ずっと一緒

 闘国行きの辻馬車が来る日の朝、午前6時頃


 村には異形の化物の真っ黒に焦げた死体が大量にあった。イゼが大群を全て焼き尽くしたらしい。

 だが、それでも村の被害は大きかった。イゼ1人では村人全員を救うのは難しく、村の人口3割以上が死亡した。


 ゼロ「…結局寝れなかったな。」




 午前1時頃のこと


 イゼ「私は村の負傷者達に治癒魔術をかけてくるわ!ゼロは家でぐっすり寝ててね!起きてたら怒るんだから!」


 ベッドの上でずっと考えていた。

 俺はどうすればルピナスを救えたのだろうか。あの優しい日々に油断してしまったたのだろうか。俺にもっと力があれば間に合ったのだろうか。


 ゼロ「今考えても…遅いよな。」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 午前9時頃


 村の外に白い花の咲く花畑があった。

 ゼロとイゼは異人形であるルピナス達の死体を持ち運び、花畑に埋め、木の棒で墓を作った。

 イゼが墓に白い花で作った冠を乗せてあげていた時、誰かが来る。


 老人「そうか…ルピナス…ここで眠ったんじゃな…」

 ゼロ「おじいさん…俺が力不足なせいで、ルピナスを守れませんでした。これは俺の責任です。」

 イゼ「それを言うなら私もよ…美悪がここの村に来てることをもっと早く気づいていれば…ルピナスちゃんを守れたかもしれないわ…」

 老人「いいや…これは儂の責任じゃ…儂はあの二人に、「私達に何かあった時、ルピナスをお願いします。」と託されたのに、なんじゃこのザマは…」


 老人は手から血が出るほど、強く拳を作る。

 そして、ルピナスとの日々を思い出す。




『おじいちゃん、私ね、夢があったの。』

『夢?言ってみなさい。儂が叶えるのに手伝おう。』

『ううん、その夢はもう叶えなくていいの。私、この広い世界のいろんな場所に行きたかったの。大きな海が見える街、夜に星が遠くに向って降り注ぐ大地、魔術を学べる大国、この世界にはありとあらゆる場所があるってママとパパから聞いたの。いつか私の目で見てみたかったけど…今は村のために、早く頼れる大人になりたいの!』




 そんな日々を思い出すと、老人は涙を流し始める。


 老人「儂は…!ルピナスに何一つ…!夢を与えられなかった…!あの子が死ぬぐらいなら…!儂が死ねばよかったのだ…!」

 ゼロ「おじいさん、それは違う。」


 ゼロは真剣な顔で伝え始める。


 ゼロ「ルピナスは自分の代わりに誰かが死ぬことを望んでいない。あの子は優しくて、純粋で、誰よりも皆が幸せになることを願っている。」

 老人「だが儂は…あの子のためにどう生きていけばいいんじゃ…どうすれば報える…」

 ゼロ「あの子の分まで、生きてください。少しでもいいから幸せを見つけてください。それがルピナスの望んでいることだと思います。」


 そう伝えると、老人は涙を拭く。


 老人「わかった…残りの短い人生、少しの幸せを見つけて生きていこう。ありがとう、旅の者。」


 暫くして老人は村に戻った。

 ゼロは墓の前で、ルピナスにあることを伝え始める。


 ゼロ「ルピナス…俺はまだ、憧れられるような人じゃない。だからいつの日か、本当に憧れることのできるような人になるその時まで、俺達のことを見守っててくれ。」

 イゼ「ルピナスちゃんなら、天国で私達を見守ってくれてるはずよ!」

 ゼロ「そうだな…」




 午後0時頃


 闘国行きの辻馬車が到着する。

 ゼロとイゼは老人に別れの挨拶をし、辻馬車に乗る。


 ゼロ「おじいさん、本当にこの1週間ありがとうございました。」

 イゼ「ご飯とか美味しかったです〜!」

 老人「こちらこそ、ルピナスと幸せな思い出を作ってあげたり、村を守ってくれたり、感謝してもし切れません。心からありがとうございます。」


 闘国に出発するその時だった。老人は最後に何かを伝える。


 老人「お二人さん、いつかまた、ルピナスに会いに来てください。」

 イゼ「もちろんです!」

 ゼロ「はい!」


 二人はこうして闘国コンバティメントに向かった。旅は続く…平和を取り戻すその時まで。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 少女は白い花のたくさん咲く、優しい光に包まれた世界で目を覚ます。

 特に強い光が見え、そこに向かって歩き続ける。

 二人の人が見えてくる。近づくにつれて、誰なのかがわかった。愛する両親だ。

 少女は涙を流しながら走り出す。ずっと会いたかった。笑顔で二人を抱きしめこう言った。


 少女「ママ!パパ!ずっと一緒だよ!」

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