話すと長くなるが…イゼの言う通り、俺達は平和を取り戻すための旅をしているんだ。」
平和を取り戻すための旅。アルクはメオの言葉を思い出す。
メオ『姉さんには…幸せに生きてほしいんだ…』
幸せに生きてほしい。それが私に残してくれた最後の想い。今まで復讐ばかり考えていた。だが、あの世にいる家族が残してくれた想いに答えるのなら…平和を取り戻すための旅は私の真の目的なのかもしれない。
アルク「私も…ゼロとイゼの平和を取り戻すための旅に、仲間として共に行かせてほしい!」
二人は微笑みアルクに言う。
ゼロ「これからよろしくな。」
イゼ「私たちと平和を取り戻そう!アルクちゃん!」
家族のために私は平和を取り戻さなくてはならない。そう、家族が私に残した最後の想いのために。幸せになってほしいと願った家族のために。
アルク「これからよろしく頼む。イゼ、ゼロ!」
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