私を呼ぶ声
誰かが呼んでいる。
『……ピ…ナ………』
遠くで誰かが呼んでいるけどよく聞こえない。もう少し近づいてみようかな。
『ル…ピ……ナ………』
あれは…ママ?パパ?
ルピナス「ママとパパだ…!私に会いに来てくれたんだ…!」
ママとパパの元に走っていく。そして…目の前には血に塗れた二人がいた。
『ルピナス、アナタモオイデ』
ルピナス「っ…は…!」
目を覚ます。ルピナスは酷い悪夢を見た。ものすごい汗をかいており、鼓動も激しく動いている。
ゼロ「大丈夫か?ルピナス」
イゼ「すごい汗…私、タオルと替えの服持ってくるね!」
ルピナス「待ってください…ゼロお兄ちゃん…イゼお姉ちゃん…私…その…」
私のせいで迷惑をかけてしまった。私があの時倒れたせいだ。二人に謝らなきゃ。
ルピナス「あの…私…」
ゼロ「迷惑を掛けたなんて、思わないでくれよ。」
ルピナス「え…?」
なんでそんなに私のことを思ってくれるのだろう。短い日数しか関わりのない私に。
ルピナス「なんで私に…会って間もない私に…こんなに優しく…」
ゼロ「そんなのは関係ない。俺は苦しんでたり助けが必要な人がいれば、助けたいだけなんだ。」
イゼ「ゼロはお人好しだからね〜!私はどちらかというと、可愛いくて頑張り屋のルピナスちゃんに元気になってほしいだけだよ!」
あぁ…なんて優しい人達なんだろう。こんなに優しい人達が本当にいるんだ。
ルピナスは涙を流す。本当はとても怖く辛かったのだから。二人の優しさに安心しきったのだ。
ルピナス「っ…ありがとう…ございます…」
ゼロ「…疲れてお腹空いただろ?下でおじいさんが夕飯を用意してくれている。一緒に食べに行こう。」
イゼ「美味しいものを食べれば気分もスッキリするからね〜!」
ルピナス「うん…一緒に食べます…!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕食を食べた後、ルピナスは疲れたが残っていたのか部屋に戻り就寝。ゼロとイゼは老人に呼ばれ話し合っていた。
老人「今日は本当に助かった…あの子に万が一のことがあれば、私はあの世にいる二人に顔向けができない…」
ゼロ「あの世にいる二人…?」
老人「ルピナスの両親のことじゃ。過去に村の外で仕事を行ってた時に、不運にも悪種族に襲われ命を落としてしまったんじゃ。死体一つ残さずな。」
イゼ「死体が無いなら、まだ何処かで生きてるのかもしれないじゃない!」
老人「それは無い。何故なら、私は…」
今から二年前
老人は真夜中に一人でルピナスの両親の死体を探していた。
老人「せめて…土に埋めてやらんと…あの二人にはたくさん恩があるんじゃ…」
暗い森の中をランタン一つで明かりを照らしながら歩き回る。
ふと、奥に人影が見えた。
老人「なんじゃ…?冒険者か…?」
その人影は、ルピナスの両親だった。
老人「生きていたのか…!お二人とも…!そんなとこで何を…!」
近づくにつれ、違和感に気づく。二人は青く透明になっていた。人ではなく、幽霊を見ているような。
老人「なっ…!?幽霊…!?」
二人は老人に気づいたのか、先程までの生前の表情から一変し、骸骨のような顔になり、老人の元に近づき始める。
老人「く、来るなッ…!」
老人は必死に村の方へと戻った。ランタンの明かりを照らしながら。死から逃げた。
老人「それが、私が二人の死を確信した瞬間じゃった。」
イゼ「幽霊…悪種族…ゼロ、もしかしたら今回のことは悪種族が関わっているかもしれない。」
ゼロ「確かに、ルピナスが森で倒れる寸前、何かから逃げていたかのような息切れをしていた。普通に走るだけならあそこまでなる前に息を整えるはずだ。」
老人「まさか…二年前から村の付近に、悪種族が住み着き、あの幽霊はソイツのせいだと言うのか…!?」
イゼ「可能性はあるわ。悪種族は一度見つけた餌場を完全に飽きるまで襲い続ける。」
老人「なんということじゃ…ルピナスの両親の幽霊が…ルピナスを襲ったかもしれないというのか…」
ゼロ「ルピナスも…悪種族のせいで…両親を…」
怒りで手が震える。自分と同じように両親を奪われた人がいるということに。ゼロはある決心がつく。
ゼロ「俺がルピナスと…ルピナスの両親を…村の人達を苦しめる悪種族を殺ります。」
イゼ「まぁ、そうなるよね〜!」
老人「そんな…もしもあなた達に何かあれば、ルピナスは…」
ゼロ「大丈夫です。死ぬなんてこと、イゼが許さないんで。」
イゼ「よーくわかってるじゃ〜ん!」
老人「お二人とも…ありがとうございます…どうか無事で…」
ゼロ&イゼ「はい!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同時刻 ルピナスの部屋
ルピナス「っ…!」
お前を呼んでいるぞ
両親がお前を招いてるぞ
苦しみから解いてほしいと願っているぞ
幽霊悪「お前を呼んでいるぞ。ルピナス」
ルピナス「っ…はっ!?」
村から少し離れた洞窟に墓場がある。夢の中で、あの森で見たあの男がその場所にいた。そして、私を呼んでいた。
ルピナス「ママ…パパ…私が助けなきゃ。」
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